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まあお 読書ツイート集 2021下半期

はてさて、今年も残り少なくなってまいりましたが皆さまご安全にお過ごしですか? 自称作家の あまおう まあお です!

個人的に今年は過去最高にプライベートが荒れた一年でしたね……(遠い目)その事後処理などもまだ残っていて、見事来年に持ち越しとなりました;^ ^ ああつまり来年も忙しいのね……!
そんな中で後半の九月~十二月は合計で123冊ほど読んだようです。

頑張ればもっと読めた気はしますが、一応自分の中では合格ラインですかね。今回もこの中からジャンル別に三冊ほどおススメを選出しますから、よろしければ最後まで読んでってくださいね! 一万字以上あるけどな(ぼそっ)。

2021/09/20
【読んだ】「訴訟は本人で出来る」
改訂を重ねてロングセラーの本人訴訟本。
少額訴訟は費用倒れの可能性が高くて弁護士に頼みづらい。なら本人でやってみたら? ということで、簡単な内容の訴訟を素人が起こすためのマニュアル。
おおまかな流れは理解できる。内容証明の書き方や仮差押えも解説有!

2021/09/21
【読んだ】矢野輝雄氏「本人訴訟ハンドブック」
知識ゼロからの裁判所活用法、とのことで確かに分かり易くまとまった一冊。しかし本当に知識ゼロの一般人がこれで提訴できるかは疑問も。
どちらかというと教科書としてプロが素人に説明するのによさそうな本。
著者は行政書士で元N☆Kの方とのこと。

2021/09/22
【読んだ!】新井文彦氏「粘菌生活のススメ」
いや面白いね、粘菌。謎の生き物ですがそこらへんにいるらしく、東京でも見つかると書いてあります。
私も趣味「粘菌探し」とかにしてみようかなあ?
ところで粘菌、最短ルート検索とかで利用されて「粘菌コンピュータ」などと呼ばれ(おおっと文字数!)

2021/09/23
【読んだ!】瀬木比呂志先生「絶望の裁判所」
元裁判官、現職は教授。裁判所の内情を知り尽くした学者という貴重な立場・体験から分かり易く問題点を指摘。
市民の目から見ても充分に信頼できる内容。出版意義の高い本なのでぜひ一読をおすすめしつつ、裁判官になった友人が心配になってしまった。

2021/09/24
【読んだ!】瀬木比呂志先生「民事裁判入門」
元裁判官であられた著者が実体験をもとに民事訴訟の見方を解説。一般向け書籍でこの切り口は珍しいのではないか。
現代社会では、いつどこで訴訟に巻き込まれるか分からない。リーガルマインドを育むためにも大人は皆知っておいた方がよいと思う。

2021/09/25
【読んだ】ドラッツィオー「レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密」
偉人の遺した絵画と手稿から人生を読み解く。一般人向けの読み物としてほどよい内容。
噂には聞いていたがこのおっさん、なかなかやりおる。仕事に取り掛からない、製作費がない、途中で放棄、未完のままトンズラ……でも超美形らしいよ。

2021/09/26
【読んだ!】萬年一剛先生「最新科学が映し出す火山」
そろそろ噴火しそうじゃね? という不安から読んでみたものの、地震と同じで避けることはできないと思った。
地球も生きているんだなあ……
とはいえ、いつどこで大規模噴火が起きてもおかしくない。私は富士山より浅間山・箱根連山が心配だ。

2021/09/27
【読んだ】「裁判所の正体」
元裁判官の瀬木比呂志先生と北関東連続幼女誘拐殺人のルポで有名な清水潔氏の対談本。
前者は民事、後者は刑事事件の専門ではあるものの、興味深い内容に仕上がっていた。
結局のところ日本に本当の民主主義はあるのか、という問題が根底にあるのではないか。

2021/09/28
【読んだ】トルストイ「イワン・イリイチの死」ほか
露文だが短編なのでサクッと読めた。ある役人の死に際して、と言った普遍的内容で今読んでも決して古びていない。
日本の私小説が個人的事情にこだわり普遍を目指すのに対して、露文は私人を例に普遍を描写しようとするのかな、などの感想を持った。

2021/09/29
【読んだ】吉田賢治氏「普賢岳鳴動す」
30年前の火砕流災害。一般にイメージする噴火と違って危険が伝わりづらく、マスコミを中心に死者も出した。
避難命令やその区域の設定、経済との関係、噂話とそれの対応。
何百年何千年に一度の噴火で分からないことばかり。勧告出たら素直に逃げよう。

2021/09/30
【読んだ】「歴史のなかの地震・噴火」
東大地震研究所中心の地震研究。日本史料から過去の地震の規模や発生源などを手繰り寄せていく試み。
震度計もニュース速報もない時代でも意外と情報は残っている。未来への貴重な宝物。重要な研究だ。
南海トラフはどう考えても危険期なんだろうなあ……

2021/10/01
【読んだ!】原田マハ先生「暗幕のゲルニカ」
芸術は誰のもの。戦争と平和。過去と現在を行き来しながら名画は輝く。
骨太のテーマが、読みやすくしっかりと描かれていて素晴らしい。対比やエピソードも仕事をしていて流石です……
世界を股にかけて大活躍する女性キュレーターの冒険譚としても痛快!

