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半分ろうそく【毎週ショートショートnote】

半分百物語に誘われた。

「百だと多いから、半分のろうそくで手軽にやるんです。それに、百まで話すと恐ろしいことが起きるようですけど、半分までなら大丈夫でしょう?」

初めは話半分で聞いていた私は、面白半分で参加してみることにした。

会場のとある寂れた寺のお堂に着いた時にはもう夜で、すでに白いろうそくが灯っていた。数えると五十本。半分ろうそくだ。
和やかに半分百物語が始まった。十人ほどの参加者が次々と怪談を語っていき、その度にろうそくが吹き消されていく。

やがて五十の怪談が終わり、白いろうそくは全て消え部屋は真っ暗になった。お開きだと帰ろうとしたが、身体が金縛りにあったように動かない。

と、誰もいないはずの隅で、ぽっ、と灯りがともった。黒い灯芯の、死人の顔のように青い炎が。

そして、声が響いた。私を誘った男の声だった。

「では、五十一話目。半分まではこの世、半分から先はあの世の住人とろうそくによって語られる百物語がありまして――」

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