理科室まがった【毎週ショートショートnote】
「では早速、曲げてみるとするか」
「部長、もう曲がってます」
僕たちは、超・科学部。
放課後の理科室で、「スプーンを曲げる手袋」を開発した部長が手袋を嵌めた瞬間、スプーンを手にした僕のブレザーのネクタイが、ぐにゃりと曲がった。
「おや、出力位置がズレたようだ」
部長は冷静な口調で、手袋に付いた目盛を調節した。ネクタイはぎゅいんと勢いよく戻り、そのまま反対方向へとプロペラのように回転し始めた。
「あの、部長」
「少し待ちたまえ」
部長は慌てず、再び手袋の目盛を弄る。
背後で音がした。
振り返ると、人体模型の心臓が高速回転している。
「……うーん」
隣の骨格標本の腰が老人のように曲がった。
僕のネクタイは、まだ空を目指している。
「……ああもう、どうしてうまく行かないのよ!」
何度失敗してヘソを曲げようとも、僕は部長についていく。
ぼさぼさ長髪低身長眼鏡白衣、クールで天才なのにポンコツのお姉さん、なんて過多な属性で、僕の性癖をねじ曲げた部長に。
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