2021/10/02
【再読】サガン「悲しみよこんにちは」
少女の瑞々しい感性と恐ろしいほどの智略が共存する言わずと知れた傑作。今回はパパのふがいなさが目についた。パパが阿呆なのか娘が賢いのか。そこかしこでオシャレだが辛辣なフランスのかほりが立ち込めている。
セシルカットは美人にしか似合わないね。

2021/10/03
【読んだ!】プランパー「感情史の始まり」
感情とは何か。どう理解されてきたか。
人類学と脳科学の二本の柱に人文などが絡む分野横断型研究らしい。脳科学分野で未知の情報に触れたので、他書籍も読んで理解を深めたい。
専門書のようで難しいが、文献目録など多く見た目ほどの文字数はない。

2021/10/04
【読んだ!】メイ・フォン「中国『絶望』家族」
「一人っ子政策」実施後40年近く経ち、その答えが見えてきた。
著者は中国系米人ジャーナリスト。本土では生まれていなかったはずの五人姉妹の末っ子が見つめる、いびつな社会。人権無視、独身男性余剰、超高齢化社会。絶望的だが読み応えは抜群。

2021/10/05
【読んだ】「ドキュメント御嶽山大噴火」
2014年9月27日、晴天の土曜日お昼時。前触れもなく噴火した。多くの登山客が噴石などで怪我・死亡。学術的には水蒸気噴火というらしく予知は難しい。
活火山は、いきなり噴火する。
特にこの山は難易度が低いとされている。山情報として知っておくべき。

2021/10/06
【読んだ】コクトー「恐るべき子供たち」
圧倒的で濃密な小説。筋だけ抜き出しても語りえないものが確かにある。光文社古典新訳文庫で読みましたが、大量のイラストがコクトー本人の筆というのが面白い。
やたら味のあるイラスト、たぶんこれは挿絵というよりプロット用かなんかだと思いますが。

2021/10/07
【読んだ】池田清彦先生「構造主義生物学とは何か」
88年出版の本だが詳しく構造主義生物学を説明している。氏の批判するネオダーウィニズムの本も何冊か読んでいるものの、どちらが正しいのか私には見当もつかない。
内容は難しいが、明晰な中にユーモアを感じる文体が好きで読んでいる。

2021/10/08
【読んだ】「飛ぶ昆虫、飛ばない昆虫の謎」
蝶々が優雅に飛んでいるの見てふと「いやそれどういう飛び方?!」と思ったので読んでみたもののよく分からず。
私の知りたいことは流体力学の前縁渦による揚力の働きのようなのですが、まだ一般向けの本が出たという話がありません。虫ほんと意味不!

2021/10/09
【読んだ】唐澤太輔氏「南方熊楠」
膨大な資料から丁寧に読み解く知の巨人。
熊楠は何かの教科書に載っていたはずだけど、粘菌以外にも幅広く活躍している。この時代の洋行学者は変人が多いが、彼もまた……。
後半の若干オカルティックな思想は私には未知情報。改めて熊楠も読んでみたい。

【読んだ!】シラー「根拠なき熱狂」
投資家というより投機家と思える人々の話を聞く度「楽観的だなあ」と感じてきた。市場は永遠に成長を続ける。暴落後必ず市場は元より伸びてきた歴史的証拠がある。今日より明日は素晴らしい。
せやろか?
ノーベル賞学者と思えぬほど素人にやさしく面白い。

2021/10/10
【読んだ】リゾラッティら「ミラーニューロン」
09年出版なのでおそらく一般書籍で最も早く表題について解説した本だろう。今言われているような若干眉唾な情報はなく、猿の実験から導いた極めて受け入れやすい内容。
人間(や猿)は模倣する動物、というのは昔から言われてきた。さもありなん。

【読んだ】松本亜樹子氏「不妊治療のやめどき」
ご本人も諸事情で治療を諦めて現在はサポート業務をされている方の非常に心優しいメッセージ本。
まあ人生色々あるべな。
オーストラリア人の旦那様が夫婦で話し合おう、僕は今も幸せだと言った挿話が輝いている。日本男児も頑張ろうな;^ ^

2021/10/11
【読んだ!】小川さゆり氏「御嶽山噴火 生還者の証言」
著者は山岳ガイド。下見のために単独登山していて噴火に遭遇したが無事生還。生死を分けたポイントは何だったか。
運は大事。だが自力でどうもできないなら、人事を尽せるだけ尽くそう。自分の命は自分で守ろう。切実な一冊だ。

【読んだ】河野啓氏「デス・ゾーン」
登山系エンターテイナー栗城史多氏の話。開高健ノンフィクション賞受賞作。
著者が有名なTVディレクターとのことで、さながら読むドキュメンタリー番組。昔ながらの多数の知人に取材して多角的に像を捉えるのとは少し違う書き方だが、内容は面白かった。

2021/10/12
【読んだ】放生勲医師「不妊治療の不都合な真実」
不妊に悩む女性の生活環境のストレスフルなことといったら。長いこと女性たちと寄り添ってきた医師ならではの視点。
少子化対策で公的資金を投入するだけでなく、根本から見直していかないと患者も社会も疲弊するだけだ。
本は薄いが内容は◎

【読んだ】羽根田治氏「山岳遭難の傷痕」
日本の十大山岳事故を年代順に。気象遭難が多いが、情報や装備が充実した最近も事故は絶えない。
昔は山遊びはええとこのボンの専売特許だったが今や中高年も気軽に雪山へ行くようだ。事前によく調べ、無理ない計画を立て、不安があれば下山して欲しい。

梁塵秘抄
やっと読み終わったーToT
最初の歌集みたいになってるところは「へぇ」なんて言いながらニコニコ読めたんだが、後半の「口伝集」はもう完全にお手上げ。ウィキペにも「難解」と書いてあるくらい難しいらしく私だけじゃないのかとホッとしました。
難読本好きな方ぜひ読んでみて!

