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おばあちゃんのおひざもと 第19話 テニヤン島へ行っちゃった

「単身赴任っていうのかい、今風の言葉では。昭和の17年にまたおじいちゃんに宗務庁から開教師としての駐在命令が出てねえ。サイパン諸島の一つ、テニヤン島っていう島に行くことになって。その島に、曹洞宗の寿海寺っていうお寺があって、そこがまた長いこと無住職で誰も住んでいないままになってたんだとさ。それで、その土地を管理している南洋庁ってところから、寺を使用しないのであればその土地は南洋庁へ戻すように、っていう通知が届いたんだって。さてどうしようかと宗務庁で話し合いをする場におじいちゃんも関わっていて、そのお寺を建てた人を間接的に知ってたらしいんだよね。若いご夫婦が幼くして無くした娘さんを供養するために私財を投げうって一生懸命に建てたこととか、いろんな苦労を聞いていたようだよ。ある日、あの寺を無くすわけにはいかないが、どうしたらいいか円通寺さんのご住職に相談してくるって南先住まで出かけて行って、家に帰ってくるなり、「私が住職を引き受けることにしたよ」って言うの。幸ちゃんのお父さんと孝江おばちゃんがまだ5、6歳の時だよ。「えー、そんな〜。じゃあ私たちはどうなるの」って聞くと「私は一人で行くからお前たちはここに残っていなさい」と。

3月半ばのまだ寒い朝に、太海の駅までみんなで歩いて見送りに行ったよ。東京からもわざわざ総代とか偉い方達が5人も送別にいらしてくれた。何だかこんな田舎にしてはやけに盛大に送別をして下さったんだけど、子供達がさみしそうだった。それでおじいちゃんは横浜港から船に乗って、一人でテニヤン島に行っちゃったの」

*この本は第1話から46話まで、順番に各章の最初の頭文字一音をつなげていくと、あるメッセージ明らかになります。さて、どんなメッセージでしょうか。

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隠されたメッセージ。いろはかるたの小説版。最初から最後の章まで、各章の頭文字を書き出していくと、最後にこの本の核心が明らかになります。かるた同様、お遊び感覚でも楽しめる本です。

大正3年、1914年にアメリカに生を受け、22歳までに3度も船で太平洋を横断し日本とアメリカを行き来したおばあちゃん。ロサンゼルスの大都会…

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