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〝自分を大切にする勇気〟生活保護を受け、まわりに頼っても大丈夫なんだと知った
この記事は、誰でもすぐに音声配信ができるstand.fmで収録した内容をもとに、加筆したものです。
10年以上前、私は生活保護を受けました。
ブラック企業で体調を崩し、当時は預貯金もゼロ。
精神面もボロボロでしたが、母娘ともに死にたくないという想いで役所へ向かいました。
生活保護を受けて数ヶ月後…。私は母から、「あんたのこと見たくないからどっか行って」と言われ、家出も経験します。
そんなアクシデントもありつつ、生活保護を受けるなかで〝自分を大切にする勇気〟を手に入れました。
まわりに頼れなかった私が多くの人に助けられ、新たな人生をはじめられた話です。
【生活保護のはじまり】専門職で中途採用されるも、激務で体調を崩す
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もう10年以上前の話。
わたしが27歳のときです。
なかなか定職に就けなかった私は、縁あって専門職の正社員として、中途採用されました。
しかしこの会社、絵に描いたようなブラック企業だったのです…。
ちゃんとしたブラック企業は、黒さの濃淡をコントロールできない
最近、ご自身の働き方を「一人ブラック企業」と表現している人がいました。
一人ブラック企業の場合、ブラックの濃淡を自分でコントロールできるからいいよなぁと、思ってしまいました。
ちゃんとしたブラック企業は、濃いブラック一択。
私が勤めていた会社は、日付が変わってから帰宅することが多かったです。自転車通勤でしたが、夜風を切って坂道を下るときだけ気持ちよかったことを憶えています。
疲れも抜けず、次第に(なんとしても毎日会社に向かわなければ!)というズレた使命感に駆られ、会社に着いたとたん無気力になっていきました。
なぜ会社に行かなければならなかったのか
正社員雇用とはいえ、退職願を出すレベルの職場環境…。
毎日毎日、会社と家を往復するだけ。
社内には、私の存在価値はないと思っていました。
それでもこの会社を辞められなかったのは、理由があります。
家族で私しか稼げる人がいなかったからです。
私が小学6年生のとき、父は末期がんで亡くなりました。
母に聞いた話では、当時、生命保険が満額もらえたそうです。
父が残してくれたお金を切り崩し、私と母は生活できました。
しかしそのお金も有限です。
私がブラック企業に勤めて数ヶ月経ったころ、家の冷蔵庫がすっからかんになっていることに気づきました。
母に問うと、「生命保険はもうないの」と一言。
母は、父が亡くなってから父方の親族と金銭トラブルになり、対人恐怖症になっていました。
そのため私が、一家の大黒柱にならざるを得ませんでした。
たとえ私が無能な社員でも、会社に行かなければ路頭に迷うと気づいてしまったのです。
正直、苦しかった。
いよいよ体調面が悪化し、立ち行かなくなります。
お湯を飲んでも吐いてしまうほど、心も体も弱りきっていました。
信頼していた部長に休職を申し出ましたが、腑に落ちない理由をつけてきて断られました。
このやり取りがあり、私のなかで身辺を整えようと考えはじめます。
部長からは、生活保護を受けたらどうかとも言われていました。
生活保護制度についてガラケーで調べ、ついに私は生活保護の申請に向かったのです。
もちろんこのときは、ブラック企業を自己都合で退職しています。
【抑うつ状態】心療内科に通院していたが、母に罵声を浴びせられ家出した
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生活保護の申請は、無事通りました。
とはいえ、生活保護開始決定通知が届くまで、生きた心地がしませんでした。
(もし、生活保護の申請が通らなかったら?)
申請が通らないかもしれないという、恐怖との戦いです。
「なんでもいいから働きなさい」と言われそうで、決定通知が来たときは本当に安心しました。
ブラック企業を退職する間際、私は心療内科を受診していました。
診断名は、「抑うつ状態」。
うつ病の一歩手前、という段階でした。
母に「どっか行ってちょうだい」と言われ、家出する
家にいても、出かけても、常に私は不安でいっぱいでした。
いつも自分は、情けない人間だと思っていたのです。
生活保護を受けはじめ、数ヶ月が経ったある日の夜。
私は不安感が強く母の前で、泣いてしまいました。
その様子を見た母が突然、罵声を浴びせてきたのです。
ウジウジして、あんたを見ているとイライラする、見たくないからどっか行ってちょうだい
たしか、こんな内容でした。
当時の記憶が、曖昧なのです。
面と向かって、母からはじめてきつい言葉を投げかけられた私は、抜け殻のようでした。
(自分は誰にも必要とされていないのでは?)