2021/10/13
【読んだ】ザッペリ「さらば、モナ・リザ」
このモデル誰なのか説の一つで、著者は歴史家。なかなか絵について言及されず外堀を埋めるようにメディチ家の華やかな様子が語られる。
が、結局は「説」なのかなあという読後感。
私はまだ「さらば」できないが、それだけ魅力的な絵なんでしょうね。

【読んだ】クラカワー「空へ」
96年エヴェレスト遭難の当事者記録。著者は雑誌の企画で商業登山の実態を調べるために参加。登頂後、急な荒天で大量遭難する中、生き残った。
アマ登山家を否定はしない。だが海抜八千メートルの雪山で「客」と「ガイド」でツアー登山するのは流石に危険だと思う。

2021/10/14
【読んだ】南方熊楠コレクション「南方マンダラ」
すごいこと言っているんだか雑談なんだか酔っぱらっているのか全く分からないところが面白い。土宜法竜和尚宛の書簡が収録されていて、こんな私信読んでいいものなのかと思ったら、むしろご本人が遺稿にしたいと書いていた。
編集中沢新一先生。

【読んだ!】ヒキタクニオ先生「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」
タイトル通りのお話ですが小説ではなく体験ルポみたいな感じ。深刻な内容もするっと読めて、まあとにかくよかったですね……!
男性発信の不妊治療本は貴重ですね。まあでも女性に比べたらどうしたって出番が少ないですが。

2021/10/15
【読んだ】「レオナルドダヴィンチ 天才の挑戦」
展覧会のカタログ。目玉は「糸巻きの聖母」だった模様。
手稿の一部が和訳されている。なんとなくダヴィンチが見えてくるような気も。
この人の魅力は「手」の表現だと思う。下絵や習作も収録されていて、絵師の方に特におすすめしたい一冊!

【読んだ】野村仁氏「55歳からのやってはいけない山歩き」
というタイトルですが初心者の安全な山歩きについて解説している良書!
トレーニングなしで登山、軽装、登山届なし、計画不足、悪天候での強行などはご法度です。
簡単な足のケア法や都内からアクセスのよいコース紹介もついていて便利。

2021/10/16
【読んだ】阿部幹雄氏「生と死のミニャ・コンガ」
81年山岳事故生還者の手記。ミニャ・コンガは中国の七千メートル超峰。
準備段階からすでに暗雲が立ち込めている。日本にも山は多いが本格的高所は存在しない。著者も六千メートルくらいから高度障害が酷かったようだ。痛ましいが貴重な記録。

【読んだ】モーム「月と六ペンス」
だいぶアレンジされているがゴーギャンらしき男とゴッホみたいな男が出て来る。
この人らの絵、どちらも見たことがあるんですが実は私はさほど感銘を受けていません。でも印象に残ったのはゴッホの方。
この作品でもストルーブのことが妙に気にかかった。

2021/10/17
【読んだ!】石井正子氏他「甘いバナナの苦い現実」
バナナって甘くておいしくて、安いんですよね。野菜・果物系の中でもぶっちぎりに安い。
……輸入してるのになんで?
フィリピン農民が低賃金労働してるからだそうです。農園周辺で農薬被害も出ています。うまい安いで許されていいのか?

【読んだ】「戦略の形成 上」
欧州を中心とした軍事以上の戦略の歴史。
わが国には昔から長期戦略というものがないようだが、欧州のように人対人ではなく人対自然災害の戦いに明け暮れたのだから仕方ないのではと感じた。
自然相手では後手に回るのも費用倒れも当然だし、戦闘回避もできない。

2021/10/18
【読んだ】「戦略の形成 下」
欧州に加え米国中心に展開される論。米国の優位性というのは彼らが思うほど絶対的ではない(と有識者も思っている)のだ。
まとめの章で唐突にわが国が登場。戦略らしき戦略を示さない我々は研究者にも脅威のようだ。何考えてるかなんか日本人にも分かりませんよ。

【読んだ】井上靖先生「氷壁」
ナイロンザイル事件という確か裁判にまでなった事件があって、それをアレンジした青春小説。
実際の事件から小説を仕立てる手腕、それこそ奥穂高のように高く積み上げてゆく構成力が圧倒的。
井上先生は作風も多彩で、しろばんばしか読まないのはもったいないな。

2021/10/19
【読んだ】鶴見良行氏「バナナと日本人」
昭和の本だが日本とフィリピンの歴史を踏まえた質の高いレポート。
当時と今でバナナを巡る状況はほとんど変わっていないようだ(関わる企業の名前は変わったが)。
一方で同じフィリピンで90年代ナタデココバブルもあった。色々と思うところは、ある。

【読んだ…】アカロフ/シラー「不道徳な見えざる手」
著者は二人ともノーベル賞受賞者。の割にこれは幾分軽いエッセイのようである。というか、この内容ならノーベル賞学者でなくても書けるだろう。
副題は「自由市場は人間の弱みにつけ込む」。つけ込まれたのは私の学歴コンプだったようだ。

2021/10/20
【読んだ】海堂尊先生「ジーン・ワルツ」
バチスタじゃないやつ。テーマは不妊治療で、発生学について多く頁が割かれている。
作中、かなり重要なところが説明されないまま終わったが……なんと続編もあるそうです! 流石抜かりなし!
菅野美穂さん主演で映画化済み。これはちょっと観たいね。

【読んだ】松田宏也氏「ミニヤコンカ奇跡の生還」
信じられない遭難体験。7000m超の山頂付近でビバークしたら……無線機が故障してベースキャンプと連絡が取れなくなってしまった!
仲間たちは遭難死したものと思い込みキャンプ撤収……
この状況で這って雪山から下山した著者の執念に驚嘆!

2021/10/21
【読んだ!】辻村深月先生「朝が来る」
いやー、良かった! 良すぎて途中からもう「ああもうバカ、いいから弁護士を呼べぇい!! 法テラス、法テラスか弁護士会に早くぅ!!」しか考えてなかった。
こんなに純粋に感情移入した小説は久しぶり。
いいですか、困った時は弁護士会ですよ、マジに。

【読んだ】まさのあつこ氏「日本で不妊治療を受けるということ」
元議員秘書で工学系の方のよう。ご自身の体験から問題点を浮き彫りにする。
これは04年の本なので、現在状況は大きく改善した。助成金も増え、来年には治療の一部が保険適用可能に。日本は今「不妊社会」なのかもしれない。

