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賃貸のほうが持ち家より有利なのであれば、大家業は成立しないのではないかしら

賃貸vs持ち家。皆さん悩みますよね。私も悩みました。賃貸派、持ち家派、いずれの論もそれぞれ説得力がある感じがするのでまた難しい。結局のところ唯一の正解は無いんだろうと思いますが、多分このテーマで検索する人はご自身が決断をするために参考にされたいんだろうと思いますので、一般解ではないまでも私の答えとその理由を書いてみたいと思います。

私のケース

私は今、区分所有のマンションに住んでいます。5年ほど前に買いました。定年までおおよそ20年ほどでローンを返せる中古マンションです。それまで住んでいたのは実は同じマンションの別の部屋で、そこは分譲賃貸でした。このマンションだったのは明確な理由があって、両親が住むマンションだったからです。なので、余りマンション選びそのものには悩まなかったのですが、購入にも悩みませんでした。理由は2つ。

  1. 15年以上経過しているマンションだったが、価値が上がっていた。もちろん将来の価格はわからないけれど、少なくとも単純に右肩下がりなマンションではないと信じることが出来た

  2. 分譲賃貸で暮らしていて、周囲の住環境も問題なく、マンションの住人の皆さんも落ち着いていて、ゆっくり子育てできる環境とわかった

その上で一般論

ここまではどちらかというと個別事情ですが、もちろん決断の前には色々と考えました。つまりは賃貸vs持ち家論です。双方を長期的に比較して「XX歳まで生きることを考えると持ち家」とか「家族が少なくなると持て余したりするし引っ越しも考えると都度フィットする家を探せる賃貸」とか、「老後家を貸してくれる大家はいない」とか「将来は住宅が過剰共有になるのでどこだって安い価格で借りられる」とか「子供が住みたがらない家を残されてもそれは『負動産』だ」とか、様々ありましたが、まあ正直余りそういうのはどっちもどっちかなあという感じで、、、。結局は「引っ越しするかどうか」も家族の形も、自分が何歳まで生きるかもわからない。将来の景気だってわからない。どうしたいかという希望はあれど、希望通りに行かないのが人生ですしねえ。。。

結果的に私が一番納得できた考え方は、「もし本当に賃貸のほうが持ち家より有利なのであれば、大家業なんて成立しないじゃないか」というものです。これは誰かが教えてくれたことではなく、自分で考えました。自分で考えたので納得感があるだけなのかもしれませんが、実際今もそう思っています。

買うか、買って貸すか、それを借りるか

ご説明します。まず、とあるファミリータイプのマンションが7,000万円で買えるとしましょう。どういうマンションか(駅チカか、とか、築浅か、とかそういう条件)は一旦無視します。基本的には、投資にも向いている良い条件だとしておきましょう。

これ、自分で住むために買うとしたら。もちろんマンションそのものに加えて仲介手数料とかローン手数料とか金利とか、不動産税とか管理費・修繕積立金とか色々なお金がかかりますね。こういう諸条件を比較して「持ち家はお金がかかるよ」という議論もありますが今回は余りそこも大事ではありません。

で、もしこれを投資不動産として買うとしたら。基本的に、かかるお金は全部一緒です。あ、一つだけ違いますね、それは住宅ローン金利です。たとえば2023年9月現在、自宅用の住宅ローンの変動金利は0.3%程度。それに対して投資用不動産のローンの変動金利は平均して2.5%程度と言われます。結構違いますね。つまり、投資用不動産の方が「元手」がかかります。

さて、投資用不動産は、誰かに住んでもらって、末永く家賃をお支払いいただくことで成立します。もちろんこのときの家賃や礼金や更新料などの収入の総和は、支出の総和を超えることが期待されます。わずかに超える程度では足りません。なぜなら投資家はリスクを負っているからです。何%乗せられるのかは腕の見せ所っていうところだと思いますが、いずれにせよそれはプラスであることを期待するわけですね。(※ここは、多少キャッシュフローがマイナスでも最終的に不動産が手に入るなら勝ち、という考え方もあると思います)

で、次に、全く同じ7,000万円のマンションで、誰かが投資用として購入し貸出されている状態のものに、賃貸で住むことにしましょう。このとき支払う家賃って、いくら程度なんでしょうかね。少なくとも、自宅として購入し、毎月支払うことになる住宅ローンの返済額よりも安いなんてことはありえないはずです。だって投資よりも高いお金を回収しないと投資の意味がなくなってしまいますので。すごくざっくり計算するならば、自宅として住む場合の月次返済額が20万円だったとして、投資用の月次返済額は22万円、それが貸し出された場合の家賃は25万円、なんていうことがあるはずだと思うのです。

もちろんそうなってないケースもあるのでしょう。しかしそれはどういうことかというと、大家さんにとって逆ザヤ、つまり不動産投資失敗ということです。こんな逆ザヤがそこら中で発生してしまっていたら、全国津々浦々の大家さんは大変ですね。もし世の中の不動産が逆ザヤだらけだったら、誰も不動産投資なんてやりたがらなくなってしまいます。だから、通常であればちゃんと、不動産投資が成立するようになっているのだろうと推察します。

返済額と家賃がトントンなんてありえない

さて、ここで最初の論点、賃貸vs持ち家をもう一度考えてみます。賃貸vs持ち家で金銭的なシミュレーションを行う場合、大体、住宅ローンの月次返済額と家賃はトントンで見積もられているのではないでしょうか。しかしここまで述べてきた通り、住宅ローンの月次返済額と家賃はトントンであってはならないはずなのです。間に銀行や投資家の利益が挟まっている以上、持ち家よりも賃貸のほうがコストがかかるのは構造上当然、と、私はそう考えています。(もちろん例外はあるでしょう、でもそれはあくまで個別の議論であり、ここで扱っているのは一般論です)

ということで、賃貸vs持ち家の結論は「持ち家」というのが私の考えでした。繰り返しますがあくまで私が見ている限定的な世界で考えたことで、決して万能な考え方ではないと思いますし、私の結論が全く当てはまらないケースもたくさんあるんだろうと思います。それに、もちろん賃貸には賃貸ならではの魅力もあります。私も賃貸そのものは結構好きで、特に新居を探すときは楽しくてたくさんの物件をあちこち覗いてしまい、不動産屋さんからはかなりコスパが悪い客だと思われていたと思います(不動産屋さんごめんなさい。。。)。学生の期間だけとか赴任の期間だけとか、賃貸一択な状況もあるでしょうしね。なので決して「賃貸」を否定するものではありません!ただただ、もし「賃貸vs持ち家」で悩まれている方がいらっしゃったとき、私の一個人としてのケースが多少なり判断のお役に立ったらいいなあと思いつつ。


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