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ショートショート『燃えたつ少年』

 僕は生まれた時から本を読み続けている。これまでに何冊読んだかなど、とうの昔に数えることを諦めた。
 小高い丘にある一本の大樹が僕のお気に入りのスポットだ。ここで体育座りをし本を読むのが僕の使命である。誰に言われたわけでもない。生まれ落ちた瞬間からそう決められているのだ。僕の街には街灯がない。だから星の灯りを頼りにしている。毎日変わらない満天の星空が僕の読書を助けてくれる。
 ただ一つだけ不満がある。何者かに頭を叩かれるのだ。それも必ず右側から。僕は右を向くことができない。なのでその正体は分からずじまいである。しかし確実に叩かれる。1日に何度も、いや何万回も。時には肩を叩かれる。それも必ず右側から。何者か知らないが頼むから邪魔しないでくれ。僕は本を読むのが使命なんだ。これだと集中できないじゃないか。あぁ今度は足を叩かれた。当然それも右側から。

わざわざ読んでいただいてありがとうございます。 あなたに読んでいただけただけで明日少し幸せに生きられます。