2021/10/22
【読んだ!】角田光代先生「予定日はジミー・ペイジ」
主人公の妊婦さんが想像力豊かで楽しい小説。本人は大変そうだけど、この通りに話が進んだら非常に順調な安産と言えるだろう。
あまりにリアルで出産祝いが送られてしまったという筆力は流石の一言!
ご自身で描かれた挿絵もとても素敵。

【読んだ】レヴィ・ストロース「野生の思考」
難しいが面白い話がたくさん載っている。色んな部族の名づけの法則なんかが気になった。わが国も昔は「幼名」とか「諱」「通称」なんかがあったので、なんか関係あるのかなとか。
この人の本は難しいが、気が向いた時に少しずつ読んでみようと思う。

2021/10/23
【読んだ】夢枕獏先生「神々の山嶺 上」
夢枕先生の山岳小説。目標はでっかくエヴェレスト!
というわけなんだけど、山のふもとでなんやかんや怪しい事件が巻き起こっています! つ、続きが気になる!
人はなぜ山に登るのか、に対する答えがこの小説なのだろうか。とっとと下巻も読みます!

【読んだ!】夢枕獏先生「神々の山嶺 下」
いやあ、圧巻! これは読んだ方がいい。あまりにも素晴らしいシーンがあって、どうしたらこんな描写がと思ったら、なんと趣味がヒマラヤ登山とのこと。
若い頃は山小屋で働いておられたとか。
これこそ書かれるべくして書かれた小説だと思う。

2021/10/24
【読んだ】山下紘加先生「ドール」
文藝賞受賞のデビュー作。
いやはやなんとも。コミュ障の中学生に彼女ができる話。まあ、ラブドールなんですけど。
色々と大変そうな主人公だけど、途中からドールがただのドールでなくなって、そして最悪の方向へ……非常に読み甲斐のある小説でした。

【読んだ】若竹千佐子先生「おらおらでひとりいぐも」
文藝賞・芥川賞。東北弁と言えば賢治先生や太宰先生。でも分かるようで分からんというか「ひどりいぐも」にはならないのですね? 難しい。
文体とは人生だと再確認しました。私が言うと「僕は僕で勝手にやるさ」……スカしてんなァ、私。

2021/10/25
【読んだ】若い書き手の純文学新人賞作品
……ダメだ、全然分からない! 端正で起伏のない美しい文章で淡々と若者が考えたことが綴られる。美しいが、感情のにおいのしない文体に驚いた。私はもうこの感性には、ついていかれないのか……
気持ちは若いつもりでも、老いた自分に愕然とする。

【再読】桜井晴也先生「世界泥棒」
初読時にはアニメみたいな世界観だと思ったものだが、逆に日本のアニメが文学みたいなんだよ。
文体も個性的でリズムがあるし、素敵だし、筋がしっかりとあるし謎もふんだんにある。非常に完成された小説だと思う。わからないことはわからなくていいでしょう。

2021/10/26
【読んだ】若い書き手の純文学新人賞作品
この人も「そう」見える。文章は端正だが登場人物が誰も感情をさらけ出さない。その代わり心身症のようなことは起こる。悪夢のような幻覚のような想像力。
Z世代のリアリティは最早幻想の中にあるのか……
いや、たまたまなのかもしれませんが。

【読んだ!】七崎良輔氏「僕が夫に出会うまで」
セーラームーンが好きだった少年は大人になって……今やLGBTコミュニティを立ち上げ、江戸川区パートナーシップ制度婚第一号として幸せに暮らしている!
前向きで楽しく読めるLGBT本。興味はあるけどなかなか手に取れない人こそ読んでみてほしい!

2021/10/27
【読んだ】「蜻蛉日記
流石に歌と文章はピカイチですが、ご気性が……。
読む前は浮気が許せないのかと思ってたんですが、むしろこれ経済不安が原因では? 後半は完全に息子をあてにしてる。そら道綱母とか言われますわ。
せっかく玉の輿乗っても、財産分与も慰謝料もない時代ですからね……

2021/10/28
【読んだ】江花優子氏「11時間 お腹の赤ちゃんは『人』ではないのですか」
胎児は法的にいつから「人」なのか。これは交通事故の時に大きな問題となる。過失致死か(妊婦への)過失致傷かで量刑が変わる。
この本では似た事件で判断が分かれた例を挙げるが法律論ではなく心情問題に留まる印象。

【読んだ!】三宅香帆氏「人生を狂わす名著50」
面白かった! 著者は京大院生で書店員さんというハイスペック女子。私もまあまあ読む方だと思うけど、彼女のおすすめの半分以上未読という体たらく。
京大美女(予想)が読む本に興味のある方におすすめ。これ以上積本増やせない方は読んじゃだめ☆

2021/10/29
【再読】町屋良平先生「青が破れる」
文藝賞の中では短い小説。百枚くらいかな? 画面が異様に白いので文字数は本当に少ないと思う。
が、この余白に色んなことが書かれている……
ちょっと頭のよくない主人公の思考の「外」で物語が進行している。かなり意図的だがこの表現は見事だと思う。

【読んだ!】松永正訓医師「運命の子 トリソミー」
染色体異常の中でも13トリソミー、18トリソミーは難しいらしい。
生まれつき多臓器奇形が多く、短命だと決まっている。
小児科医である著者が実際に出会った患者とその家族。淡々と事実を受け入れて生活する姿に、私は感動を覚えた。

2021/10/30
【読んだ】三島英子氏「乳房再建」
90年代医療ノンフィクション。著者は外科医の妻で乳がんを早期発見、夫に「おっぱいをつくってもらった」異色の経歴。
おそらく現在は技術革新で苦痛は軽減されているだろう。再建施術は最近になって保険適用も認められたようです!
作品としては私小説寄り。

【読んだ!】ジェニー・ザン「サワー・ハート」
中国系アメリカ人作家の初短編小説集。私が現役の海外作家をデビュー作から読むことは非常に珍しい。
まだ若い作家で、その感性や熱量が翻訳された文章から存分に伝わって来た!
絶対じゃないけど日本人には書けない物語。刺激的で面白かった。

