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新チームのリーダーになったらまずやること

こんにちは。天野です。

スクラムフェス大阪2021で、すべての社会人に知ってほしい仕事の基礎としてのアジャイル/スクラムの話というセッションをお話しました。

セッションの中で「チームワークを発揮するために、新チームのリーダーになったらまずこの8つに着手すると良いんじゃないか」と紹介しましたが、詳しく解説する時間がなかったので、補足として本記事を公開します。

前提となる基本条件

チームを機能させるには、基本的な条件が整っている必要があります。これらの条件は満たされていることを前提とします。

- 小さいこと(3-7人程度)
- メンバーの入れ替わりが少ないこと
- 十分な時間をチームの活動に使えること
- 業務遂行に必要なスキルがカバーされていること

1. チームの存在目的を明確にする

まずは「このチームは何のために存在するのか?」を明確にします。ミッションやビジョンといった言葉で表現されるかも知れません。いずれにせよ、チームの根本的なWhyを明確にすることで、共通の目的意識を形成します。

これはチームを作る段階で上司や組織から与えられていることも多いでしょう。与えられたものでも構いませんが、チームの存在目的は十分に意義深いと感じられるものかどうか確認します

2. ワクワクする目標を立てる

チームで活動して達成したい目標(ゴール)を立てます。1週間・1ヶ月・3ヶ月程度の粒度で、必要な範囲で設定します。OKRのようなツールを使っても良いでしょう。前述の存在目的は「なぜこのチームは存在するのか」への答えですが、こちらは「なぜこの活動をやるべきなのか」への答えになります。

目標を立てる上で重要なのは、数値(例:売上XX万円!)や締切(例:今月中にリリース!)のような無味乾燥なものにしないことです。チームの活動の成果を受け取った人の生活がどう変わるかといった、チームが問題を解決した後の素敵な世界について語ってください。

良い目標かどうかは「ワクワクするかどうか」で簡単に判断できます。人が共感できるようなストーリーは個人の思いから生まれるので、目標は個人で考えた方が良いです。目標をチームでゼロから議論して作ると、このストーリーが失われてしまいます。必ずしもリーダーが目標を考える必要はありませんが、1人が考えたものが望ましいと考えています。

3. チームで行う業務を設計する

チームワークを機能させるためには、仕事がチームプレーになるよう設計することが重要です。そのために、仕事を完成させるためには他のメンバーと協力する必要があるようにします。

チームが遂行する主要な業務について、どのようなタイミングでどう協力するか検討します。複雑な業務・クリティカルな業務・属人化をなくしたい業務は、積極的に協力できる体制にします。協力する機会が多くなるほど、チームワークが発揮される機会も多くなります。

業務がチーム化できていない場合、各自が仕事を手元で黙々と進める個人作業のグループになります。一方で、すべての業務をチーム化する必要はありません。チームで行っても質が上がらない仕事(例:単純な事務処理)や、極端に個人の資質に依存する仕事(例:絵画などの芸術的創作)もあります。盲目的にチーム化せず、「この仕事はチームで行うべきか?」と問うことも重要です。

4. 必要な権限を確保する

成果を届けるために必要な権限が確保できると、メンバーの主体的な判断が可能になり、自ら責任を負うことができるようになります。

予算や設備といった基本的なものから、他チーム・他部署とのやり取りといった組織内の手続きまで、さまざまなものが考えられます。リーダーとしては、まずは上司にどこまでの権限が持たされているのか確認します。場合によっては、チームが主体的に判断できる範囲が広がるよう交渉します。

チームの成果を受け取る人と直接やり取りできる権限があることも重要です。製品開発チームならその製品のユーザー、人事のチームなら従業員と直接やり取りできるようにします。直接やり取りができると、迅速なフィードバックが得られるようになります。

