そっか、そっか、そうですか
十年ぶり?
いや、そんなわけないか
いやいや、やっぱ、十年かあ
自分でも驚いてしまった
そんなに帰ってなかったかあ
駅、かわっちゃってたなあ
木造の駅舎だったんだよなあ
だいぶ、かわっちゃってたなあ
降りる駅、間違えたかと思ったよ
駅前も、高い建物たくさんあったしさ
「あ、やっぱいたか」
と、タカキ
「そりゃあ、いるけどさ」
応じるわたし
わたしは、タカキのことが好きだった
タカキも、わたしのことが好きだった
付き合っていたわけじゃない
告白もしていない
されてもない
でも、わかる
実家の近くにあるほこら
あのときと同じ場所で
あのときと同じように
二人で、アイスを食べる
違うのは、タカキの左手、くすり指
そこに見える、光るもの
そっか、そっか、そうですか
わたしのこと、好きだったくせにさ
よかったね
けど
おめでとうは、ごめん
ちょっと、言えそうにない