【シリーズ】原木を買いに。<2/4>買い付けって?
2023年1月に同行した、原木の買い付けのお話『原木を買いに。』シリーズ。4回に渡りお届けしています。前回の記事はこちら。
買い付けする場所はどんなところ?
シリーズ2回目の今回は、原木の買い付けについて、同行した広報すずきが素朴な疑問を買い付け師にぶつけます。
答えてくれるのは、製造の現場をまとめる舟木さんと、買い付けを任されて9年目になる武田さんです。
ーー今回はどちらの市場へ行くのでしょうか?
舟木さん)岩手県森林組合連合会が運営する『盛岡木材流通センター』と『久慈木材流通センター』この2か所に行きます。
ーー寒い地域に育つ木は年輪の間隔が細かく揃っている特徴があるため、昔から仏壇に使用してきたと伺いました。東北各地にたくさんの市場がありますが、どのように行き先を絞るのでしょうか?
武田さん)市場に並ぶ木材には全て番号がふられており、樹種や長さ等記されたリストを事前にもらいます。そこからこちらの要望に合うものを選びます。
武田さん)数年前から、出品される原木の写真をWEB上で見ることができるようになりました。そこであらかた目星を付けます。
ーー事前に写真で確認できるようになったのは便利で良いですね。
ーーそれでも現場に足を運ばれるのは、なぜなのでしょう?
舟木さん)写真だけで判断して、入荷後、製材すると、中が割れていたりすることがある。写真だけではわからないこともあります。使えず無駄にしてしまうことを避けたいということが大きいですね。
ーー市場は年間を通して月に一度開催されているそうですが、どうしてこの寒い時期に行かれるのですか?
武田さん)良質な原木が多くでるのが、この冬の時期なんです。樹木自体が秋~冬にかけて徐々に水分を抜いて立冬に備えるので、水分が最も抜けたタイミングで伐採された、状態の良い丸太を見ることができます。
ーーどのような視点で木を選ぶのでしょうか?
今回訪れた久慈木材センターでは、約1千本ほど並んでいると伺いました。この木(写真下)なんか、大きくて材料としてたくさん取れそうですよね。
舟木さん)いやいや、こんなに大きいのは使えない。丸太として大きいと出る木目が全く違う。特に厨子や仏壇は木目のきれいさが重要だから。
武田さん)幹がまっすぐに伸びていて、年輪が中心から均等の間隔で入っているときれいな木目が出ます。
舟木さん)木材を見て回る中で珍しいところにコブがあるものを見つけると、どんな風に木目が出るのか考えることもあります。そういう原木との出会いも楽しみのひとつ。
ーーここで選んだ原木はどのように買うのですか?
ーー実際に同行してみて、ひとつとして同じ木はないことを改めて実感できました。その中で厳選した木を買い付けるんですね。どのように買うステップに進むのでしょうか?
武田さん)欲しい原木を選んでも、全て買えるわけではありません。
県内外より競合他社が集まり、それぞれ値段を付けていきます。最終的に一番高く値を付けた人が競り落とす仕組みです。
ーーそういったこともデジタル化されているんですか?
武田さん)そうですね。今はタブレットで入力して翌日には結果が分かります。
舟木さん)昔はその場でひとつひとつ開票していた。夜の9時くらいまでいたこともあります。
ーー入札額も1円単位で入力でき、そのわずかな差で落札の有無が決まるとのこと。緊張はされませんか?
武田さん)駆け引きのような心理戦もあるので緊張はあります。落札できると安心します。できなくても、競合他社の情報や落札額の情報を持ち帰り、次回に活かします。
ーー今回の開票結果にも立ち会い、その緊張感を一緒に味わうことができました。2人が選んだ原木が春には会津にやってきます。
あとがき
次回、第3回目はちょっと一息。
岩手県までの道中や買い付け中の裏話などお届けします。