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♯32 数学的な見方・考え方の育成
今回のテーマは、「数学的な見方・考え方の育成」です。実践家の視点から検討します。算数の授業をアップデートしたい方、見方・考え方への理解を深めたい方は、ぜひご覧ください。
(1)4者の見解から
加固(2019)は,「数学的な見方・考え方」と発問との関係について,
数学的な見方・考え方を顕在化するような発問をすることで,子どもの中に内在していた数学的な見方・考え方が言語化されます。(p.30)
と述べています。そして,言語化し顕在化した「数学的な見方・考え方」がクラス全体で共有されていくことについて,以下のように述べています。
この積み重ねによって,個人だけでなく,学級全体の数学的な見方・考え方が豊かになり,多くの学習において働かせられるものとなります。(p.31)
「数学的な見方・考え方」を豊かにしていくためには,働かせた「数学的な見方・考え方」を言語化し,顕在化して学級全体で共有することが重要であると捉えることができます。
これを踏まえて,山本(2019)は低学年の事例をもとに,盛山(2019)は中学年の事例をもとに,松瀬(2019)は高学年の事例をもとに,「数学的な見方・考え方」を豊かにするための方策やポイントについて考察しています。
山本(2019, pp.50-82)は,低学年の様々な実践事例をもとに,「数学的な見方・考え方」を豊かにするために大切なこととして,
✅見方を学級全体に広げること
✅黒板に目に見える形で残して振り返ること
✅数学的な見方・考え方を働かせて主体的に動き出した子どもたちを全体の前でほめること
✅その都度活動の意味合いを振り返ること
✅「例えば」や「もしも」などの子どもたちの言葉を大切にすること
を挙げています・「数学的な見方・考え方」を豊かにするためには,「価値付け」,「振り返り」が鍵となるといえます。
また,盛山(2019)は,問題をどう解いてよいかわからず立ち止まっている子どもへの手だてとして,以下のように述べています。
答えを教えるのではなく,子どもが自ら動くことができるように着眼点を教えたり,解決に用いる既習を教えたりすることが得策です。その着眼点や既習を教えるのも子どもです.子ども同士で学び合うことで,数学的な見方・考え方を育てる授業を目指すのです。(p.84)
このように述べた上で,「数学的な見方・考え方」を育てるための手立てとして,「子どもの表現に問い返す発問」を挙げている.これは,片桐(2004)の見解と重なる部分です。また,発問を通して児童の表現を振り返らせているとも捉えることができます。
そして,松瀬(2019)は,高学年の様々な実践事例をもとに,教師の発問から児童が知識・技能だけでなく見方・考え方についても「振り返る」ことを通して,統合,発展を繰り返し,より洗練された「数学的な見方・考え方」に高めることができると主張しています。
さらに,3者の実践事例から窺えることとして,
✅提示する教材をいかに工夫するかということ
✅児童の対話を重視していること
も挙げられます。
(2)筆者なりの総括
以上のことから,「数学的な見方・考え方」を豊かにするためには,まずは「教師の姿勢」が重要です。子どもの言葉を大切にしたり,子どもの考えや表現を価値付けたり,子どもの対話を重視したりする姿勢です。そして,教材を工夫した上で,
発問を通して,児童が働かせた「数学的な見方・考え方」を言語化し,顕在化して学級全体で共有すること
も重要です。これは,学びの過程の「振り返り」ともいえでしょう。これらを日々の学習で積み重ねていく必要があります。
尚,盛山(2019)は,「数学的な見方・考え方」を育てるための教師の指導の在り方について,以下のように述べています。
指導者側も今教えている内容が次の学年のどの内容につながるのかといったことを知っておくことが大切です。特に,コンテンツレベルのつながりだけでなく,数学的な見方・考え方レベルで,「この見方は次のどの内容で用いる」ということを知っておき,数学的な見方・考え方の伸長を図ることが重要だと考えています。(p.106)
教材研究の中で,「数学的な見方・考え方」の系統を明らかにしておくことが大事であるといえるでしょう。
(3)終わりに
今回は、「数学的な見方・考え方の育成」について、実践家の立場から検討しました。
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【引用・参考文献】
盛山隆雄他(2019).数学的な見方・考え方を働かせる算数授業.明治図書.
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