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セナのCA見聞録 Vol.43 象に乗って山越え、山岳民族との出会い タイの旅 前編

学生時代の友達、美紀と一緒にとタイ旅行に一週間ほど行ってきました。

目的地はバンコクから飛行機で北に1時間あまりにの所にあるチェンマイ。

ここでタイ式のマッサージ学校に5日程通い、残りの日程は山中に散らばる山岳民族の村々を訪ね歩きました。

タイ北部は山岳少数民族が住むことで有名です。

宿泊先のホテルに出迎えにきてくれたガイドのサンコンさんと共に、私たちは朝早くにチェンマイの町を離れ、山の中へとピックアップトラックで向かいました。途中から赤土のオフロードになります。

小一時間のドライブで最初の村、ホーナムローンに到着。

突如として現れた異次元の世界。

そこには全く違った空気が流れていました。

鶏や、犬、豚、チャボなどの家畜が放し飼いにされて、そこここを自由に歩き回っていました。

高床式の竹で出来た家屋がそこここに散在し、床下の地面では家畜が残飯か何かを突っつきながら食べています。こんな風に人間と家畜が同じ空間に一体化した風景は初めて見ました。

その中の一軒でお昼をご馳走になりました。出された食事はタイ米とキャベツの炒め物。ジューっという出来立ての香りと音がします。

「あれ、これおいし~い。すっごい美味しい!」

どんな食事かと興味深々だった私は、一口食べておせじぬきに感激。新鮮な食材だからか、お腹が空いていたからか、とにかく瞬時に元気の出る食事でした。

家の中はとても狭く、粗末で家具など一切ない小さな部屋でしたが、そのお部屋の隅に置かれていた、簡単な祭壇がひときわ目立っていました。

それが古き良き時代の日本とも重なりました。

昼食を終えると村の裏手にある山腹を上りはじめました。トレッキングの開始です。山に入ると途中には道標はありません。道が二手に分かれたりする場所では、ガイドなしではお手上げです。

ひたすら静かに歩いていくと間も無く次の村に到着しました。

ヤオ族です。

赤い襟のついた民族衣装を纏い、頭にはターバンをまいています。言葉は全くわかりませんが皆さん暖かく歓迎してくれました。村の中を案内され彼らの独特の生活様式をいくつか見せてもらった後、村を後にし次の村へとまた歩き始めました。

山道を歩いているときにはほとんど人とすれ違うこともありませんでしたが、一旦村に到着すると、ヨーロッパ系の旅行者と多く出くわして、少しびっくりしました。

さて、この日はリス族の村落に宿泊しました。

アカとアチュという名の少年(青年?)がお世話をしてくれました。

一日中よく歩いたせいか、食事のおいしいことといったらありません。あんなに食事を心底堪能したのも記憶にないくらいで、至福を感じてしまいました。

一度の食事であんなに感激できるとは自分でも驚きでした。

夕食は外で摂りました。食事の後、アカとアチュが楊枝のような小さな枝を使って遊ぶ地元のゲームを手振り身振りで教えてくれました。簡単なので、すぐに理解できます。それを彼らと一緒に真剣きって夢中になって遊んだこと、、歌を歌ったり、聞かせてもらったりしたこと、庭にござをひいて、一緒に満天の星を静かに見上げたことなど、どれも宝石のようにキラキラした時間でした。

広い土間式の家の中にはゲスト用に一段高くなった板のベッドがありました。ごわごわの麻布団にくるまってスースーと吹き抜けてくる隙間風を感じながらの睡眠。板の上で寝たので、背中が痛くて眠れた気がしませんでした。

翌朝は鶏のけたたましい泣き声で早朝から起こされました。

シャワーや洗顔は外にある掘っ建て小屋の中でします。ドラム缶より少し大きいくらいの樽に水が貯められていて、木桶がすぐ下に置いてあります。水をそこから必要なだけすくって使うのですが、水には限りがあるので、髪を洗うなんてもったいないことはできませんでした。私は、次に使う人や水を汲んでくる人のことを思って最小限の水で済まそうと、さっと顔を洗って出ました。ところが美紀はちゃっかり洗髪して出てくるではありませんか。「ああ、あういうのって刺激されちゃう。」とか言って御満悦。全くもう。。。

2日目はドムという名の荷物運びの少年が加わりました。彼は私たちの昼食、夕食、翌日の朝食に使うコーヒーや紅茶など食事全てをかばんに入れて運んでくれました。

ツアーガイドのサンコンから「かわいそうなことに、ドムは数年前にヤシの木から落っこちてね、その時に頭を打ってしまって。それ以来こんな風に知恵遅れになってしまったんだよ。」と聞かされました。ドムは私たちツアー客の食事を背負い、わざわざ私たちのために村から村まで一緒に歩いてくれるのです。なんだか私は申し訳なく恥ずかしい気がしました。

道中、ドムはずっとご機嫌で、歌を歌いながら私たちの前や脇や後ろや、いろいろな位置で歩いていました。この日はとても日差しが強く、熱い炎天下の中、私たちはジャングルの中、マンゴ畑の中、いろんな場所を歩きました。

歩くのに必死な私たちは、無言でひたすら健脚なガイドの後をついて行くのですが、そばにはいつもドムの明るい歌声がありました。一生忘れられない光景です。昨日のことなど忘れ、明日の事は考えず、今一瞬一瞬を生きている子でした。



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