セナのCA見聞録 Vol.52 ヨーロッパのびっくりバカンス その1
日本発―アメリカ経由―ヨーロッパ行き
12月上旬のある晩、電話がなりました。
スイス人の友人ステファンからでした。
「わあ、久しぶり。元気? どうしたの? 日本に来ることにでもなった?」
と聞くと、
「No, No, そうっだったらいいんだけど、残念ながらそうじゃない。実はね、今度イザベルと結婚することにしたんだ。来年の9月2日に。セナは僕達が付き合い始めたばかりの頃を知っている貴重な友人の一人だから、とても遠いのは承知の上で、是非来て欲しいと思うんだけど、招待状を送らせてもらってもいいかな。」
ということでした。
結婚式は南フランスの海辺にある町サンラファエルの教会で挙げるといいます。
私は「Wow, とうとう結婚するのね。おめでとう。喜んで招待をお受けするわ。なんとか休暇をとって必ず出席できるようにさせてもらうから。わざわざ電話ありがとう。」と言って電話を切りました。
数週間後。
私のもとにクリスマスカードと一緒に、別の結婚式の招待状が届きました。
昔一緒にスイスで仕事をしたイギリス人の友達キャサリンからでした。日付を見ると、9月9日。ステファンとイザベルの結婚式の丁度一週間後です。式場は英国のサウスウェールズ州カーディフ。
重なるときは重なるもので、お正月明け早々、今度は姉の結婚が決まりました。結婚式の日取りは9月15日。キャサリンの結婚式の6日後です。
ひと月に三つの結婚式。
しかも毎週違う国で。
さあ、全て出席するにはどうしましょう。
私の勤続年数で会社からは年に二週間の有給休暇がもらえるはずでした。休暇の時期は前もって申請することができ、それは一週間の休暇を時期を分けて二回とってもよいし、二週間まとめて一度に取ってもよかったので、私は九月にまとめて二週間の有給休暇を申請しました。年初めだったこともあり、運良く申請通りの日程で休暇を確保することができました。
次はどうやって移動するかです。
私は一度してみたかった〝アラウンド・ザ・ワールド〟をしてみようという気になりました。飛行機で地球を一周する旅。自社便を乗り継いでアメリカ経由でヨーロッパへ入り、帰りはロンドンから成田へ戻れば、地球をぐるりと一周することになります。
私は以前スイスに3年ほど住んでいたので、久しぶりに帰れることが嬉しく、ちょっと早めにヨーロッパ入りする計画を立てました。
2000年8月27日
「あ~、やっと着いた。長かった〜。積もる話は今晩ゆっくりするとして、少し横にならせてもらってもいい?」
スイスに住む友人美保子さんの家に正午過ぎに到着した私は、ヘトヘトに疲労した体でお願いしました。
この日、私は成田を出発してまずシカゴへ飛びました。そこからドイツのフランクフルトへ飛び、数時間空席の出る便を待ち、ジュネーブへ飛んだ後、電車でエイグルまで移動。そこから登山列車に乗り換えて、山岳地帯にあるここレザン村までようやくやって来たのでした。
成田からシカゴへ飛ぶだけでも太平洋+北米大陸を移動するロングフライトなのに、私は更にそこから休むことなく大西洋を越えてヨーロッパまでノンストップで24時間飛んできたのでした。
「いつも飛行機に乗っているけど、こんなに長いこと飛んだのはさすがに初めて。もう二度としない。」などと勝手な言い分を自分に放って、私はベッドに倒れこみました。
スイスの山あいに住む日本人とカナダ人のご夫婦とは、以前から家族のように親しくお付き合いさせて頂いている気の置けない間柄で、お互いの近況などを語り合いながら久しぶりの再会を楽みました。アルプスに囲まれながら澄んだおいしい空気を心ゆくまでたっぷり吸うのが、スイスでの最高の過ごし方。
雄大なアルプス山脈を目前にさわやかな外気をたっぷり浴びながら摂るバルコニーでの食事、ハイキング、湖畔での午後のコーヒータイムと、スイスらしい休暇を数日過ごした後、すっかり元気になった私は、南仏の友人の家を訪ねました。
次の目的地はフランスとスペインの国境に近いポー(Pau)。