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緑のロッコールで写らないものを撮りたい

建築の設計をしたら竣工時に写真を撮ります。写真家さんにお願いすることもあるし、自分で撮ることもあります。
ポスター印刷するような品質でなければ、素人でもそこそこの機材があればそこそこの写真は撮れてしまいます。

でも違うんだよなーと思い続けて十数年。
綺麗に写すことと雰囲気を伝えることは同じ写真では出来ないのだろうなと感じています。

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minolta AUTO ROKKOR-PF 58mm f1.4
通称「緑のロッコール」

柔らかい写真が撮れる不思議なレンズ。
このレンズをもう一度デジカメで使いたくて、ミラーレス一眼に付けてみました。

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とてもカッコ良い!
デジタルなのにアナログ感満載!
ミノルタがパナソニックに載って復活する。
この時代を超えた感じ。もう100点!
文句なしにカッコ良い。


そもそもこのレンズは実家にあったminolta SR-7に付いていました。
ザ・昭和のカメラ。

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祖父→母→僕へと受け継がれたカメラ。
大学時代に使っていたけど、とにかく重いしブレるしで旅行中に何度投げ捨てようと思ったことか。

金属で出来てるんだから当たり前だろと言わんばかりの堂々とした風体。
この武骨さ、たまらない。
小文字のロゴも今見れば却って斬新。ただひたすらカッコ良い。
カッコ良いは正義だ!

でもさすがにもうフィルムカメラは使わないので、アダプター付けてデジタル化をしたのです。
あの柔らかさを出しながら、デジタルで気軽に撮れて編集まで出来るとなればもう完璧。
最高のマリアージュの完成です。


ところが現実はそんなに甘くない。

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マニュアルフォーカスはとても重く、動く被写体には到底間に合わないのです。
何十枚と撮ってもちゃんとピントが合ってるのが一枚あるかないかぐらい。やっとピントが合っていても構図がダメとか。

でもそれでも良いのです。スナップ写真なんてそんなものだと諦めよう。
フィルムカメラを思い出そう。写真屋さんで現像されるまでどういう写真が出来ているのか分からなかったあのドキドキを感じられるのも貴重な体験かもしれない。

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そもそも軽量化のためにミラーレスにしたのに、この鉄とガラスのカタマリのようなレンズをつけると標準レンズ付けた時の倍ぐらい重い。

単焦点レンズを2本持ち歩いたら結局フルサイズ一眼レフと同じぐらいのお荷物感。

一体何がしたいのだろうか。
素人のくせに。

でもそれでも良いのです。レンズ交換時のカチッと鳴る音が好きです。
自分で距離を決めてレンズを変える。その操作が好きです。
それだけの為にレンズを交換したって良い。大事なのは気分です。

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とても便利で使いやすいカメラを買ったのに、わざわざ不便な使い方をしています。その使い方に見合った腕があるわけではありません。
ぶっちゃけiphoneで撮った方がまともな写真が撮れます。

でも、この使い方には驚きがあります。たまーーーにですが、あ、こんな風に撮れるんだ!という予期せぬ写真が撮れる時があります。

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僕は写真には予想を裏切られたいと思っています。見えているものを写しているのに、同じように写らないのが写真の凄さ。

でも僕にはそれを狙ってつくることが出来ません。だから偶然に頼りたい。
個性のあるカメラとレンズならば、それを叶えてくれる、、、時がたまにあるのです。

全てにピントが合った写真よりもボケボケの写真の方が好きです。
人間の眼は見えているものすべてにピントが合っているように感じるけれど、本当はそうではなく見たいものに瞬時にピント合わせをし続けているようです。

だからその瞬間を切り取れば、大部分はボケているのが自然なことではないか。そのピントの対象よりもそこに見切れているもの中にこそ自然な雰囲気とかが隠れているのではないかと思えます。

建築雑誌に載っている写真はすべてにピントが合っています。それは説明するための写真だから。それはそれで良いし、解像感の高い写真も好きですが、生活の雰囲気を感じることは難しいです。

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僕たちの仕事は生活をデザインすることですが、竣工写真を撮るとその生活の雰囲気が出てこないことが多くあります。
その空間の心地よさのようなものはどうしたら写真で表現できるのかをずっと模索しています。何となくですがこのレンズにはその手掛かりがあるような気がします。


このレンズは「眠たい」という評価もあるようです。ピントが合っていてもパキッとせずぼんやりしているという意。確かにそうです。
まぁ、数千円のものですし。
でもこの眠たくなってしまうボケの奥の方に、焦点の合わないところに僕の撮りたいものがある気がします。

写らないものを撮ってみたい。
そのコツはまだ分からない。所詮はアマチュアなので多分ずっと分からない気がします。

だから僕の写真は運任せ。
いつまでたっても写真の腕は上がらない。

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