下道一組【毎週ショートショートnote】

旅行で遠出をした帰り道。
地元へと向かう方向のハイウェイは、すでに大混雑しているようだった。

「仕方ない、下道で行くか」
「そうだね。一度渋滞に巻き込まれちゃうと、しばらく動けなくなっちゃうもんね」
「……せっかくだからさ。遠回りしてみようか」
「えっ?」
「下道でも、最短の道のりだと、みんなが集中して結局詰まってしまう可能性もあるだろ。どうせなら、あえて行ったこともない未知のルートを通ってみたほうが、新鮮だし、面白いんじゃないかなって」
「なるほどね。いいよ、そうしよっか」

ということで、ナビも駆使しつつ、自分たち一組以外には誰にもすれ違わない片田舎の道を選んでみたら、これが思いのほか快適だった。

「ねえ、ほら。星がきれいに見える」
「うん、どれもこれも綺麗だなあ」
「たまには、こうして見知らぬ景色を楽しみながらのんびり飛んでみるのも、いいもんだね」


――その日、地球上から、夜空を一組の彗星のような光が流れていく様子が観測された。


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