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取り憑かれる(日記)



休みを取ったのに、受験中休みでなご助が家にいるのでゲームをしている音がうるさくて仕方がない。ゲームしっぱなしはよそうとなご助を誘い、午前中はパン屋で過ごした。この子は外にいるとじつに静かで邪魔にならない。

そのパン屋は席が多くてテーブルも広く、朝早くからやっているという夢のような場所だ。カフェほど敷居が高くない。油断するとすぐにモーニング目当てのおじいちゃんおばあちゃんであふれてしまうから、開店間際を狙って一番よい席を陣取る。すりガラスで高く覆いがされているボックス席のような場所、しばらくそこでパソコンを開いた。

家に帰るとやっぱり少し疲れているのに気がつく。外にいるのは良くない。本当は家で休んでなければならないんだ、そう思いながらも何かが私を突き動かして外へ外へと引き出していく。

家の中にいてああだこうだと片付けをはじめればたちまち一日が経ってしまう。早く早く、子供達が帰ってからうるさく言って何とかすればいい。立って小走りで歩き出した廊下に、今日取り替えたばかりのダスキンのモップが床に放置されていた。思いっきり踏んでつるっとすべって思いっきり背中を頭ごと床に打ちつけた!くるっと世界が反転して、まさに足をすくわれた。どこへ連れてかれるのかわからないような崖下に
落ちて
落ちて
落ちていった。

何か叫んだ。そこにいるはずのなご助の名前を呼んだ。耳のそばをうなる空気に遮られ無音になって自分の叫んだ声も吸いとられる。落ちれば水にでも沈むか、ブクブクと泡が立つように思ったら激しい衝撃だ。水底は案外近かった。後ろ頭を強く打つ。もしこれが深い水底にあったならば水は呼吸する空気はもたらさないまでも優しく私の体を受け止めて深くとも別の世界に誘っただろうに。

頭の上になご助の顔がある。
「も~、放り出すなって自分でいつも言ってるでしょ」

友人同士とおしゃべりしながらやっているので、一度ゲームを始めてしまえばなかなかのことではセッションを手放さないのだが来てくれて助け起こされた。

「おとなしくしててくださいよ。治らないでしょ」

はでに転んだ割には、特にたんこぶが出来ている様子もなく痛みもない。指を動かしてみたが普通で、脳震盪になってる気配もないが、こんなにきれいに足をすくわれたショックだけが残っていて半ば放心状態になっている。とりあえず落ち着こうと風呂に入ってから、小指のつけねあたりがこすれてあかくなっているのに気が付いた。

もう大人しくすることに決めた。出るな落ち着け寝ていろと何かがわたしに言ってるのだろう。あたたかくして横になって夢を見た。午前中はいつも窓を少し開け放つと空気がおいしい。食べる空気読む空気さわるくうき、きく・くうき…。
五臓六腑にしみわたるくうき。
エアタリアンなの。
つんと頭を上げて気取った女子が言う。
もう空気しかたべないの。
ゆらりと分裂するようにその子の背後からアンチエアタリアンも現れた。
もう空気は読まないことに決めたの。
読めても読まないの読めてないふりをするの。
人のことなんてほっといて。
わたしのことなんてかまわないで。

夢の中でもああこれ、小さなお話になるななんて考えてしまうのがへっぽこ物書きのさがだ。水に光が当たって流線形の光の筋がぶれて虹がにじむ。




***


まじでびっくりした!!!
みなさんもお気をつけて!!!(お前が言うな!!!)


わたし「妹子しまらないから何か詠んで。もう今日は放心状態で色々と力尽きた」

だんな「しおポテチ ばりばり食ったら なくなった」

わたし「だまれ」



***

(下の子4句)

くもかくれ つきのかけらで ひかるみち

やちょうとぶ たいよう光る あさのそら

しもやけに ふゆのゆきあめ さむさかぜ

つきあかり よみちをあるく ねこのひげ


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