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その食は「知名段階」と「考慮段階」のどちらだろう??~日常に佇む食の“当たり前”を見つめ直す~

天ヶ瀬温泉で提供する料理や食材は何が似合うでしょうか?
また、近隣の食には何があるでしょうか?

第四回を迎えた天ヶ瀬温泉コンセプトワーク。前回は『川との関係性』について話し合いました。

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(↑ 第三回天ヶ瀬温泉コンセプトワークについてはこちら )

今回のテーマはずばり『料理と食材』
天ヶ瀬温泉で提供する食材や料理の可能性について考えていきます。

◆「根拠」の大切さ

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江副(ブンボ株式会社代表);「“食材”を考える上で最も大切なのは根拠。なぜこの食材なのか?なぜこの場所なのか?なんとなくこの料理が流行ってるからこれを出そうでは決して長い視点では続きません。逆に根拠や理由さえしっかりあれば何を提供しても良いのかもしれません」

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『天ヶ瀬温泉の食といえば○○』

…今回のテーマを考えていく上で江副さんが言ったこの「根拠」というものはとても大切です。

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例えば温泉旅館でお刺身を提供した際、ある人は「こんな山奥でも新鮮な海の幸を味わえるのか…!」と思うかもしれないけど、一方で「なんで山なのに海の幸なんだ…?」と思う人もいるかもしれません。

同じ行動(選択)でも真逆の結果が生じてしまうことがある。だからこそ、そこに至る根拠や理由をはっきりと持ちそれを伝えていくことが大事なのでしょう。

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━━━ちなみに、温泉旅館において自分は海であろうが山であろうが断然お刺身をたらふく食べつくしたい派です。

◆天ヶ瀬ならではの食材は何か?

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江副;「天ヶ瀬温泉といえば皆さんどんな食を思い浮かべますか?」

「…鳥スキ(鳥のすき焼き)はうちで提供してたなあ。」「そういえば昔は鯉料理なんかが出てたよね。」

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「…小さい頃はよくこんにゃく寿司食べた!」「たかな巻きなんかも天ヶ瀬のイメージがあるなあ。」「あとしいたけとかも身近だったよね!」「子供の頃おやつで食べたへこやきが美味しかったなあ。」

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「…昔はそれこそ寿司屋や飲み屋が沢山溢れてて、夜になると温泉街に下駄の音が鳴り響いていたもんだねぇ。」

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「…この辺りはやっぱり何といってもジビエ料理が有名だよね。それこそ今の天ヶ瀬温泉街でもazukiさんで味わえるし。」「ただジビエは癖があるからそれこそ美味しく料理しないとだめだね。」

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「…天ヶ瀬や日田といえばやはりゆず!ゆずを使って何かできないかな?」「ゆず胡椒ラーメンとか美味しそう!」「ゆずを用いた天ヶ瀬ハイボールなんてどう?」

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黒木(日田市観光協会);「もともと冬至に結び付けたかったということもあり、ゆずに関してはかなり勉強してました。やっぱり食を提供する私たちが料理や食材について深く知ることは大事だと思うんです。」

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「たしかに、もっとこの街の食を学ばなきゃなあ…」「そういう場が天ヶ瀬でも増えたらいいよね!」「農家さんとの繋がりも作っていきたい!」

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江副;「それこそ湯布院には地産地消に取り組む『ゆふいん料理研究会』なるものがあったりもしますしね。天ヶ瀬でもこうした取り組みが進んでもいいんじゃないかな?」

◆その料理は「知名段階」か「考慮段階」か?