2021/10/31
【読んだ】杉山春氏「ネグレクト 真奈ちゃんはなぜ死んだか」
被害児の願いは二つだけ。「おなかすいたよ」「だっこして」それさえ言葉にできなかった幼子の心を思うと……
親も不幸にも世代に渡って育児を学習できていない。他人様のご家庭に首を突っ込むのも野暮、などと言っていられない。

【読んだ】佐々涼子氏「エンド・オブ・ライフ」
この本はぜひ、最後まで読んでください。どんでん返しというわけでもないけど、私には驚きの結末が待っていました。
ご老人は皆「ぽっくり死にたいねえ」なんて言うもんですが、なかなかそうもいかない。おうちで死ぬには綿密なフォローが必要。

2021/11/01
【読んだ】宮下洋一氏「卵子探しています」
世界六国での生殖医療の実態について。技術は同じでも国が変われば常識が変わる。
卵子の「売買」ができるなら精子だって。代理出産、男女産み分け……人はどこを目指すのか。
不妊治療という言葉は変だというのは正しい。生殖補助医療がより正確だ。

【読んだ】佐藤賢一先生「王妃の離婚」
非常に痛快だし、他にない題材(ルイ12世離婚裁判)を注釈もなく読ませる力量は流石で面白い。
反面、主人公以外の人物の心理に疑問も感じた。また、ネットで調べた範囲でも離婚裁判の争点はやはり小説と史実で異なる模様。99年直木賞受賞作品。

2021/11/03
【読んだ!】山野辺太郎先生「いつか深い穴に落ちるまで」
文藝賞と言えば、若い人の書いたヒリヒリするような心理小説のイメージがあったのですが……
これは愉快! すっとぼけた感じがして、好きですね!
でクロージングどうすんのかなあと思っていたんですが、笑ってしまいました。楽しく #読了

2021/11/04
【読んだ】斎藤美奈子氏「妊娠小説」
「舞姫」に始まる日本の「デキちゃったんだけど」系物語をパターン分析した評論本。
目の付け所が流石すぎて秀逸だが、これは妊娠に限った話じゃなくて、小説というものにはどうしても「型」があるものです。実は作家志望者こそ必読かもしんない一冊!

2021/11/05
【読んだ!】池澤夏樹先生「スティル・ライフ」
いや、いいなあ……これ、ほんといいなあ。
どちらかというと声優の春菜さんの方がなじみがあるんですが、しかもなぜかずっと女性作家とばかり思い込んでいたんですが、読んでみたらめっちゃタイプでした///
これから少しずつ読んでいこう!

2021/11/06
【読んだ】笠井千晶氏「家族写真」
3.11福島。放射能より多くの人命を奪ったのは、津波だった。
ある被災家族に向き合い、時間をかけて綴られたノンフィクション。素晴らしいと思うのは、作品ができた後も交流が続いていること。
この厚みは、本物にしか出せない。小学館ノンフィクション大賞。

2021/11/07
【読んだ】日上秀之先生「はんぷくするもの」
見た目より骨太な物語。被災文学のようだが、本当に原因が津波なのかは明記されてはいない(と思う)。
事象や人物が全てバラバラに描かれ、そこから何を見出すかは読者の力量による。タイトル含めて全部書かれているはず。分かり易くない物語に好感。

2021/11/08
【読んだ!】小川洋子先生「やさしい訴え」
非常によい! 山奥の別荘で静かに熟してゆく大人たちの三角関係……彩るは「チェンバロ」というセンスが最高。
作中で何度も演奏される表題の曲も実在していました。いい曲ですねぇ。あんまりドロドロして見えないのはこの曲の雰囲気かもしれない。

2021/11/09
【読んだ!】池澤夏樹先生「アトミック・ボックス」
いや驚きました。新聞小説らしいのですが、スリリングな冒険劇に表題通りの陰謀が絡んで……という内容。
これを芥川賞作家が出版している事実が、嬉しかった。
大変な陰謀なんですが、これ私でもやっちゃうなあ。非常に納得いく心理が流石。

2021/11/10
【読んだ】苫野一徳先生「『自由』はいかに可能か」
一般向け哲学書だが「なんで勉強せんといかんのや」などと反抗する中学生……には少々難しいので高校生あたりにおすすめしたい内容。
と思ったら著者は教育関係者。自由と欲望の関係については面白いが「芋粥」という有名な小説を思い出す。

2021/11/11
【読んだ】原田宗典先生「優しくって少し ばか」
初期短編集なんですが、そのうち「ポール・ニザンを残して」が非常によい。これと他二編を合わせて「おまえと暮らせない」としてすばる文学賞佳作とのこと。
短編ほど腕が要りますから、短編連作で新人賞受賞は珍しい。マハ先生のお兄さんです。

2021/11/12
【読んだ】川端康成先生「山の音」
いやこれもう地獄じゃん……。鎌倉の美しいお庭付きの邸宅で繰り広げる家族ドラマ。
耄碌しかけた爺さん視点で話が進むが、若い嫁から相談されたら即離婚をおすすめする案件。
折々の自然を詠み込んでなにやら意味深な美しい文体で綴られる濃ゆい人間関係。

2021/11/13
【読んだ】星新一先生「ご依頼の件」
この本昭和五十五年! の本(の文庫化)なんだそうです。全然昭和感がないのが凄い。秘訣は「時事風俗と離れる」とあとがきに書いてあります。
なるほど。
逆に言えばここに書いてあることのほとんどは40年経っても全然変わらなかったことになるわけか。

2021/11/14
【読んだ】柳原三佳氏「私は虐待していない」
揺さぶられっ子症候群。首のすわらない乳幼児を強く揺すると脳に損傷を負うことから、揺さぶりは虐待と認識される。半面
目を離したすきに赤ちゃんが転んで頭を打った。
この程度の事故から虐待として起訴される親も……。いい塩梅にならんもんか。

2021/11/15
【読んだ】桐野夏生先生「顔に降りかかる雨」
乱歩賞受賞のリデビュー作品ということで、非常に安定感と技術の高い小説。さりげなく書かれているけど、筋が滅茶苦茶入り組んでいて主人公視点だと何が起きているか先読むのが難しい。
女性主人公で和製ハードボイルドというのは今読んでも珍しい!