理想は、チームの仕事を完成させるために必要な判断はすべてチーム内で完結できることです。

5. チームで合意した行動規範を作る

チーム内での発言や振る舞いが、チームとして望ましいものかどうか判断できる基準を作ります。価値基準や文化を明文化する活動ですね。規範を作ることで、チームに規律が生まれ、チームとして望ましい行動を増やすことができます。

改めて規範を作るなんて気恥ずかしいと感じるかも知れませんが、メンバーの振る舞いは他のメンバーの振る舞いに大きく影響を受けます。チームでの活動は苦痛を伴うことも多いです。つらい状況でも、規範があれば苦痛を乗り越えてチームに積極的に関わる理由を持てます。そして「少しつらいけどチームとしては価値のある行動」が増えれば、それが他のメンバーに影響を与え、チームに規律が生まれます。

規範はどんな粒度でも作れますが、「朝来たら挨拶する」「残業はしない」といった規範は特定の状況により過ぎていて使いづらいと思います。例として、「お互いを尊重する」「チームの議論には積極的に参加する」といったものが候補になります。

6. たくさん雑談する

チームとして活動するには、メンバーの相互理解が重要です。そのため、チーム形成の(特に)初期段階ではコミュニケーションの絶対量を確保する必要があります。

「雑談しているとサボってると思われる」という話を非常に多く聞くので、あえて断言しますが、雑談は仕事です。チームとして効果的に協力して成果を出すために必要なコミュニケーションの一部です。

なので、たくさん雑談してください。最近はリモート主体のチームも増え、休憩中の雑談のような偶発的なコミュニケーションが起きにくい状況なので、雑談をチームに必要な活動として日々のスケジュールに組み込みましょう。

朝会やお茶会など、実施方法はどのような形式でも構いません。メンバーの相互理解を促進したいので、業務だけの会話ではなく、人となりが分かるような話ができると良いと思います。

7. 定期的に成果を議論する

チームの仕事の結果と今後目指すべき目標について、定期的に議論します。スクラムのスプリントレビューや、OKRの定期レビュー会のような場です。

下記のようなトピックについて、チームで確認・議論をします。

チームの目標に対して現在はどのような状況か?
チームの仕事の成果を受け取った人は満足しているか?
現在の状況を踏まえて、今後目指すべき目標に修正は必要か?

これは単なる進捗確認やマネージャーによる評価の場ではなく、チームとして成果を達成するために現在地と目標・戦略を議論するための場です。メンバーが積極的に参加・議論する必要があります。共有される情報そのものよりも、チームで議論して得られた知見や、軌道修正された目標に価値があります。

8. 毎週ふりかえる

仕事の進め方を振り返って改善するための場です。チームとして活動するということは、個人では解決するのが難しい巨大・複雑な問題を扱うことになります。そのような難しい問題に取り組むとき、手順がまったく同じルーチンワークだけで解決することはできません。状況に応じて仕事のやり方を変えることがアジリティに繋がります。

定期的なふりかえりは仕事の改善に重要ですが、チーム運営の観点でも重要です。日々感じているモヤモヤを共有することでメンバーの関係性が改善したり、タフな議論を乗り越えることでチームがより難しい状況に飛び込みやすくなる、といった効果があったりします。

できることから一歩ずつ

全部で8つの「新チームでまずやると良いこと」を紹介しました。
それぞれの項目が無限に詳細を掘り下げられそうですが、チームを運営するリーダーにとって役に立ちそうなポイントを自分なりにまとめてみました。

まとめたとはいえ8項目もあり、一度に全部を実施することはできないので、まずはふりかえりだけやってみたり、目標を設定してみたりと、できることから一歩ずつ取り組んでもらえればと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。本記事は定期購読マガジン「スクラムマスターの頭の中」で執筆した記事を再編したものになります。毎週更新しているので、よければ購読よろしくお願いします。

良いチームを作るための参考になれば嬉しいです。それでは!

ありがとうございます。書籍代に使ったり、僕の周りの人が少し幸せになる使い道を考えたいと思います。