見出し画像

〝それでも川が好き〟~玖珠川と私たち~

私たちは、これから玖珠川とどう付き合っていくべきでしょうか?
「安全」と「景観」をどう考えていくべきでしょうか?

第三回を迎えた天ヶ瀬温泉コンセプトワーク。前回は『天ヶ瀬温泉が目指したい未来』について話し合いました。第二回観光庁コンセプトワーク(20201228)_210126_67

今回のテーマはずばり『玖珠川』
天ヶ瀬温泉街における川との向き合い方ついて改めて考えていきます。

◆天ヶ瀬温泉と玖珠川

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_107

天ヶ瀬温泉の未来を考えていく上で決して無視できないこの玖珠川

メディアでは今回の豪雨災害のことばかりがピックアップされがちですが、天ヶ瀬の歴史を振り返ると玖珠川が氾濫したのは決して今回が初めてではありません。

開湯から長きにわたり川と向き合ってきた天ヶ瀬温泉、今日は改めてこの川という存在を全員で見つめなおします━━━

◆「川と向き合う」ということ

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_111

江副(ブンボ株式会社代表);早速ですがまずはこの街に暮らしてきた皆さんのお話━━━川とのこれまでのエピソードなどをお聞きできたらと思います。

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_109

「…小さい頃はこの川で釣りをしたり、魚を手づかみで捕ったりしてたな。」「天ヶ瀬のアユを求めて各地から人が来てたりもしたね!」

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_43

「小学校の時によくこの川で泳いでたりした。そして、寒くなったら砂を掘って湯と川を混ぜて丁度いい温度にして天然の温泉を楽しんでたよ。」

画像23

※天ヶ瀬温泉は川の中に泉源がいくつもあり、地元の人々はよくこうして本当の“川湯”を楽しんでいたのだとか。温泉ソムリエマスターである自分もさすがにこれにはビックリです。うらやましい…!

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_22

「橋のたもとから川にバンジージャンプをしたりもしたよね。高学年になればなるほど上の部分から飛び降りる。」「あーやった!たまに川底にぶつかってケガもする笑」

「川湯で温まってそのまま川で水風呂する人とかもいたね!」「あと川湯と言えば、あそこで日本酒を呑む人もいたな。ほんとはダメだけど…笑」

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_58

水辺の生き物も沢山いた。カエルに蛍に川蝉、あとは鹿とかもよく鳴いていたね。」

「お客さんも思った以上に川に抵抗がないよね!よく“どこから川に降りれますか?”と聞かれたりもしたし。」

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_104

「昔はみんな川で遊ぶことで川の恩恵や危険性を学んできた。一方今は危険だからなるべく川には近づかないようになっている。でも、果たしてそれが本当に“川と向き合う”ということなのかなとは思う…」

◆天ヶ瀬情緒委員会

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_98

江副;ありがとうございます。皆さんのお話を聞いていて、本当にその通りだと感じました。川の脅威があれば、それと同じくらい川の恩恵は存在する。それらすべてを含めて川と向き合い続けていくということは僕も大賛成です。

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_103

江副;どうですか、皆さん。それらを踏まえてこの街に“天ヶ瀬情緒委員会”なんてものがあったら面白いと思いませんか??

一同;「天ヶ瀬情緒委員会?!?!」

江副;そうです。この街の『川と向き合う』というメッセージをある意味体現化したもの、それが“情緒”という表現に込められるはずです。

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_97

江副;人は誰しも情緒で生きているもの。それを根幹に実際の条例等に当てはめていくことも決して不可能ではありません。

近藤;情緒的な景観条例の例としては城崎温泉長門湯本温泉なんかが有名ですよね。天ヶ瀬温泉でも通じる部分は色々とあると思います。

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_95

江副;あとは皆さんで『川を大事にしてるんだ!』という意思表示をまとめた“川の掟”なんかを決めても面白いと思います。

近藤;たしかに川の掟みたいなものはあったら楽しそうですね。成人したらまず橋から川に飛び込むべし…とか笑

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_39

江副;各旅館の経営方針や街並み全てをいきなり統一するというのはなかなか難しいですが、川に対する想いや思想といった無形のもので街の統一感を出していくことならば比較的難易度も下がるはずです。大いに試す価値はあると思います。

