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小説(5分以上)

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小説
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#短編小説

5分10秒小説『ディッシュ君の夢』

 ディッシュ君はかわいいお皿。居酒屋の棚に入学して、今日から始まる新学期のことを思ってワ…

或虎
7か月前
30

6分20秒小説『鰹と桜なぜか高橋の涙』

 三階建てのマンション一階がお好み焼き屋、宵の口、19時頃、引き戸をがらがらっと開けて小さ…

或虎
7か月前
15

6分20秒小説『壁に掛けられたムンクの叫び』

「Aランチセットでお願いします」 「申し訳ございません。ランチは12時からのご提供となってお…

或虎
7か月前
14

5分10秒小説『ロバとデニール』

今週の映画紹介 『Organ of love and suffering』 邦題:『黄金ナマコ』 「目が覚めるとそこは…

或虎
7か月前
25

8分0秒小説『組紐』

 2月初旬、火山洞窟を専門に調査しているNPO法人からオファーがあった。1月に三島風穴を調査…

或虎
6か月前
16

6分0秒小説『餅大福』

「すいません。店長が留守の間にお客様からクレームの電話がありまして――」 「クレーム………

或虎
8か月前
12

7分30秒小説『勇者、死すべし』

 聖剣一閃、逆袈裟に斬り上げた一撃が、魔王の左手を切り飛ばした。振り下ろされようとしていた魔王の杖、右手ごと宙に舞う。杖に込められていた魔力が暴走し、魔導士の胸を撃ち抜いた。 「エリス!」  魔導士の名を叫び駆け寄る勇者。魔導士は地に伏して呻く。魔王は玉座の後ろに立ち込めていた闇の中に消える。残ったのは、勇者と戦士、僧侶、そして深手を負った魔導士のみ。辺りには、魔物の死体と勇者軍の兵士の死体が、境目が分からぬほど入り混じって床を埋め尽くしている。生き残りは勇者パーティーの4人

9分10秒小説『ごんと小夜』

 「もうすぐあの子に会える」鼓動が早くなる。4本の脚で駆ける。そろそろ獣道から人道へ入る…

或虎
8か月前
13

11分10秒小説『天使よ彼女に伝えてくれ』

 若い頃の話だ。  或る日の昼過ぎ、バスを降り、点字ブロックを白杖の先で確認しながら歩い…

或虎
8か月前
14

11分20秒小説『天使さん彼に伝えて頂戴』

 随分昔の話です。  生まれつき耳が聞こえない。”声”というものを聞いたことがない。だか…

或虎
8か月前
10

6分20秒小説『Borne in monster』

「一晩が一生に感じられるほど悩みました」  部活の後輩、吉田君、放課後、校舎裏に呼び出さ…

或虎
11か月前
14

5分20秒小説『車椅子に乗った蝶』

 むかしむかし、或る柊の葉の裏で、一匹の雌の蝶が羽化しました。殻を破り、春目掛けて這い出…

或虎
10か月前
23

6分40秒小説『Pharisee』

 刑事部門に十二年従事。現在、捜査第一課で、殺人、強盗、性犯罪などの強行事件の事件を担当…

或虎
10か月前
15

5分20秒小説『刹那』

 前科二犯が狙っている。シールを貼る私の手が止まる。私の視線、刺身のパックに貼る予定の半額シール、その上端から中年女性のパーマ頭が生えている。  前科二犯、過去に二回万引きで捕まった経歴の持ち主、仲間内で”前科二犯”と呼んでいる。しかし万引きを見つかった店に性懲りもなく来るとは――しかも、割り引きの刺身を買おうと、シールが貼られるのを待ち構えている。常人では計り知ることのできない精神構造だ。  私的には、このおばちゃんにむざむざと半額商品を渡したくはない。刺身はラストの一パ