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『ベスト・エッセイ 2018 / 日本文芸家協会』を読んで

『ベスト・エッセイ 2018 / 日本文芸家協会』を読みました。

きっかけは先日読んだ本↓に登場したゴリラのハミングの話が読みたかったのです。

今まで読書をほとんどしてこなかったわたしはエッセイをほわほわしたポエムだと思い込んでいました。
偏見ってこわいですね。全然違いました。

エッセイは、事実を元にした話(ノンフィクション)です。筆者の経験から得た知識を元に、感想や考えを自由な形式で述べたものです。随筆とも呼ばれます。

そして、書き手の視点がずっと作者自身から変わることが無いというのも特徴です。
言葉のギモンを解決するサイト

筆者が本を通してわたしに体験談を語ってくれる。
ページをめくるごとに代わる代わる話しかけてくれます。
さまざまなジャンルの方が興味深い話をいろんな角度から教えてくれる。
自分の好きなタイミングでわたしのペースで話を聞くことができる。

これがもし本ではなく人から直接お話を伺える機会だったとしたら、初対面でこんな深いこときけないし
こんなにたくさんの人の話を聞いたらわたしは一日中耳に残る人の声に苦しめられていただろうなと思います。

これがエッセイなのか!という気持ちとともに
読書の利点を改めて感じました。

ベストエッセイと名がついている通り
どのお話もすごく面白かったのですが特別心に残ったものがあります。

「傷っていうのは、そこに人が生きていた証ですから」
(略)
とかく、人の世は「無垢」や「純粋」といったものに特別な価値を見出しがちだが、人をかたちづくっているものは、間違いなく傷の歴史の方にある。
傷だらけの古机 吉田篤弘

自分の「美しい」の感覚が広がりました。
例えば紅葉。空を見上げて真っ赤に染まった葉こそが美しいと思っていましたが、足元に散った葉も美しいと感じられるように。
また、少しずつ老いていく自分の変化に戸惑いや悲しみがありましたが歴史を刻んでいるのだなと少し前向きに捉えられるようになりました。

何もかも忘れられるくらいの、まっすぐな恋愛がしたくなる。そんな風に現実のスイッチが切れたらどんなに楽か。夫がいなくなるかもしれないという恐怖を背負いつつ、それでもわたしは生きなければならない。今は彼が好きだと思う気持ちで生かされている。
夫の最後を見届けるのだと思うと、決して気を抜くことができない。そのためには、彼のことも大事にしたい。もう誰かと別れたりするのは嫌だから。
わたしはいま、混乱の真っ只中、やっと息をしている。
また人を好きになってしまった 植本一子

闘病中の旦那さまとは別に好きな人ができたというエッセイ。
賛否両論あるだろうと思うのです。
わたしだったらうちに秘めて置きたくなる。他人からの反応が怖い。
自分の気持ちをさらけだせる植本さんを尊敬します。
また、わたしは恋愛感情が錆びついてしまっているのでどんな状況であれ好きな人がいることが羨ましくもなりました。

ノートは私だけの王国だ。
世界がいかに複雑で滑稽で深刻で魅惑的であるか、思い出させてくれる。だからこそ生きるに値する場所なのだと教えてくれる。
ノートは私だけの王国 小川洋子

自分の気になることを書き留めたノートを作成している小川洋子さんのエッセイ。
エッセイ中にそのノートの内容が少し書かれているのですがチョイスがまた想像して楽しめたり考えられるものばかり。
見たら元気になれるノートっていいですよね。
是非真似したいなあと思いました。


今回ベストエッセイを読んだことでわたしの世界が広がりました。
いろんな意見を少しずつかいつまむことができるので「これ面白いかも」の興味のしっぽが掴めそうです。

今回読んだものが2018なので
違う年のものも読んでみようと思います。

おわり


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