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_100

江副;いずれにせよ、自分たちがこういった『川と向き合う』というメッセージを社会に出していくというのは大変良いことです。地元の人が勉強することで発信力に重みが増し、行政さんやその他の多くの方々もチカラを貸してくれやすくなります。ホームページ等で復興を重ねていく段階からどんどん宣言していっても良いかもしれません。

◆玖珠川は天ヶ瀬の魂

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_102

近藤;かつて僕が川の傍らで運営していた「fuchi」というカフェにフランス人のお客さんが来た際、次のように言われたことを今でも覚えています。〝ここ(天ヶ瀬)は何もないけどそれが良かったよ〟と。

「自分の旅館でも似たようなことを言われたことがある。」「たしかに何もなくても街を回ってくる人は多いよね」

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_99

「ご飯食べてきた後に散歩したいとお客さんに言われ『何もないけど歩いてきて』と言ったら『たしかに何もなかったね』と笑ってた。でも、それでいいんだと思う。」

「自分もそう思うな。」「やっぱりできるだけこの景観は残していきたい。」「自分たちが小さい頃遊んでいたこの川を、同じように後の世代にも残してあげたい。」

2021.01.12第三回コンセプトWS_210126_101

江副;天ヶ瀬はその名に「瀬」を抱くように、温泉街を貫流する玖珠川なくしては語れません。確かに多くの恩恵の一方で今回の様な甚大な被害にも苛まれてきました。しかし、それでも今日皆さんが話されたように天ヶ瀬はこの先も川と共にあり続けるのではないでしょうか。川を封じ込めたり、川に背を向けるのではなく、川と如何に向き合い、大過なく付き合っていけるかを考える復興こそが真に大切なのだと思います。

◆〝それでも川が好き〟

天ヶ瀬温泉 画像

皆さんが話していたことで特に今回印象的だったのが「天ヶ瀬は何もないけどそれがなんだか逆に良い」という言葉。

それはある意味で正しくて、ある意味で間違っているなと自分は感じました。

なぜなら、この街には既にもう「川」があるからです。

薬師湯♨ (625)

何を今更当たり前のことをと思うかもしれません。でも、自分は決してふざけているわけでもトンチのようなことを言いたいわけでもありません。

なぜなら、この「川」は決して“当たり前”などではないからです。

川湯はしご!♨️_210114_43

川沿いの露天風呂、川で作るゆで卵、そして、こんなにも川の側で日々川と共存して暮らす人々の存在。例を挙げればきりがありません。

そのどれもが自分にとっては新鮮で、そこに「何もない」という思考はこれっぽっちも生じませんでした。

川湯はしご!♨️_210114_58

砂漠を知らない自分がかつて異国の地でその圧倒的な自然の前に驚かされたように、この街の外からやって来た自分にとっては天ヶ瀬のこの“川”こそが一番のサプライズだったのです。

もしかしたらいつしか私たちは大人になっていく過程で『人工的に作られた(区切られた)もの=何かある』『自然そのもの=何もない』と思い込むようになったのかもしれません。

川湯はしご!♨️_210114_81

でも、心の底では本当はもう気づいているはずです。

何もないこの場所━━━つまり当たり前のこの日常こそが本当に大切なものであり、それと向き合い続けることが真の意味での復興へと繋がる、と。

何よりも、川について話す温泉街の皆さんは本当に生き生きとしていて心から楽しそうでした。それがもう、何よりの答えなのだと思います。

〝それでも川が好き〟

この気持ちを心から大切に。これからも天ヶ瀬の皆さんと一歩一歩前進していけたらと思います。

9月22日 天ヶ瀬 (8)

written by 桶の旅人



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?