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「僕のちんこにピアス開けてください」11 最終話

案内されるまま一人で奥の部屋に行くと、ベットが一つ置いてあり、受付とは違う男がいた。
手には医療用の手袋がはめられ、どうやら穴を開けるのはこの人らしかった。

「じゃあズボンとパンツ下ろして、そのベッドに座ってください」

言われるままベッドに腰をかけた。
男は俺のちんこを持ち、ピアスを合わせたりペンで印をつけたりチューブのようなものを差し入れたり、事は淡々と進んでいく。
色々と説明されたけど、俺はほとんど聞いていなかった。
施術のことはプロに任せればいい、俺にとって大事なのは痛みに耐えること、それを紗季さんに見届けてもらうことだ。

あと少しで俺のちんこには太い針が刺され、存在感のある金属が俺の身体の一部となる。
俺はこの金属と共に生きる。
もうこれは、紗季さんの所有物としての証と思っていいだろうか。
いや、紗季さんのことだ、だめだと言うだろう。
でもいい、俺がそう思えばいいことだ。
愛する運命の人と共に、痛みを伴い装着した金属なのだからそう思わずにはいられない。

そうこうしているうちに、ピアスを開ける段階になってしまっていた。
一番大事な紗季さんがこの場に来ていない。
俺は焦り、針を刺そうとしている男を中断させた。

「すいません、あっちで待っている人がまだ来てないんで…」
「…呼びますか?」
「はい、お願いします」
「…さきー」

男は紗季さんを呼んでくれた。
呼び捨て出来る間柄という事にまたもや俺は嫉妬心を覚えたが、これから迎える大イベントを前に、高鳴る心臓でかき消された。

何も言わずに、壁の向こうから紗季さんがひょっこりと現れる。
既に見慣れたはずだが、紗季さんの姿を前にすると、初恋のように胸が締め付けられる。

「紗季さんすいません、横に座ってもらってもいいですか」

作業を中断された男と、夢が叶う俺が見つめる空間で、紗季さんは何も言わず移動し俺の横に座ってくれた。

「今からピアス開けます、すいません、手握っててください」

右側に並んで座った紗季さんは、既に触れそうな距離に置いてある左手で、僕の右手を握ってくれた。

「じゃあ、そろそろ開けますねー」

男の持っていた針先がちんこの裏をチクリと刺激する。
今から体験する痛みを予測し身体に力が入る。
紗季さんの手をギュッ、と握り締めた時だった。

金属に触れた。

同時に俺のちんこに激痛が走った。一瞬のことだった。
ちんこに針が刺さり、ピアスが装着される瞬間を見ていようと思っていた。
俺は握っていた紗季さんの手をゆっくり開くと、細く白い手に光る金属から目を離すことができなかった。

「はい、これで完成なので確認してみてください」

男にそう言われるも、俺は紗季さんの手を見つめたまま、少しも動けなかった。

こんなに綺麗な手、俺は今日会ってから手をちゃんと見ていなかったようで、また一つ新たな紗季さんの魅力が追加されてしまった。

俺はこの日を忘れない、到底忘れられないだろう。
運命の人の手を握り、証の痛みを経験したんだ。
こんな事、普通じゃ経験できない。
俺は幸せなんだ。願ってたことが叶った。そうだろう。
2年間想い続け、実際に本人に会えた。
初めて出会った日に芽生えた夢みたいな願いが、今叶った。
運命だろう。俺にとっては最初で最後の人なんだから。
これを運命と呼ばずに何と呼ぶのか。
大好きです紗季さん、愛していますあなたのこと、何でもいいい、こんなに好きなんです、僕の運命なんです、今日を迎えたのが間違いだったんですか、弱い俺は運命を間違えたんでしょうか、どこからやり直せば今日が変わっていた、紗季さんっ…

部屋はシン、と静まり返っていた。
食いしばる口から変な声が漏れる。
ボトボトとこぼれ落ちる涙は、止まる様子が無かった。

紗季さんは俺の手を離すと、座っていたベッドを立ち、部屋から出て行ってしまった。

器具を片付け、手袋を外した男が部屋に戻ってきて、ピアスを開ける場所のマーキングに使ったペンを手渡してきた。

「記念に差し上げてます」

差し出す男の指にはきらりと光るものが見えたが、それは俺の一部となったちんこのピアスだったかもしれない。

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