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おばあちゃんのおひざもと 第8話 女学校時代

「アメリカにいるお前の両親から、日本にいる間しっかり面倒を見てくれと頼まれてるんだから、そんな勝手なことはするのは許さない」っておじさんにこっぴどく怒られたことがあったねえ。親の方針で、女の子なんだから教育は日本で受けさせた方がいい、ってことで、小学校から日本の学校に送られたの。女学校は津にあって、片田を離れて下宿をしながら学校に通った。4回も下宿先を変えたよ。3件目の下宿先はお琴の先生の家で、玄関を上がるとすぐ左の部屋には立派なおことが置いてあった。せっかくだからあの機会に少しは習っておけばよかったなあ、と後になってから思ったもんだけどね。あの年頃ってのは、もう大人になった気分になるもんだから「自分のことは自分で決める」なんて大口たたいてさ。友達と勝手に相談して別に住む場所を決めて、さっさと引越ししちゃったの。そうしたら、親代わりをしてたおじさんの所に下宿先から知らせがいったんだろうね。片田からカンカンに怒ったおじさんが飛んできてさ、「お前の親に任された責任があるんだ。アメリカに帰るまでは勝手なことはさせられない。ちゃんと元の下宿に戻りなさい」って怒鳴られて。どうせ私は親に大切にされてないから日本にいるんでしょ、なんて反発した気持ちがあったんだよね。それで元の下宿先に頭下げて戻らされたわけ。ばつの悪い思いを散々したね、あの時は。

女学校にいた頃に、昭和天皇と皇后陛下が伊勢神宮を参拝されるっていう日があってね。その時は全員制服姿で国旗を持って通りに並んで馬車で通っていかれる陛下を旗でお迎えしたよ。砂利道を走っていく馬車が見えなくなるまで、ずっとみんなで旗を振り続けて。忘れない思い出だねえ。」

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隠されたメッセージ。いろはかるたの小説版。最初から最後の章まで、各章の頭文字を書き出していくと、最後にこの本の核心が明らかになります。かるた同様、お遊び感覚でも楽しめる本です。

大正3年、1914年にアメリカに生を受け、22歳までに3度も船で太平洋を横断し日本とアメリカを行き来したおばあちゃん。ロサンゼルスの大都会…

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