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ヒグマと私と稀有な人材

『出身地 北海道 苫別郡苫別村
資格 第一種猟銃免許
自己PR ヒグマに対する愛には誰にも負けません。…』

募集された履歴書の束から、こんな経歴が現れた。
なるほど、すごい。本場仕込みの猟師だ。自分の目がこの文章を捉えた瞬間、おもわず手が震えた。
その履歴書に貼られている写真は、ごく普通の顔で、この人が道を歩いていても、誰もそんなことには気づかないであろうことが確信できた。今、この人の素晴らしい技術、経歴を知っているのは、自分だけである。興奮に心臓が跳ねる。自己PRには、如何に自分がヒグマを愛しているか、これまでどのような実績を積んできたのか、きれいな字で、丁寧に記述されている。
おそらくまじめで几帳面な人間なのだろう。職場にも馴染めそうである。

これは稀有な人材だ。
人間が適わないヒグマに勝てるだなんて百人力、何があっても、いざとなればヒグマを倒せると思うと全てがどうでもよくなる。最高だ! 物理的な力が強い!頼もしい!なんだこれは!

すごい。すごいのだが、
ここは公立図書館だ。どうすればいい。その力をどうやって活用するべきか。

私は頬を紅潮させながら、手に取っていたその履歴書を、そっと選考通過の書類の山に置いた。













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お題「興奮した経歴」制限時間 「15分」

即興小説トレーニングでの作品を、少々加筆修正しています。元はこちら
http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=503280

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