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小説『曹操』

最近本を読む時間が減った。

高校生の頃読み漁っていた概説書の類の本は今やレポートを書くために読む物になってしまい、普段あまり読まなくなってしまった。趣味を仕事にした感覚に近い。

小説は絶え間なく更新されるYouTubeを見たり、録画残量表示に脅されるように録画番組を消費したり。紙に重点を置く出版社は電子書籍・漫画が敵と思っていたが、外にも敵は多そうだ。

どうも。出版業界第一志望就活生の孟徳です。

出版業界というのは大小合わせると非常に多くの出版社がある。もちろん大手も受けるが狭き門、高き壁だ。そんな時、歴史学科の学生の行きつくところは普段参考文献で使うような専門書や概説書を出している会社だ。歴史に携わる業界は教員・学芸員以外だとここしかないのかもしれない。

3月に本格的な就活がスタートする前に企業のリストアップをしようと本屋に向かった。新宿のでっけぇ本屋に行き歴史の棚の本の出版社名に注目して、とにかくメモっていく。

そんな中ある小説に出会う。

『曹操』

ほぅ。孟徳を名乗るものとしては手に取らざるを得ない。だが、曹操を主人公にした小説はいくつかある。私も全ては読めてはいない。

私の中のベスト1は『三国志 曹操伝』塚本靑史先生の小説だ。Twitter上で一人称を「儂」とするのもこの小説からとったものだ。史実の間に魅力的な創作が溢れている。歴史ものであるため結末は知っている。が、どうなるんだろうと感じさせてくれる。

話を戻して今回見つけた『曹操』

どんなものかと手に取ると、帯に「中国大陸でシリーズ累計300万部突破」という文字が目に飛び込んできた。

なるほど。これは中国で書かれた小説を訳したものなのか!

三国志というのはいろんな国で人気であるが、その国によって武将の評価が異なり、人気武将も違う。例えば、中国では「文の孔子・武の関羽」といった程人気というか神の関羽であるが、朝鮮半島へ行くと嫌う人もいるらしい。理由は日本が朝鮮を攻めた時(確か秀吉の時)、中国のすでに関羽を信仰していた地域(演義を書いた羅漢中のパトロンとなる大商人の地域。その為演義では関羽は良く描かれる。)の人々が朝鮮へ物資を送ったり援軍として出向いたりした。助けに行った時に「助けてやったろ?お前らも関羽様のこと信仰しろよ」てな態度を取ったらしく、朝鮮の人は逆に関羽に嫌悪感をもったとか。

他にもタイの王族が「国民みな趙雲であれ」なんてことを言ったらしい。前日の夜に阿斗を救う場面を読んだのだろう。笑

そんな中で、曹操なんて人物は特に好き嫌いが分かれる。日本では有能な部分を見る人が多いからか評価する声も多い。ただ、中国ではやはり主役は劉備・関羽・諸葛亮であり、曹操はヒール役でしかないのだ。

現地に行っても、サービスエリアのお土産売り場にも関羽はいるし、三国志と関係ない遺跡のお土産売り場にも関羽はいる。

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関羽を祀った関林廟に行けばとんでもない数の関羽グッズが並ぶ。しかし、曹操グッズはほとんど見当たらないし、鄴城博物館でやっと見つけた曹操グッズはどれもホコリを被っていた。

そんな中国で曹操がどのように書かれているのかこれは興味深い。買おう。

表紙をさらに見ると発行所が「曹操社」となっていることに気がつく。なんだこれは!就職したい!曹操社の名刺欲しいもん!笑

すぐにネットで調べて会社概要を見るとこんなことが書いてあった。

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なるほど。中国の本を訳して出版する会社なのだなと。しかし、これはとんでもないことだ。

我が理想ぞ!

今回の『曹操』は小説だが、概説書や発掘報告書を訳して出版してくれる会社は無いのかとずっと思っていた。

中国で買った概説書や取り寄せて買った曹操の発掘報告書が読みかけで積まれている。

教授たちは当たり前のように中国語読めるから原書を読むし学生にも読めというが、一般三国志オタクがいちいち中国語まで勉強する時間があるとも限らない。絶対に需要があるはずだ。

と、ここまで読む前の感想でこんなに長文になってしまったが、せっかくだからもう少し付き合って欲しい。

曹操社のホームページを引き続き読んでいると、シリーズ全10巻のうち2巻までがすでに訳本が出版され、3月中旬に3巻が出版予定だということがわかった。

そして、2巻の説明に「第二巻は、いよいよ黄巾の乱が勃発。」とある。ん?1巻ではそれ以前だけで500ページを越えるのか!

曹操の経歴としては頭に入ってはいるが、この辺りの小説は読んだことがない。とても興味深い。(確か宮城谷昌光先生か誰かの小説三国志はこの時代から扱ってる)

三国志オタクでも守備範囲から漏れがちな時代から読めるとは素晴らしい。

そして、このnoteを書いている時は1巻を読み終えた時だ。1巻の主要人物が亡くなり、後に活躍する者が生まれる。1巻で既に感情が揺さぶられている。

ネタバレはしたくないので1巻の中で私にぶっ刺さったフレーズを1つ紹介してこのnoteを締め括らせてもらう。

「どこまでいっても良く言う者と悪く言う者がいるようだ。考えすぎだったのかもしれないな。自分の思うままに振る舞えばよいだけで、完全無欠を目指す必要などなかったのだ」

いろんな人の言うことを気にして爆ぜそうになっていた今の私にぶっ刺さった。

p.s.  史実から曹操の祖父・父の時代を知りたい場合は 石井仁著 『魏の武帝 曹操』 を読むとよいかもしれない。

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