ロシア・カザン留学記2:ボルガル遺跡編
今回留学しているカザンはタタールスタン共和国という国にある。
タタールスタン共和国とロシアとの関係は少し複雑なのだけれど、実はロシアという国は単独の国家ではない。
独立していない共和国がいくつか存在し、成り立っているようだ。
カザンには白のクレムリンとボルガル遺跡の2つの世界遺産がある。
今回は留学先のカザン連邦大学が留学生向けにガイドツアーをセッティングしてくれてボルガル遺跡へ行ってきた。
ボルガル遺跡へ
タタールスタン共和国は長い歴史を持っている。
モンゴルに侵攻されたり、ロシアに併合されたり、独立したりといったことを経験している国だ。
ボルガル遺跡はモンゴルに侵攻される前のタタールスタン共和国の首都であり、王宮があった場所だ。
現在のタタールスタン共和国の首都であるカザンからは離れた場所にあって、バスで2時間半かかる。
バスに揺られながら車窓を見る。
外にはとても広い草原が広がっていて、大陸の広さを感じていた。
以前に旅行で行った北海道にも親しいものを感じるなぁ、なんて考えていると目的地に到着した。
白のモスク
ボルガル遺跡にはホワイトモスクという、その名前の通り白いモスクが建っている。
到着すると祈りの声が聞こえてきた。
白のモスクはは現在もモスクとしての機能をもっており、観光でなく実際に巡礼に来ている人たちもいる。
隣にはイスラムのアカデミーが併設されている。
大学を卒業した人が入学でき、ここで学んだ人はイスラム教の神主的な立場についていけるのだとか。
これが白のモスクの内部である。
外で聞こえてきたイスラム教の祈りの声はこの右下のガラスで区切られた中の人のものだった。
彼の声がマイクを通して外まで聞こえていたんだ。
ちなみにイスラム教では1日に5回祈りを捧げるそうだ。
その際に地面に頭をつける姿勢を取るのは、人は体の中で脳が一番大切なところだからという理由からだという説明をガイドから受けた。
うちの大学にもムスリムの留学生は来ているのだけれど、思えば今まで彼らからちゃんとした説明を聞いたことはなかったなぁと振り返る。
わざわざカザンに来なくても身近に交流する機会はあったけれど、でも現場に来ることでイメージがわいて、話がすっと入ってくる。
現場に来て、実際に見て、話を聞くのは大事だ。
テキストや動画では伝えきれない「空気感」のようなものがあると思う。
そして僕らは次のボルガル遺跡方面へと移動した。
イスラム教博物館へ
まず向かったのは、ミナレットの形をしたイスラム教の博物館である。
この金色の建物が博物館だ。
実はタタールスタン共和国はもともと多神教の国家であった。
でも、イスラム教が伝播してからイスラム教を信仰する国家となった。
この博物館ではその伝播する歴史や信仰の様子が伺える。
さらに、ここではギネス記録にも認定された世界で一番大きいコーランを見ることができる。
ステージのモニュメントも。
この写真は、イスラム教がこの地まで伝播してきた様子を表した地図だ。
遺跡エリアへ
イスラム教博物館のすぐそばに遺跡群がある。
かつてのロシア正教の修道院などがあったが、地下に宝があるという噂によってどんどん掘り起こされ、オリジナルは壊されてしまったらしい。
今あるのはほとんど再現されたレプリカだそうだ。
再建されてないオリジナルの部分としてこの柱を紹介してもらった。
13世紀のボルガル宮殿もこの地にあった。
今では骨組みだけが遺跡として残っているだけだ。
実際にタタールスタン共和国の王が住んでいた場所である。
ヴォルガ川
宮殿を抜けると、ヴォルガ川の壮大な風景が広がっていた。
バスに乗っている時にも感じたように、北海道の知床を思い出す。
北海道を訪れた時には「もう2度と見ることはないんだろうな」と思っていたけれど、今回こんな形でまた見ることができて感激した。
パンの工場など
白のモスクの隣にはレストランや家、風車などのある村のような施設がある。
実際に牛や馬が飼育されていたりした。
ちょっとコンセプトはよくわからない。
感想
今回、このツアーにはカザン連邦大学の学生が同行してくれた。
筑波大学に1年間留学していたという彼は日本語がとても上手で、タタールスタン共和国についてのいろいろな話をしてくれた。
タタール語オリンピックというものがあり日本人がチャンピオンになったこと、タタール語と日本語の文法はとても似ていること、タタールスタン共和国とロシアとの複雑な関係なども。
例えば、タタールスタン共和国にも代表がいるのだけれど、ロシアにも大統領がいる主権の問題などについて。
国内でもそうなのだけれど、旅行に行くとつい観光地や風景、そして現地のグルメなどの表層的なものを観て終わってしまうことが多い。
でも、今回のように現地の人と話すと、観光するだけでは得られない情報などがある。
旅行でなく、留学・滞在としてくることができてよかった、そんなことを思ったツアーだった。
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