2021/11/16
【読んだ】三秋縋先生「スターティングオーヴァー」
2ch出身という異色の経歴、現在は人気作家の出版デビュー作。
人生二週目、誰より最強無双……のはずがアレ? ……というお話。
意外性もあって手堅くまとまっているけど、このネタは短編向きだったかも? さくっと読めるところは好印象!

2021/11/17
【読んだ!】遠野遥先生「改良」
文藝賞の中では短めの作品。淡々とした書き味がすごくよいと感じた。個人的に最近の若手作家の中ではいちばん文章が読みやすい。
何か答えがあるような話ではないものの、独自の視点のようなものを持っている作家さんだと思う。急にグロかったという意見は同意。

2021/11/18
【読んだ】岡嶋二人先生「99%の誘拐」
面白い……! 昭和63年初出の吉川英治賞受賞作品で、さすがにハイテク感はもうないものの(スマホって便利ですネ)スピーディな展開とサクサクした文章の魅力は今なお輝く。
追悼読書のつもりではなかったんですが、素敵な物語をありがとうございました。

2021/11/19
【読んだ!】小川洋子先生「妊娠カレンダー」ほか
素晴らしい。文学作品は何をどう評価すればよいかいつも分からないが、この作品は
読みやすいのに味わい深くどこか個性的な文章、作為的でも表層的でもない人物像、一度読んだら忘れられない鮮やかなストーリー
全てが揃っている。素晴らしい。

2021/11/20
【再読】伊集院静先生「機関車先生」
子どもにも読めるようにとほとんどの漢字にルビが振ってある。読みやすくも美しい文章に、高潔な主人公が清々しい。
が、実は機関車先生の内面は読者にも分からない。彼は何者なのか。大人になってから読み直すとそんなことが気になった。柴田錬三郎賞。

2021/11/21
【読んだ!】バルザック「谷間の百合」
いやぁ……圧巻。学生時代に「なんや話がすすまんのぅ」と思って序盤で放棄した記憶があるのですが、これはぜひ最後まで読んでください。二百年読まれるだけのことはあります。
読中、二言目には「騎士道精神!」と言ってた英文教授のことを思い出してた。

2021/11/22
【再読】桜庭一樹先生「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」
ライトノベルを書いてらして、ある日気が付いたら一般文芸に転向している作家さんが時々いる。
この本はラノベ文庫レーベルから出版され、後から単行本化した稀有な一冊。
変な大人ばかりの町の苦しい子どもたち。悲劇だが、力強い物語。

2021/11/23
【読んだ】大江健三郎先生「個人的な体験」
唐突で落差さえ感じるラストシーンについて。これは私小説ではないと著者も解説しているが、私にはある種の私小説として読めた。
とすればむしろ重要なのはラストシーンの方で、よくできた全体はあるひとつの悪夢に過ぎないのでは。
小説って難しいな。

2021/11/24
【読んだ!】砥上裕將先生「線は、僕を描く」
なんだかぼんやりした主人公があれよあれよと水墨画なんて始めてしまって驚いたけれど、丁寧に芸術について教えてくれた素敵な小説。
芸術はなんでも基本が大事。大切なことが優しい人たちの言葉を借りて語られる。繰り返し読みたいメフィ賞作品!

2021/11/25
【再読】三島先生「金閣寺」
どうしても柏木くんに目が行ってしまうが、敢えて溝口による犯罪小説として読んでみる。
文学作品として申し分ないが、果たして真実はこれだろうか? という疑問が初めて芽生えた。
本日は憂国忌
散るをいとふ世にも人にもさきがけて 散るこそ花と 吹く小夜嵐

2021/11/26
【読んだ】李龍徳先生「死にたくなったら電話して」
ひぇっ!! ただただヒロインが恐ろしい。痴人の愛のナオミは生き生きして妖艶だったけど、初美は怖いしヤベェ。やり口が洗脳者のようだ。
蔵書がアブナいのはまだいいとして、部屋にヘンリー・ダーガー飾ってる女性なんてやめとけって…… 

2021/11/27
【読んだ】少年犯罪についての本
事件についての個別研究ではなく、多くの事件から共通項を洗いだそうとする研究は、この分野には向かないのではないか。
犯行に走る原因が「少年のその時の心理」である以上、複雑系として考えるべきで、何かの原因を除けば安心ということにはならないだろう。

2021/11/28
【読んだ】鈴木るりか先生「さよなら、田中さん」
びっくりしました! 小学生が書いた(出版時は中学生)とは思えぬ文章、大人以上の人間洞察。
田中さんのお母さんはママというより「母ちゃん」で、昭和のままに生きている。娘もしっかり者だがなぜか昭和感があるのが微笑ましい。爽やかに#読了

2021/11/29
【読んだ】笹原和俊先生「フェイクニュースを科学する」
アメリカの研究ベースだが、おそらくどこも似たようなものだろう。私もすでにデマの一つや二つ信じているに違いない。
なおデマをデマと教えてあげることは無意味どころか宣伝になるので逆効果……だそうです。
基本スルーが上策か。

2021/11/30
【読んだ】水上勉先生「金閣炎上」
例の事件を詳細に調べたノンフィクションに近い作品。
美への嫉妬云々というのは実際犯人も口にしているが、そういう観念的な理由が原因ではないんじゃないかと思った。
「金閣寺」の溝口に疑問を持ったら一読いただきたい一冊。ただし絶版本のようです……。

