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ポポパポペピアノ【毎週ショートショートnote】

住宅街の奥、ひっそりと建つお屋敷から、ポロポロとおもちゃのピアノの音が聴こえてきたら、『部屋の窓から入ってきてね』の合図だ。

「また来てくれたのね」

そのお姉さんは、ずっと部屋から出ずに暮らしているらしい。

「だからきみがピアノにつられて窓からのぞいてきたときは、驚いたけど、♪うれしかったんだ~」

時折ピアノに合わせて歌いながら話すお姉さんと遊ぶのが楽しくて、ぼくは毎日そこへ通った。

「あのね、♪きいてほしいの~」

ある日お姉さんは、少し悲しい顔で笑った。

「私、病気の手術をすることになって、しばらく会えないの。もしかしたら……ううん、元気に戻ってきたら、またピアノを鳴らすから」

ピン、ポロン。

「♪まっててね~」

それから、おもちゃのピアノは鳴らなくなった。
一か月が経っても。
一年が経っても。
その後も――

そして、十年が経ったある日。
あの音が響いてきた。
お姉さんの声はなくても、すぐわかる。

『ポ・ポ・パ・ポ・ペ』

こ・の・ま・ど・へ。


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