幸せ者は夏に還る


夏がめっちゃ好きだ。

なぜかというと、幼少期に楽しい思い出をたくさん作ったからである。


夏休みは不思議な力がある。みんながみんな、"なにか思い出を作ろう"という気分にさせられるのだ。

インドアで家族仲が微妙な我が家でさえ、なにかを残そうとディズニーランドに泊まっている。そんなパワーが夏休みにはあった。

何をしなくとも近所でお祭りはやってくれるし、休みで時間に余裕が出来るから大人は構ってくれるし、市民プールに出かけるだけで楽しいし。子どもの私にとって、夏休みって最高にイカしてた。


だけど最近思う。私はいつまで、夏を好きでいられるのだろうか、と。

長い人生の中で、子ども時代って本当に僅かだ。私が夏休みを思いっきり楽しんでいたのは、確か中学生くらいまでだった。(高校生では部活、大学生の今はバイト三昧の日々)

たった十数年間の思い出を胸に抱いて、「夏が大好き」と言える私は、一体いつまで存在しているのだろうか。

楽しかった思い出が多い分、孤独な現状とのギャップも大きい。楽しいと同時にとても寂しいのが夏だ。この寂しさが勝って、次第になにも思わなくなって、「夏なんて暑いし鬱陶しいし嫌いだわ」なんて、子どもの頃の自分を自分で否定するような大人になるのだろうか。

これから私は、「夏大好き!」と屈託無く言える人をみる度に「幸せな人生だったんだな」と思うだろう。羨ましい人生だ。私も、そのやさしい人生の中に、ほんの少しでも長く滞在していたいと、そう思う。どうか夢から醒めてくれるな。夏が好きな私と、貴方のまるい心が、いつまでもずっと、そのままでいてくれますように。