お伽話 【魔王と魔女③】
魔王は、これまで多くの旅人やアーティストや
ヒーラーたちが魔王の手に落ち恋をした方法が
この魔女には全く通用しないと気がつき
とても焦りました。
魔王は、時間を支配したいのです。
時間を支配されたりタイミングを決められることが
何より嫌いです。
いや、嫌いというより、恐怖なのです。
時間に縛られることは
魔王にとって何よりの恐怖であり屈辱でした。
魔王は、魔女の攻略が計画通りにいかないことで
魔女に自分の時間を支配されているような
錯覚に陥りました。
もちろん、魔女はそんなふうに思ってもいません。
魔女は、あくまでも、魔王のメソッドに忠実に
自分の感情と向き合い続けているだけなのでした。
焦った魔王は、
魔女が自分の魔法に全くかかっていないと
思い込みました。
実際には、魔女は激しい混乱の中にいました。
その度に、自分自身の希望の光を
見出すということを
繰り返し行い続けていたのです。
そして、とうとう、魔王は、
魔女ががんじがらめになるような
とっておきの魔法の呪文を魔女にかけました。
この呪文は効力が強く、
よほどの俯瞰した精神を持たないと
まんまと引っかかってしまう魔術です。
魔女は、その呪文をかけられ、
今度こそ自分の軸を失いました。
元々魔女の心の奥底に潜んでいた
罪悪感や無価値感が
最大に刺激されました。
そして、足場を失った魔女は
ぐっと魔王のフィールドに引き摺り込まれました。
魔王の思惑通り、魔女は、それから1ヶ月間
魔王のことしか考えられなくなりました。
ようやく、魔王の思惑どうりになりました。
魔王のことしか考えられなくなった魔女に
魔王は優しい言葉をかけたと思いますか?
いいえ。
魔王は、これまで自分の時間を支配された仕返しに
魔女を痛ぶろうと決めました。
これまで散々振り回されたのです。
お仕置きをしないと気が済みませんでした。
お仕置きの方法は、
意識が完全に魔王に向かった魔女を
放置することでした。
魔王に会いたいと思うようになった魔女を
あえて放置することは、
魔王の最上級の喜びでした。
魔女は激しく混乱し感情が掻き乱されました。
深い精神と広いビジョンを持っていた魔女が
狭い狭い考えに囚われました。
「いつ、彼に会えるの?」
これこそ、魔王が意図した魔術の効果でした。
あとは、しばらく魔女を放置し痛ぶり
魔王に深く心酔させ、魔王に恋をするという流れです。
何個かの魔術もかけていますので、今度こそは簡単に
落ちるでしょう。
魔王は、ようやく自分の勝利が近いと思いました。
それから1ヶ月後、魔女に大きな気づきがやってきました。
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