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私が生きる理由


 一度だけ、深夜に泣き叫んだ時があった。どうしようもなく涙が出てきて、自分では止めることは出来なかった。瞼を閉じても、涙が頬を伝っていくのを感じた。顎まで滴って、やがてそれはカーペットが吸い込んだ。私の声は吸い込んではくれないのに。声を出して、鼻水を垂らして、汚い嗚咽を出して子供のように泣いた。高校1年生の秋だった気がする。

 声をあげて泣いていたにも関わらず、私の頭ははっきりとしていた。どうして私は泣いているのか、なぜ私はこんなにも辛い思いをしているのか。そんなことを考えていた。私の頭ははっきりしていたが、私の理性ははっきりしていなかったようだ。

 その答えは、どれだけ考えても全く見つからなかった。泣いていたからかもしれない。深夜だから頭が回らなかったのかもしれない。いずれにせよ、その時答えを見つけられなかったせいで、未だに答えは持ち合わせていない。今考えても、なぜあの時泣いていたのかは見当もつかない。きっと、私はこれからも答えは見つけられないのだと思う。

 だけど、それで良いのかもしれない。現に、今の私は、あの時の答えを見つけようと生きていない。その答えは持っていなくても、私はこれまで生きてきたし、これからも生きていくのだろうと思う。未来は不確かだ。確定事項なんて存在しないし、それと同じ理由で生きている理由なんてパッとは出てこやしない。だけど今、私は確かにここに生きている。それで良いじゃないか。生きている意味なんて、生きていれば見つけることができる。

 私は今、ただ私が生きる理由を見つけるために生きている。