見出し画像

さよならグッバイ、ないものねだり。

右に傾けば左を気にして、左に傾けば右に焦がれる。私はいつだってないものねだりをして生きているようだった。

なりたい理想はたくさんあって、強くて優しいひとに恋をすることもあれば、竹を割ったような爽やかなひとに心を奪われることもある。いつも、尊敬できる対象には統一感がまるでなかった。想いを馳せるその度に、服装も髪型も行動もそのひとの色を真似て染まろうとした。

ただ、きっといつか、近いうちにそのどれかひとつに方向を決めて、歩き出さなければいけない時がくるのだと思う。多分、そろそろ。

たった一つしか選べないなんて(器用なひとなら二つも三つも掴めるのかもしれないけれど)、こんなに寂しくてつまらないことはない。

けれども、自分がなりたいもの、行きたい方向を"選ぶ"ということが、大人になるということなのかもしれない、と思う。

いつまでもどっちつかずな真っ白のままでも、それはそれで魅力的なのかもしれないけれど。私も所詮ただの人間で、最後には、やっぱり"何色か"にはなりたいから。

だから、選ばなかった色が恋しくなっても、それは潔く諦めよう。代わりに、その色を選んだ目の前のひとを愛そう。そしてなにより、自分が選んだ色がいつまでも似合うように、たったひとつの正解であるように、余所見をせずに、まっすぐ、生きていこうと思う。