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ずっとお話を聞いていてまず第一に自分が感じたのは、温泉街にずっと暮らす皆さんと外からやってきた自分との間では感じ方に大きなギャップがあるということ。

たとえば天ヶ瀬や日田で提供されてきたというジビエ料理

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地元に暮らす人たちにとっては「ジビエ料理」というものがまずあって、その上で検討するかどうか(美味しいかどうか)という選択が続く。

しかし、外からやってきた自分にとってはそもそも「ジビエ」という単語そのものを聞いたことがなく(自分は本気でジビエを“ジビキアミ漁か何か”だと思っていました…‼)まずは認知するところから始まる。この差は決して無視できないものです。

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勿論、ただ物珍しければ別においしくなくても構わないという話では断じてありません。

どんなに珍しくても洗練されていなければ意味がない。料理研究会などで知見を高め美味しい形での提供まで導くことは必須です。

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それでも、自分たちが提供していく食が「知名段階 (=知られている)」「考慮段階 (=検討される)」のどちらに当てはまるのかを考えること、そして同じ食材や料理でも地域の内と外にいる人とでは大きな認識の溝が存在するということを理解するのは非常に重要なのでしょう。

◆“2種類”の商品開発について

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皆さんのお話を聞いていてもう一つ感じたのは今回の商品開発は主に二つに分けられるのだなということ。

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一つ目は「日田のゆずを使って○○を作る」や「天ヶ瀬の川魚を使って△△を出す」といったまさに皆がぱっとイメージする“The・商品開発”なもの。

◇◇(素材)を使い○○(商品)や△△(料理)を新たに生み出す作業━━━いわば鋼の錬金術師的なやつです。

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そしてもう一つ、それは昔からの馴染みの食べ物をアレンジして(もしくは見せ方を変えて)届けるというもの。

それは地域で愛されるいわゆるローカルフードと呼ばれるものかもしれないし、小さい頃におばあちゃんがよく作ってくれた家庭の味かもしれません。いずれにせよ作り手にとって既に馴染みのものであるという特徴があります。

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これは食以外の分野で考えてみるとわかり易いかもしれません。

例えば日本で一大ブームとなったDa Pumpの「U.S.A」、あれは1992年にJoe Yellowというイタリア人が出した楽曲のカバーソングだし、福沢諭吉の学問のススメのかの有名な台詞「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」はアメリカ独立宣言の引用です。

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自分の“移動式銭湯”も「お風呂」という既に馴染みの素材がカタチを変えてアレンジされたものなので後者に分類されるでしょう。

◆「当たり前」に眠るヒント

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勿論、どちらの商品開発が正しいかという二者択一では決してありません。

ただもし、上記のような新しいものを生み出す以外の商品開発(=既にあるものを活用した方法)があるとして、一体どうしたらそれを実現させられるのか?その答えはきっと日常に眠っているはずです。

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先程も述べたローカルフード家庭の味、他にも普段この街に暮らす人々がずっと慣れ親しんできた食べ物たち。私たちはきっと何の疑いもなく毎日それらの食に触れています。

普段見過ごしてきたというものにもう一度目を向け、当たり前を見つめ直す。それこそが何より大きなヒントなのだと思います。

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勿論、言うは易く行うは難し。きっと当たり前すぎてそれに気づくことは想像以上に難しい作業だと思います。海の外に出てみて初めて日本の良さに気づくように、天ヶ瀬から離れてみて初めて地元の食の魅力に気づくのかもしれません。

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だからこそ、地域に根付く地元の人々と自分たちのような外から来た人々がこうして対話し合うことはとても大切なのでしょう━━━

◆最後に

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四回目を迎えた本ワークショップ。回を重ねるごとに参加者の士気が上がってきているのをひしひしと感じられ、心の底から楽しかったです。

今回自分は外からの視点で天ヶ瀬の『食』について考えましたが、これがもし逆の立場━━━自分の地元だったらどうなるのかなとふと考えた時…正直何もパッと食が思い浮かばなかったです。

もっと自分のルーツとなる食というものを大切にしよう、改めてそう感じさせてくれたコンセプトワークでした。

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◆本記事のまとめ

▽まずはその食を選ぶ「根拠」が大切になってくる
▽その料理は果たして「知名段階」か?「考慮段階」か?
▽“商品開発”には主に2つ━━━新たに生み出すやり方と既存のものをリメイクするやり方がある
▽「当たり前」にこそ大きなヒントが眠っているのかもしれない
▽でも、最終的にはそれを売りだす地域の人々が自分たちの食を誇りをもって愛せることが何より重要

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改めて皆さん、本日は楽しい一時をありがとうございました!

次回はいよいよ最終回、最後の最後までどうぞ宜しくお願いします!!

━━━written by 桶の旅人



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