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セナのCA見聞録 Vol.35 大統領のお通りです

ニューヨークへ飛びました。

ロングフライトでした。体はへとへとです。

「早くホテルへ着いて、熱いシャワーを浴びてすっきりしたい。」JFK国際空港からミッドタウンにあるレイオーバーホテルへ向かう送迎用のミニバンの中で、私はそんなことを考えながら外の景色をボーッと眺めていました。

当地は秋晴れの気持ちのいい日で、夕方4時をまわった空はどこまでも続く平らな土地を延々と見渡せる穏やかな午後でした。20分くらい走っていると、はるか前方にピカピカと廻るサイレンをつけたパトカーが高速道路を遮るように横付けに何台も止まり、車をそこから先へ進入できないように規制を始めているのが見えました。

「あれ? 交通事故かな?」と思いましたが、反対車線も数分のうちにガラガラになり、間も無く一台も車が来なくなったのを見て、何が起こったのか不思議に思い辺りに目を凝らしました。

すると、東西に走っている前方の別の高速道路でも車が走っていないではありませんか。

「何これ?」「どういうこと?」「何があったの?」

同乗しているみんなが口々に窓から見える様子を伝えあいました。左脇の車は運転手が車から降りて道路に立ち、前方の様子をうかがっています。

10分、20分とするうちに道路は車から降りた人でうじゃうじゃし始めました。その頃になって、無線で情報を得た運転手が、何が起きているかを私たちに教えてくれました。

「大統領がお通りなんだってさ。」

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