こうもりを見るだけの会
「東京にいた頃は、こうもりを見るためだけの会ってのがあったんだよ」
「こうもりを見るためだけの会」
…ちょっと想像がつかない。
「その頃は小学生だったんだけど、先生が夜に生徒をぞろぞろ連れて河原に行って、身を屈めて静かに待つ」
自然観察の延長なのだろうか。
妄想。想像。
「みんなでこうもりを見ましょう!」
「こうもりだって。楽しみだね」
「ちょっと怖い」
「しっ!静かに…」
さっと視界に影が走る。
「ほら、あそこに!」
「おお~!あれが…」
「こうもり!」
ざわ…ざわ…。
…みたいな感じ?
「そうそう」
それは…イイ!!
「そんな感じだったのに、こっちに引っ越して来たら、ドアを開けると普通~にいる」
「いるね」
「ありがたみがなくなった。雨戸の内側にいる」
それはさすがに見たことがない。
「昔の家の話だよ。開けるとキキキキキー!って飛んでくから、石を投げると追っかけてくる」
「超音波だから?」
「そうそう。意外と面白い」
「あまり触らない方がいいんだよね。ねずみと一緒で」
「そう。ばい菌の巣窟」
確かに、私も地元でこうもりが飛んでいる所なんて見たことがなかったから、引っ越してきて非常にびっくりした覚えがある。
こうもりってこんなに普通に飛んでるんだ。
「こうもりを見るためだけの会」っていうのはいいなあ。
ツアーを組んだコンダクタがうちの周辺に行列を連れてやって来て、笛を吹く。
ピピー!
さっと手を挙げて、行列がおとなしく止まる。
「みなさん、住宅地ですので騒がないようにお願いします、ではこうもりをこれから待ちたいと思います!」
なんてね。
面白い。
あどけないこうもりの話である。
(高村幸太郎のぱくり)
終わり
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