見出し画像

おばあちゃんのおひざもと 第44話 薪割り(まきわり)

「薪(まき)集めと薪割りは、幸ちゃんのお父さんの仕事だった。学校から帰ってくると、裏の山へ入って使えそうな枯れ木を拾って集めてきたり、木を何本かナタで切り倒してズルズルと家まで引っ張ってきたり。釜戸にくべる薪が毎日必要だったから、薪を予め用意しておいてもらわないとおばあちゃんは炊事ができないからね。薪割りは男手じゃないとできない仕事だから、斧を使って裏庭に木を割る場所がちゃんとあってね、そこでおじいちゃんがやったり、おじいちゃんとお父さんが一緒に交代交代でやる時もあれば、お父さん一人でやる時もあった。おじいちゃんもお父さんも細い体で「えいやっ」って大汗かきながらやってたよ。

最初のうちはおじいちゃんと組んで交代でやってたお父さんも、大きくなってくると一人で山のあちこち歩き回って、適当な木を選んで切っては持ち帰ってくるようになってね。杉の木がすぐ火が着くから火起こしには向いてるけど、すぐ消えちゃって火持ちが悪い。だから火を起こしたら、次は火持ちのいい松やクヌギの木に変えるとか。おき火用にはケヤキがいいとか、そんなことも人から聞いたり、経験から覚えていったよ。お父さんのお陰で縁の下にはいつも十分な薪が並んでた。焚き木は一定期間空気にさらして乾燥させてからじゃないとよく燃えないからね。切ってすぐ使えるわけじゃないから手間がかかるんだよ。

薪は炊事だけじゃなくてお風呂にも必要だったから毎日の必需品。お父さんと正良おじさんは火の扱いもしっかりしてた。私が火を炊く時は、必ずバケツに水を入れて持って行くこと。火消しをするときは水をかけて煙が出なくなったのを確認してからじゃないと火の元を離れないことなんかを、徹底して教えたから、そこはちゃんと守ってた。正良が小学生くらいの時は、よく火の粉が飛んだり、火が途中で消えたりしないように火の番をさせた。火が消えそうになると薪をくべてもらってね。1時間でも2時間でも火がついてる間は番をしててもらったよ。火事になったら大変だからね。

また家の場合は火鉢で暖をとったから、炭も必要だった。床の間にある大きな火鉢用の炭と本堂に30個くらいある小さな火鉢用の炭と、お客さんが来る時には早めに炭を起こして灰に入れて準備しなくちゃいけないから、それにも随分時間がかかったし。昔の子供たちは家の仕事がたくさんあったから、今みたいに塾だの遊びだの、スポーツだのなんて考えられない。運動なんて家の仕事やってれば十分だよ。」


*この本は第1話から46話まで、順番に各章の最初の頭文字一音(ひらがな)をつなげていくと、あるメッセージ明らかになります。さて、どんなメッセージでしょうか。

ここから先は

0字
隠されたメッセージ。いろはかるたの小説版。最初から最後の章まで、各章の頭文字を書き出していくと、最後にこの本の核心が明らかになります。かるた同様、お遊び感覚でも楽しめる本です。

大正3年、1914年にアメリカに生を受け、22歳までに3度も船で太平洋を横断し日本とアメリカを行き来したおばあちゃん。ロサンゼルスの大都会…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?