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絶滅する人

ある独りの男にゴミが貼り付き体内に入ってしまう事象が起こった。それはその男だけが出来る事象。

張り付いて取れないゴミは、溶けカビて粉になり舞って必ず毛穴から入り込み溶け込む。其れだけなら良いが、口や毛穴あらゆる体の穴から悪臭を漂わせ出ていったので困った。

原因不明の難病と言う事以外、病名もない。あまりの臭いに隔離されひっそり生きるハメになった。

ある日、噂を聞き防護服を着た世界の役人が来た。

ゴミ問題を片付けて欲しい。男は役人の持ってきたトラックのゴミに埋まってみた。何時間かして荷台は空になり、世界の偉い人は喜び帰って行く。

次の日、世界の集まるゴミの捨て場に連れて行かれた。男はゴミに埋まるしか無かった。自分まで溶けて消えぬか不安になりながらも…。

男がゴミを取り込んでいる時、思ってもいない問題に役人達は怒っていた。どんなに遠く離れても悪臭が届く、どんな防護服を着ても頑丈な箱に入っても溢れ漏れる悪臭が世界中で問題になり、殺人や自殺が増えてしまった。

男は外の問題など露程も知らず、自分の悪臭にも気付かず自分の使命を一生懸命全うした。嬉々としてゴミを次から次へと取り込み、病気になって良かったと初めて思った。

ゴミを片付け終わらせて居ないのに、役人が戻って来た。そして、男は殺されてしまった。

それでも悪臭は残り世界中の人を頑丈な頑丈な箱に追い詰め、溢れた悪臭に人々は殺し合い、自死した。

人間以外には悪臭でない事を知らない、愚かな人間は箱の中で少しずつ幸せの中の不幸に。不幸の中の幸せを見つけるしか無く生きて絶滅していった。






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