見出し画像

RE:創造性の泉、愛しき沼―Vol.10―

いつもなら感想文は、心が震えた勢いのまま書き殴って公開していたんですが、今回はアーカイブを何度も見ながらいてもたってもいられずにまた書き出しています。

心が震えて泣きたくなるほどの作品や人物に出会えたことは、人生の中でとてつもなく幸運なことで、清春さんが長い年月をかけて音楽を作り続けて歌ってくださっていることに感謝しかありません。

アーカイブで見返せることはとっても贅沢ですね。「あぁ、この時こんな動きもしてたのね」と自分の目の節穴具合に呆れながら瞬きを憾み、毎回新しい気持ちで観れて、飽きることなく堪能できます。

5日間のアーカイブが終わったのと、アーカイブを見る度に自分の中に浮かび上がる言葉を形にしておきたくて、第二夜のもう少し詳細な感想文(妄想・錯覚含む)を公開します。

「そんなに言うなら」と誰かひとりでもこの作品を観てもらえたら、なんて願いつつ...次回は9月。

次回の配信は、9月29日㈫30日㈬に決まりました。
詳細はこちらから。

https://kiyoharuthetest.zaiko.io/_item/330523

https://kiyoharuthetest.zaiko.io/_item/330524


この記事は、8月26日に生配信された清春さんの新しい領域【A NEW MY TERRITORY】第二夜の感想文です。

【A NEW MY TERRITORY】第二夜。
歌に癒され、圧倒的美学にひれ伏した夜。

セットリスト
ナザリー
Beside you
Dance
AWAKE
輪廻
SURVIVE OF VISION

rally
ACME
GLAVE
REVOLVER
空白ノ世界
LAW'S
美学

蝋燭の灯りがその空間を優しく照らしている中で、センターに置かれた赤いソファ。そこに座り佇む清春さんは、「歌う人」なのにひとり舞台に立つ役者のようでもある。歌われる物語は清春さんの人生の一部で、清春さんはストーリーテラーでもあり、その物語の主役。黙って座っているだけで、人生の厚みを感じられるオーラがあって、空間全体がもう清春さんのTERRITORYとして支配されているのがわかる。

第一夜で感じた気迫とは違って、なんの気負いもなく座って佇む第二夜の始まり。同じ人なのに、魅せ方を上手く操れてしまうのも清春さんの凄さだ。
そこに監督であるユータローさんの演出が加わって、凄まじいほどの相乗効果を生み出している。撮らせる方と撮る方とが強い信頼で繋がっている。そうでなければ、こんなに素晴らしい作品は生まれなかっただろう。

一曲目は「ナザリー」。曲が始まると、身体中の神経が一気に清春さんが誘う世界へ引き込まれるのを感じた。滑らかな歌声が身体に染み渡る。蝋燭の灯りとセピア色の光に染まっている空間は、その声でさらに退廃的でありながら艶やかな世界に仕立て上げられていく。

今回は全曲に渡って、そのギターの音色を聴かせてくれているK-A-Zさんは、清春さんと並んで写っていても映像映えする華がある。二人が並んで映る映像は不思議なフィット感があって、清春さんだけが映る映像とはまた少し違った毒と華が印象的だ。

ソファが置かれたステージの前に並ぶアンティークの家具も映像美を盛り立てる一部で、様々な画角で撮られる映像は全て切り取って飾りたいほど、芸術的で美しい。

K-A-Zさんのギターで彩られた楽曲はなぜこんなにも情緒的で奥行きが深くなるんだろう...いつも清春さんの歌のチカラで癒されることも泣くことも胸が騒ぎたてることもあるけれど、そのチカラがさらに魅力を増す効果をもたらしている。

安定の土台を築く大橋さんのアコースティックギター、それに華を添える中村さんのエレキ。そこに深みと情緒を与えるK-A-Zさんのギター。三者三様の本当に素晴らしい演奏だった。K-A-Zさんの演奏は、そのほとんどがリハをしないまま演奏したアドリブだったことにも驚かされる。

【A NEW MY TERRITORY】第二夜の前半は、MCの奥浜レイラさんの言葉を少し借りるなら、極上のシルクのパジャマでベルベットの絨毯に寝そべって極上の音楽を聴いている、そんな時間だった。心地よく響く声が感情の襞(ひだ)をなぞって、美しい映像が両目から脳に伝わって幸福感を満たしてくれる。これより至福の時間があるだろうか。

伸びやかな高音、甘く響く低い声、囁き紡ぐ声、嬌声のような吐息、地を這うようにがなる声、清春さんの声の表現力は本当に素晴らしく、人生への覚悟や、深い愛情、悲しみ、懇願、怒り、絶望、様々な感情を表現する。あれだけの声を使い分けているのに、枯れないどころか、後半になるにつれますます声量も表現力も増していくことにいつも驚嘆する。

