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『墨のゆらめき』三浦 しをん……バディの過去はしらないほうがいい

(2024.02.19)                             ストーリーを説明している記述があります。ご注意ください。

三浦 しをんの『墨のゆらめき』を読んだ。バディの過去はしらないほうがいい……とおもった。
 三浦 しをんのバディものといえば『まほろ駅前』シリーズだが、この作品では老舗ホテルで働いている 続 力(ツヅキ チカラ)が多田 啓介で、遠田 薫(書家)が行天 春彦に該当するかなー。パートナーではなさそうだ。
 最初のほうで、「しかし、俺もホテルマンの端くれ。」という文章が出てくるので大学を出てホテルに就職した20代後半くらいかな、遠田 薫も同じくらいの年齢だと思っていたら、二人とも30代半ばだった。この2人が主人公、続 力 が語り手で、俺という一人称を使い進んでいく。「僕」をつかうと「赤頭巾ちゃん気をつけて」の 薫くんになりそうだ。
 この二人が、ホテルの招待状の宛名書きという仕事を通じて親しくなり、 続 力 は手紙の代筆を手伝うことになる。昔の恋文横丁みたいなもんだ。薫は結構料理もできて、しょっちゅう二人で飲んだり食べたりしている。これでバディだ。続 力 は、「つまり俺は、よく言えば柔和そう、悪く言えばあらゆる生命体からナメられがちなんだろう。」と説明されるような人柄であり、遠田 薫は「紺色の作務衣を着た男が、健康サンダルをつっかけてたたきに立っていた。-中略-背が高く筋肉質なことに加え、「役者のようにいい男」」と描写されている。いつも長袖のシャツを着て刺青をかくしている。
 この遠田 薫は、子供のころ親から切り捨てられ、ヤサぐれていたときにヤクザの組長に拾って育ててもらった過去がある。そのヤクザの組長の中村さんが引退すると聞き、みずから引退式の芳名禄などの書き挙げをかってでる。薫はこの反社会的勢力との関係が 続 力 の勤務に影響しないように、ホテル関係の仕事から手を引き、連絡を断った。とまあ「セーラー服と機関銃」や「ごくせん」みたいな話になる。あとは皆様の想像したとおり。

■これが、三浦 しをんの職業シリーズの今のところ最終作だ。このバディ(BL?)パターンがよっぽど好きなんだろうな~。書道シーンも力が入っていて面白い映画やドラマになるだろう。キャストを想像してみる。【続 力→松下 洸平、遠田 薫→長瀬 智也】などと夢を見てみる。そんなに遠い話ではないだろう。そして最も重要な役が「カネコ氏」だ。これできまってしまう。キャスティングの肝だ。

■三浦 しをんは着々と着々と長編をものにし大作家への道を歩む。この『墨のゆらめき』も続編、続々編が望まれる。
 そして次々と新しいことにチャレンジしている。「神去なあなあ……」で林業、「舟を編む」で辞書の改定、「愛なき世界」で植物学研究室&新聞小説、この『墨のゆらめき』はアマゾンAudibleで朗読配信と、もう「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」猪木状態だ。でも私は、おもしろエッセイを待っている。(弟さんは、お元気でしょうか?)

■ところで、ズーッと頭のスミにひっかかていることがある。処女作の「格闘する者に○」の小説内小説で王国の花婿の条件「一番鼻の長い象を連れてくる」は、これは、どう考えても「〇ンポ」と思ってしまう。~どうしよう?

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