【エッセイ】私は生きてる
約10年前の話。
甲状腺乳頭がんの全摘手術を終えた私の体には、点滴などの管がつながれていた。
手術室からベッドごと移動させられて入ったのは、6人部屋の病室の一番廊下に近い一角だ。すでに消灯時間は過ぎているようで、電灯は消され、カーテンで仕切られた隣や向かいからは物音ひとつ聞こえない。
看護師がベッドを固定し、いくつもある管が絡まっていないかチェックする。
「この喉につながってるのはドレーンって言って、手術後、喉に溜まる血を外に出す管なんです」
全身麻酔が解けていないからだろ