家族、希望の道へ 〜湊かなえ「夜行観覧車」感想〜
どーも。
湊かなえ著「夜行観覧車」を読了しました。
結論から言うと
最後いい方向に向かってよかった〜
って感じ。地味だね
特に「ここが盛り上がった」とか、「これについて深く考えた」とかは無くただただ最後安心した、と言う感じの小説でした。
あらすじ
話は高級住宅地「ひばりヶ丘」に住む3つの家族の視点を追って進んでいきます。
1.遠藤家
…平均的な収入の父、母、娘の3人家族。しかし、母の異常な程のひばりヶ丘に対する執着心で高校受験を控えたの娘は癇癪を起こし、毎日のように母親に攻撃する。それに耐えきれなくなった母は娘を…
2.高橋家
…エリート5人家族。が、末っ子中学3年の慎司は母親からの期待に怯えている。そんななかで、父親は慎司の勉強のことは期待していないと言ったのをきっかけに母が父を殺めてしまう。
3.小島さと子
ひばりヶ丘に古くから住む住人。ひばりヶ丘に誇りを持っているため、殺人事件が起こった高橋家に嫌がらせをする。
とまあこんな感じ。そして話の最後には各家こんなふうに動く
・遠藤家
母が娘を殺しかけた日の夜の父親のことば
「こんな最悪な日を乗り越えられたのだから、これからもやっていけるさ」
結局遠藤家の選択肢は3人でやっていくしかないのだからと、今の状態を前向きに捉えたこの言葉は良いと思いました。
・高橋家
学歴コンプレックスの母親と好きなことをさせても良いと考えている父親の中で起こった殺人。残された3人兄弟が出した答えはこちら
父親を悪者にし、母は身を守ろうとして殺したんだ
と、警察に供述。
自分たちのやりたいことを支持してくれていた父親よりも、自分たちの未来を選択したところに希望を感じました
・小島さと子
高橋家の親代わりになろうと勝手に言ってる。
タイトル「夜行観覧車」の意味とは?
夜行観覧車については文章では
「もうすぐひばりヶ丘の坂を下ったところに日本一大きな観覧車ができるんだ」
と言う形で何回か触れられてました。これはどう言う意味でしょうか。
著者は観覧車のひとつひとつの部屋を家族として捉えたのではないでしょうか。その根拠は物語の語られ方にあります。
あらすじでも書いた通り、この物語はそれぞれの家族にフォーカスしながら進んで行きます。観覧車のひとつひとつの部屋を覗くように進んでいくこのストーリーを著者は観覧車と比喩したのではないかと考えます。
もうひとつの疑問はなぜタイトルは「観覧車」では無く「夜行観覧車」なのかということです。
夜行観覧車とは名前の通り、夜に動く観覧車。
つまり、それぞれの家族の「夜」の部分もっというと苦しみや悲しみなどのブラックな感情が関わる部分を中心に描いているから、夜行なのではないかと考えます。
特に面白かった部分
「夜行観覧車」の特に面白かった部分は登場人物の心情の表現。ブラックな感情に苦しむ登場人物の心情が文章からひしひしと伝わってきます。
ぜひ一読を。
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