長い年月の間に作られた歌たちは、現在の清春さんの感情や捉え方で「今」の表現で歌われる。「Beside you」や「AWAKE」が20年近く前に作られた曲だと知らない人なら気づかないだろう。清春さんの歌はすべて懐かしいとも古いとも感じることもなく、むしろ、あれもこれもと聴きたくなる。

映像は少しの休憩を挟んで後半へ。その休憩の間も美しい映像が映し出されている。作品の世界観を崩さない、素晴らしい演出だと思った。

音が鳴り、蝋燭が消されたセットに立つ清春さんは、なんだかとても危険な香りがした。背景のスクリーンの色で赤みがかった空間で、ただ、立っているだけなのに、匂い立つような色香や、踏み外せば狂ってしまいそうな色情にも感じる雰囲気で、妖しい美しさがある。

そこは清春さんの一人舞台で、あらわになる肌や髪をつたう汗、ドッグタグが重なり合う音、そのすべてが演出となって、歌の凄さと合わせて表現となり目と耳と意識を釘付けにする。

極彩色の闇、静かな激情、デカダンス、光、狂気、愛、堕落、救い、劣情...

一つの言葉では収まりきれない。
もはや「ビジュアル系」なんて言葉は軽すぎて似合わない。
言葉を尽くしても表し難いその表現力の高さは、それこそ紆余曲折に迷い悩みながら正しく時を重ねた結果なんだろう。

「rally」「ACME」「GRAVE」「REVOLVER」と続き、甘く危険なロックンロールのトリガーが引かれ、撃たれた弾丸が引き寄せた無音の空白。そして歌われる「空白ノ世界」。ここからの3曲が本当に圧巻だった。

「愛なんていらない」と繰り返し、「でも 愛してる」と終わるこの歌は、清春さんが歌で救ってくれている私たちの世界を歌っているのだと思っている。
美しいものばかりではなくて、絶望や孤独や悲しさにも染まる。それでも、清春さんが魅せてくれるひと時の夢の時間は「救い」だ。

絶望や悲しみを諦めて割り切ったとしても、どこかで燻ぶったままの感情はいつしか自分を蝕んで、違う形で姿を現して、いつしか消えない「傷」となるのかもしれない。

清春さんが与えてくれる夢の時間は、それに至らないための特効薬か、もしくはそうなってしまったとしても少しずつ存在が気にならないほどにしてくれる霊薬か。処方を誤ると劇薬にもなりかねないけれど...

「空白ノ世界」で身体中を振り絞って歌う清春さんの姿を、祈りながら見つめる。宗教的と言われても仕方のないくらい、人を陶酔させる魅力がある人。どうか、まだ少し、この姿を見ていられますように...いつもそう願ってしまうのは、時間が無限ではないことを知っているから。

―逢える回数は、あと僅か あと僅か...―(妖艶)

Law'sの冒頭で左手を上げた清春さんの背景に映し出される【A NEW MY TERRITORY】の文字。測ったかのようにピッタリと状況にも盛り上がりにも嵌って、声にならない声を上げながら画面の前にひれ伏した。

初めての配信から三カ月。八日目の夜。
まさに、誰も到達できない孤高の領域で、その圧倒的な美学を表現し、たくさんの努力と才能の結晶、渇望と期待と壁の高さを悠々と乗り越えた姿を見た。

画面の前で、ひれ伏すほどの衝撃を受け、感動や崇拝や愛しい気持ちが入り混じって、笑っていた。これが「清春」だと世界中に見せてまわりたい。そんな勢いのまま感想文を書いた。

追いかける背中は遠すぎる。でもその輝きは届いている、私の人生の道標。

まとめ

動きづらくなったはずの世の中で、ひとつの挑戦だった【THE TEST】から昇華した【A NEW MY TERRITORY】は、コロナ禍がもたらした唯一のギフトなのかもしれないと、今これを書いていて思う。

これほどにも美しい歌と映像を聴いて観られることは幸せでしかない。しかも一度きりではなく、アーカイブという手段で何度でも繰り返して。
ライブとはまた違った素晴らしい作品として、新しい表現方法として成り立つ様子を同じ時空で見届けられたことは、なんて幸せなんだろう。

逢いたい気持ちは募るけれど、【A NEW MY TERRITORY】はこれからもライブとは別で続けてくださったらいいなと思っています。

第一夜でMCのジョー横溝さんが言っていましたけど、ファンだから褒めているわけじゃなくて、本当にすごいものを見せてもらえるからファンをやっているわけです。まだ知らない人に、この凄さが伝わりますように。
そして、いつかまた同じ空間で逢えるように、願いと愛を込めて―...

この記事が参加している募集

私の勝負曲

ありがとうございます。言葉のチカラで誰かを癒せたらいいな。