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No.35 ショール&アルバイト

35.ショール&アルバイト

ショールとアルバイト、二つの鉱物がセットになった共生標本である。黒いのがショール、白いのがアルバイトだ。
まずショールについて解説しよう。ショールとは和名を「鉄電気石」と言い、トルマリンの一種である。よくパワーグッズに使用される「トルマリン」はこれであり、トルマリングループの鉱物の中では一番産出量が多い。
ご覧の通り真っ黒なため宝石として加工することはほとんどないのだが、今回のショールには細かいクラックがあり、これに光が当たると褐色のキラキラとした輝きが出てなかなか味わい深い。「ショール」という名前には「無価値」と言う意味があるらしいが、よくよく観察すると美しい鉱物だと私は思っている。
続いてアルバイトについて。実は言うとこの標本の目当ては九割方アルバイトで、もともとなんとなく気になっていた鉱物なのだ。
興味を持った理由は単純で、名前が日雇いのフリーターみたいで面白かったからだ。無論名前の由来はラテン語で「白い」と言う意味の単語「albus」からで、フリーターとは一切関係ない。
その名の通りアルバイトはもこもこと真っ白な結晶としてショールを引き立てている。一見すると綿のように見えるが、ルーペで拡大してみると雪のようなような粒々とした小さな結晶が集まって固まっているのがわかる。この小さな細かい結晶が遠目で見ると白く映るのだろう。
ショールの黒にアルバイトの白。コントラストのあるスタイリッシュな共生標本だ。

【補足】

「共生」
二種類以上の鉱物が一緒に成長した状態。この状態のものを標本にしたものが「共生標本」である。鉱物界ではアポフィライト&スティルバイト、水晶&パイライトの辺りがメジャー。普通の標本よりちょっとお得感がある。

【参考書籍】

「ネイチャーガイド・シリーズ 宝石」
ロナウド・ルイス・ボネヴィッツ 文
伊藤伸子 訳   化学同人  2015年


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