【読んだ】少年犯罪についての本
内容は非常に興味深い……が、これ供述調書の引用じゃないですか。少年裁判が非公開なのにこれ出版しちゃって大丈夫なん?
と思ったら全然大丈夫じゃなかった。情報漏洩事件で情報源が逮捕・有罪判決。
個人的に少年犯罪よりむしろそっちの事件が気になった。

2021/12/01
【再読】シュライヴァー「少年は残酷な弓を射る」
オレンジ賞受賞。非常に不穏だが小説として間違いなく一級品。
少年犯罪を描いた小説で、出版するまでだいぶかかったそうだ。社会的影響とかニーズの問題らしい(却下した出版社談)。
出版され翻訳されてよかった。これは読まれるべき物語だ。

2021/12/02
【読んだ】クッツェー「恥辱」
とにかくすごい作品だ。確かに恥辱について書かれながら、その恥辱は一つではないし、主人公だけのものでもない。人は皆、何度も泥をかぶりながら生きている。
が、内容や展開の割に読み口は重くない。99年の小説だがすでに普遍性を感じた。

2021/12/03
【読んだ!】中村文則先生「銃」
濃密な小説。これがデビュー作というところが、さすがとしか言いようがない……
文庫だったので同時収録「火」も読めました。こちらもキリッとした短編、女性一人称の語り口が素晴らしい。女性として魅力的とは言い難いところがまた、よい!
おすすめです!

2021/12/04
【読んだ】呉勝浩先生「スワン」
白昼のショッピングモールで無差別テロが起きて……という話。この武器が使い捨て銃。
なぜ、使い捨てるのか?
銃身はアルミ合金(で覆う)と書いてあるがそれなら鉄で作ればもう少し強度出せそうじゃない?
一晩考えたけど分からん。詳しい方の意見が知りたい。

2021/12/05
【読んだ】木澤佐登志氏「ダークウェブ・アンダーグラウンド」
前半のダークウェブマーケットの歴史が分かり易くよくまとまっていた。そもそもTor使ってなんで逮捕されたのか? という私の疑問はおおむね解消されたのでヨシとする。
後半は思想的な話。参考程度に読む。紙質がかなりよい。

2021/12/06
【読んだ!】マキューアン「贖罪」
これが現代英文学の覇者か……(ごくり!)
重厚なテーマを備えつつ、技が華麗に決まって言葉もない。本筋とそんなに関係ないことだが作中で「明解な解答の時代は終わったのだ」と。
まさしくその通りだと思った。現代文学は今そういうことをやっているんだ。

2021/12/07
【読んだ】松浪信三郎先生「実存主義」
前提知識が少ないからか、全く理解できなかった。
よく分からないのになぜ哲学・思想系の本もたまに読むかというと、よく分からないものを読むことが大事だと思っているからです。哲学・思想と文学は地続きなので逃げ回ってもいられないなあと……

2021/12/08
【読んだ】青山七恵先生「ひとり日和」
若い女の子の内面が淡々と描かれていて表面的には何も事件が起きない。が、きちんと書くべきことが書かれているので、この女の子やおばあさんがどういう人なのかが一読して浮かび上がってくる。
小説における描写とは何か、一つの解が示されている。

2021/12/09
【読んだ】キング「ハイスクール・パニック」
キングの最古長編、かつ本人の意向で重版禁止された曰く付きの本。
なんか高校生が銃持ってクラスメイト人質にして……なぜか○○が始まる話。どうもキングが高校生の時に書いた話らしい。天才的だとは私は思わない。キングのスタート地点を読めた。

2021/12/10
【読んだ】松岡圭祐先生「高校事変」
いやぁ、こら大変なことですよ……スケールのデカさに呆然となりながら読みました。
魅力は頭脳派アクションシーンとヒロインの無双っぷり。かなり殺伐とした世界観なので人を選びそうですが、リアルタイムが面白い作品だと思います。
年四冊ペースは凄い!

2021/12/11
【読んだ】津田哲也氏「銃器犯罪」
90年代までの日本における銃器犯罪とその対策についてまとめてある。
現在とは事情が違うけれど詳しくデータも載っているので勉強になる。
著者は銃器犯罪研究家で、ドラマや映画の監修なんかもしている方です。

2021/12/12
【読んだ】フーコー「言葉と物」
難しかったが興味深く読んだ。エピステーメーという概念を手に入れた! まだ理解は浅いが、なるべく忘れないようにしよう。
最後に「人間の終焉」について書かれているが、全体を通して読むと不吉な予言などではない。次の時代の到来のことを言っているのでは

2021/12/13
【読んだ】全米ライフル協会「ガンファクトブック」
NRA……なんか破産したらしいですけれども、銃の基礎知識ということで一読してみました。
日本人の私からしたらマニアックで難解に見えますが、たぶん基本的な事柄なのでしょう。読み物というより辞典に近い構成。#読了

2021/12/14
【読んだ】ムカジー「遺伝子 上」
ピュリッツァー受賞者による科学本。今のところ、遺伝から遺伝子の発見史のまとめを一般向けに、という内容。
特別な内容ではないものの、さすがによくまとまって読みやすい。大学の講義本のような読み口だがこのレベルの講義だったら一限でも出席できる。下巻に期待

2021/12/15
【読んだ】ムカジー「遺伝子 下」
話題はいよいよヒトゲノム解析の歴史と展望へ。一部専門的な内容もあるが、具体的な書き方で一般人にも充分興味を持って読み進められる。
今のところ遺伝子操作最先端は中国らしい。すでに遺伝子操作ベビーも誕生、遺伝子ビジネスも急成長中。
一抹の不安。

2021/12/16
【読んだ】家田荘子氏「恋したはずのフィリピーナたち」
最近フィリピンと日本の関係性に着目している。別にパブ通いしているとかではないですが。
これは90年代の本なので現在は事情も異なっているだろう。今日本人男性から「結婚しよう」と言われて喜ぶフィリピン女性がどれだけいるか……

