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ムスメ小学一年生、私たちは学校をやめることにした③

 やめることにしたわけだが、もちろんそこに至るまでは何度も夫婦で話しあった。まあ当然である。
 おたんこナスとしてナス畑ですくすくと育ってきた私とは違い、夫はずっと常識のある人なので、ミルコが学校に行きたくないという気持ちは理解しつつも、実際そうと決めるまでにはとても大きな抵抗があったのだ。

 なかでも
「いくら本人が嫌だと言ったからって、それを本人に決めさせるのは負担が大きすぎる。かわいそうだ」
というのが、大きな理由の一つだった。
 んー、「かわいそう」って何だ? 
「子どもには、学校に行きたくない、だから行かないってことで、これからの将来どんな結果になるのか分からないんだ。だから今が嫌だからって、そんな重大なことを決めさせてしまっては、後できっと後悔する。そうなってはかわいそうだ」
ってことかな? ナスにはよく分らんぞよ??

 子どもに決めさせることが気になるんだったら
「私が行かないでいいって決めた」
でもいいけど。
 責任は私がとるよ。どうやってとるかはまだ分からんけど、とりあえず謝る覚悟はできている。
「お母さんが、あの時行かなくていいって言ったから、行くのやめちゃったんだ! 私の人生、どうしてくれるの?!」
って言われたら、全力でごめんって言うわ。
 そしてその時できる努力はすべてやるよ。
 無責任か?
 うーん、わからん。
「謝って済むかーい!」
という声は聞こえてきそうだが、んじゃ学校に行かせたら責任取らなくていいの?

 逆に学校に無理して行かせて
「お母さんが、あの時行けって言ったから、行くことにしちゃったんだ! 私の人生、どうしてくれるの?!」
って言われても、ごめんって言って、その時できる全ての努力をするしかないよね~? 
 でも行かせた時には、誰もそう言わないのは何故?

 どちらにせよ、誰の人生に対しても、その人の代わりに何かしてあげることなんて、できないんじゃないのか。たとえ親であってもさ。
 子どもだって、自分とは別の心を持った一人の人間なんだから、ヒトの人生に口出しすることなんて、出来ないと思うんだけど。
 だったら親は、その子の選んだ結果がどんな結果になっても、その子の傍にいて、やれるだけのことを一生懸命やるしかないよね。


 子どもだって、自分で自分のこと決める力はあると思う。
 一年生には難しい、まだ早いって、校長先生にも言われたけど、んじゃいつならいいのか。
 成人したら? とっくに小学校終わってるしねぇ。
 どこかの年齢で線を引くの? それとも何かのテストに合格したら?
 なんかそれって納得いかないわー。

 大人だって自分が子どもの頃は、
「なんで大人は分かってくれないんだ!」
って思った経験が、一度や二度はあるんじゃないかな。
 その時は、仕方ないんだって無理に自分を納得させたかもしれないけど、だからと言って同じ思いを子どもに味あわせなくてもいいよね?
 それにそのことを覚えてるってことは、やっぱり何か思いが残ってるからじゃないかと思うんだけど…。

 その子が冗談半分なのか、大人の気を引きたいのかとかじゃなく、ある程度の深さを持って言っているのが分かるなら、それはたいてい尊重しなきゃいかんことじゃないのかな。
 どれだけの深さなのか分からないなら、まずその子自身のことが理解できるように、大人の側が努力したほうがいいだろうしね。
 その子が、自分の思いを言葉にする力が未熟な場合は、~したいって言ったときの本当の願いを通訳したり引き出す必要があるかもしれないけど、なんにせよそれはその子の自己表現だし、それって立派な意見表明だ。

 子どもだって、自分のことを自分で決める権利はあるよ。権利は、何かのテストに合格して、大人に与えてもらうものじゃなくて、生まれた時から持ってるんだもん。たとえおたんこナスでもな。

 子どもは親に(あるいはそれに代わるものに)保護されなきゃいけないけど、親だからって神じゃない。権利を与える権利なんて無いじゃない?
 少なくとも、子どもだって、自分の意見を伝えて、それを大人に尊重される権利は保障されているのだ。
 それが例え幼稚園でも、行くのイヤ!って言ったのなら、それにはそれなりの理由や思いがあるわけだしね。
 そこを大切にせず、大人の気持ちや常識でジャッジするのは、やめておいたほうがいいと思うよ。それ以降、その子からの信頼を得られないだろうから。
 それでもいいってんなら止めはしないけど、後で信頼を取り戻すの、まあまあ大変だよ? それでもホントにいい? そこんとこもっかい考えてみて。

 あと、将来が大変になるって決まったわけじゃないしね~。あんがい学校行った方が大変かもしれないし、とにかく今は行きたくないんだよね。

 その気持ちと、この子を信じて、やってみる選択肢もアリじゃないか?
そんなこんなと夫婦で何度も話し合って、私たちは家族みんなで学校をやめることにしたのだった。

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