ネガティブな想いが、頭のなかをぐるぐる巡っていました。
10分もかけずに適当に洋服をバッグに詰め、数万円を握り締めると私は家を出ます。
人生で、はじめての「家出」でした。
母の前から姿を消したものの、3日ほどビジネスホテルに滞在し、家に戻ろうと考えての家出です。
念のため、おばにはメールで事の顛末を伝えてあります。
ところが3日経ったときの私は、怯えきっていました。
家出をした日の、母の表情や言葉がフラッシュバックして、ホテルの部屋で泣き続けます。
翌日、私は役所に行きケースワーカーさんに事情を伝えました。
泣いてしまうと思い、あらかじめ伝えたいことをメモしてから役所に向かいます。
話している途中は手が震え案の定、泣いてしまいました。
それでも母と、距離を取りたい旨を伝えました。
ケースワーカーさんが、私の話を真剣に聞いてくれたのが嬉しかったです。
精神疾患のある高齢女性たちとの生活
家出をしてから、はじめて心療内科に通院した際、荷物の多さにスタッフさんに「どうしたの?」と質問されました。
ことの経緯を伝えると、院内の相談員さんが親身になって話を聞いてくれました。
相談員さんの人脈のおかげで、グループホームの入居が決定します。
精神疾患を抱える高齢女性のための、シェアハウスのようなところです。
個室も用意されており、はじめて一人暮らしをした気分になれました。
グループホームでは、ほかの入居者とも交流があります。
ときには一緒に歌番組を観たり、夕ご飯を食べたりしました。
私のことを孫のように思ってくれて、みなさん優しく接してくれました。
心療内科の相談員さんと役所のケースワーカーさんには、たいへんな迷惑をかけました。
今になって、感謝の気持ちが溢れ出ています。
知らないうちに私は、まわりの人を頼っていたんですよね。
【仕事が決まる】失業保険も振り込まれ、あっさり生活保護が打ち切りに
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次第にグループホームでの生活に慣れ、精神的にもだいぶ落ち着いたこともあり、母に会いに行けるようになります。
その後ふたたび、母と私は一緒に暮らすことを決めました。
最初こそギクシャクした会話でしたが、ゆっくり関係を修復していきます。
そんな折、私に一本の電話がかかってきました。
ブライダルシーンで、トランペットを演奏する人を探しているとのこと。
どうやら私を推薦してくれた知人がいて、「あまねさんなら大丈夫だよ」と言ってくれたようです。
(嬉しい…!)
このときは本当に嬉しかった記憶があります。
実はまだ当時、生活保護を受けていました。
事前にケースワーカーさんに相談し、お試しで働いて即採用となりました。
そうこうしていると、今度は存在を忘れていた失業保険が振り込まれます。
収入が発生するたび、ケースワーカーさんに共有するようになりました。
すると私の収入が生活保護費を上回り、あっけなく生活保護は打ち切りになるのです。
自分を大切にする勇気
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心も体もズタボロになり、路頭に迷いそうになった過去の私。
生活保護の申請に行った当時の気持ちは、あまり憶えていません。
ただ、母を困らせたくなかった…。
生まれたときから高専を卒業するまで、私はお金のかかる子どもでした。
今度は母が困らないように、(私がしっかりしなくては!)と、朧げに考えていたのかもしれません。
当時、親族に頼ることは迷惑になると思い込んでいました。
しかし生活保護を受ける時点で、保証人を立てなければなりません。
結局、まわりのサポートなしには何もできなかったのです。
私のように体調を崩してしまったり、働きたくてもうごけなくなったりしたら、どうかまわりを頼ってください。
友だち、家族、同僚、地域自治体…必ず助けてくれる人がいます。
私は生活保護を受けたことがきっかけで、何人もの人に助けてもらいました。
世の中に、完璧な人間はいません。
誰もが「自分を大切にする勇気」を持てる世の中であってほしいです。
大丈夫。
自分を大切にすることで、文句をつけてくる人なんかいませんから!
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