2021/12/17
【読んだ】ドーキンス「利己的な遺伝子」
完全に読みそびれていたが、旬を外してしまった。ほとんどが先行研究からの推論であるにも関わらず40年(!)経っても決定的な反論が出ないようだ。一般向け啓蒙書としての役割は充分果たした。その証拠に初読だがほとんどの話をどこかで読んでいる。

2021/12/18
【読んだ!】オコナー「絶滅できない動物たち」
今地球は「六度目の大絶滅期」と言われている。人間が地球環境に影響を与えすぎるせいだというのが一般的。
ならば絶滅しそうな生物を救ったり、絶滅した生物をクローンで蘇らせては……という話。
どうなるかは未知だが予想は充分に語られている。

2021/12/19
【読んだ】平野弘道先生「繰り返す大量絶滅」
90年代の本なのですが、高校生くらいで読めそうな難易度なので読んでみました。
有名な白亜紀絶滅の隕石衝突説……に疑問もあるという内容。現在も新説がいくつも出ているし、ひっくり返る可能性も。何かが衝突したのは間違いなさそうですが。

2021/12/20
【読んだ】水野操氏「3Dプリンター入門」
業務活用を想定した入門書。CADデータを作れる人が社内にいるのが前提。作業者向けというよりは、できた模型でプレゼンしたい営業さんなんかが読んで「どういう仕組か」を理解するのに役立つんじゃないだろうか。
実際私は素人だがなんとなく把握した。

2021/12/21
【再読】吉川浩満氏「理不尽な進化」
前半は絶滅した生物たちの何が悪かったのかを考察。後半は進化論にまつわる人々(主にグールド)についての論考。
謎のセルフボケ/ツッコミが多用されているのは気になるが、難解な本を多数読み込んでおられる。科学・哲学系ブックガイドとしても◎

2021/12/22
【再読】長野まゆみ先生「少年アリス」
若い頃夢中になって読んだ本。今読むとなんとなくこそばゆく、ノスタルジヰを感ずる。
児童文学のような色彩に旧仮名が映えるが主人公の名前がアリス(男児)というセンス……痺れる。
昔は気づかなかったけどこれ、昭和最後の文藝賞なんですね!

2021/12/23
【読んだ!】土屋健氏「古生物たちのふしぎな世界」
イラストが豊富で楽しい一冊。古生物の中でも古生代を取り上げ、2017年時点で最新情報も盛り込んである。
今から何億年も前の話なんだけど、こういうのはすぐ定説がひっくり返るのでちょくちょく最新情報を入れとかないといけない。

2021/12/24
【再読】カポーティ「冷血」
何度読んでも素晴らしい。間違いのない素材選び、綿密な取材、必要なものを選択し再構成する構成力、そしてそれを客観的にしかし文学的に表現する文章力。
世界でも最高峰の作品のひとつと思う。
折り重なるように描かれる市井の人々の中で冷血がひときわ際立つ。

2021/12/25
【読んだ!】ニュートン「古生物大図鑑」
全頁カラーイラスト満載で、お子様も楽しめる! 紙質・印刷ともに申し分なし。
しかし地球って生物に厳しすぎやしません?
全球凍結とか世界火山噴火連鎖とか恐怖すぎる。黙示録や往生要集にはそんな昔の記憶が書かれているのかもしれませんねぇ……。

2021/12/26
【読んだ】山賀進先生「地球について、まだわかっていないこと」
著者は麻布中高の教諭。中学生には若干難しいかもしれないが、高校生なら麻布生でなくてもすんなり理解できる筈。しかし実際、科学常識は日進月歩なので高等教育受けて久しい一般の大人こそ読みたい。
昔習った知識はもう古い……

2021/12/27
【読んだ!】クンデラ「無意味の祝祭」
本年の読書をこれにて〆られたことを感謝します。
小説が、多くを語ることを許さない。ネタバレがどうのということではなくてね。
私は好きですよ、こういうの! #今年も #読了

結構ボリュームありましたね! では、まあおちゃんが勝手に選ぶ下半期大賞を発表しまぁす!!

ノンフィクション部門
松永正訓医師「運命の子 トリソミー」
これは全方位におすすめできる良作です。2013年度 第20回小学館ノンフィクション大賞受賞作で、文章も非常によいですし、今の世の中に一石を投じる、それでいて押しつけがましくはない素晴らしい本です。
老若男女を問わず、読んでみていただきたい一冊でしたね!

海外小説部門
シュライヴァー「少年は残酷な弓を射る」
今回はかなり有名な作家中心で読んだのでどれも本当に素晴らしい出来栄えの作品ばかりだったのですが、意外にも再読のこれが一番おすすめでしたね。決して決して「いい話~!」とか「感動する!」というようなお話ではないのですが、私は好きです。
来年もできる限り海外文学も読みたいなと思います。

国内小説部門
夢枕獏先生「神々の山嶺」
そして、数量的には一番読んだ国内小説部門からは、芥川賞作家もきらめく有名新人賞も押さえて、夢枕先生がよかったです!
今期は山に興味があったので、小説以外で山系ノンフィクション・実用書もそこそこ読んだのですが、この小説は熱く面白く強い記憶を私に残してくれました。
やっぱり、小説っていいですよねぇ!! もし読んだことない方や山に興味のある方、こちらおすすめですよ~☆

他にもよい作品はたくさんありましたが、以上三作を独断と偏見で選ばせていただきました。受賞者様は誰も気づかないと思いますが、おめでとうございまぁす!! ^ ^ノ

さて。ここまでお付き合いいただいた皆様もお疲れ様でした。なんと一万八千字ほどお読みいただいておりますm(_ _)m 騙されて最後まで読んじゃった方、もしいたら、どうもありがとうございますっ☆

今年最後の記事になりましたので、皆様どうぞよいお年を。
読んでいただいたお礼に、来年も皆様が素敵な本と出合えますよう、お祈りしておきますね☆

以上、いつでもどこでもフォロワー様大募集中の あまおう まあお でした! もうはやく年明けてくれ~(心の叫び) 

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