見出し画像

ほんのわずかな山行記録 ひと休み

「登山て何が面白いの?」

谷川主脈縦走の前後になると私が登山にハマっているということは周知のこととなりつつあったので、その頃は結構こういう質問を受けた。

この質問は私がある先輩に投げかけた質問と同じだったのですが、その先輩は「気持ちえーでー!」という一言のみで、何がどんな風に気持ちいいのかはわからなかった。
まぁ、私も当時は登山に全く興味がなかったので、そーすか~って感じで流していたと思います。
それが20代の頃ですか。

その当時の先輩と同年代のアラフォーに達した私が何の因果か同じ質問に答えるわけですが、確かこんなことを言っていたと思います。

  • しんどいが故の達成感

  • 日常では見られない絶景

  • すべて自分で決めるという自由な感覚

  • 難度を上げてチャレンジできる


ま、要するに「気持ちえーでー!」ってことなんですよw

私が質問した先輩は年に1回、金剛山に登る「県人会」のイベントに参加していただけなので、この答えを理解してくれるかどうかはわかりませんが、周囲の大方の人は納得していました。

「あぁ、やっぱりそんな感じだよね」みたいな。

私が答えた内容って日常の中でも体験できることなので、おおむね理解していただけたんだろうと思うのですが、だからこそ「なんで登山なの?」とさらに聞いてくる方もいらっしゃいました。

確かに登山でなくてもこういう感覚を得ることはできるでしょう。私の場合は他のことに出会う前に登山に出会ってしまっただけなんだと思います。

体は動かしたいけどスポーツは苦手、という私に合っていたのもハマった理由の1つかもしれません。


とにかく、こんな質問に答えるたびに自分でも「何が楽しいんだろ」って考えてしまうのですが、いろいろ考えてみると登山の楽しみはそのまま仕事の楽しみとおんなじだな、ということに気付くわけです。

日常では見られない絶景は、仕事に例えると「今まで見えなかったことが見えてくる」「分からなかったことが分かってくる」などと置き換えられるし、自由な感覚っていうのは「自分のやりたいことができている」状態、と置き換えられるんじゃないかなと思うんです。

そう考えると登山も仕事もおんなじだな~とか思ったりするのです。

「ハイカー=自分」が「登山=仕事」において「目的地=目標」に達するためには、絵にあるような各要素が必要になろうかと思います。エネルギーは登山だと水や食料、目的地に到達しようとする意思ですが、仕事の場合はお金や家族、あるいは責任感や使命感などでしょうか(まじめか)。
エネルギーの内容は人それぞれですが、体力やモチベーションを維持するために必要なもの、ということですね。

「目的地=目標」の難易度が高すぎると、達成するために必要な各要素の量や質に、その時の自身の体力や知識・技術が追い付かず大変な目にあうかもしれない。
登山であれ仕事であれ、高い目標を掲げれば自身の体力や知識・技術を相応に高める努力が必要なのは明らかで、結果的にうまく目標を達成し続ける、或いは成長を感じ続けることで、この努力自体が楽しくなり、努力を努力として感じなくなります。

仕事の場合、目標の難易度が高すぎて達成できなかったとしても、その経験は次の機会、あるいは将来にきっと役立ちます。会社がつぶれてもね。

でも登山の場合は最悪、「失敗=死」となってしまう場合があるので目標の難易度は慎重に設定しなければなりません。

「高い目標」を掲げ「達成」にたどり着くためには「努力」が必要です(だけじゃないけどね、工夫とかもね)。その「努力」によってそれまで持っていなかった何かを得ることができるはずです。

その得たものというのは知識・技術・経験などですが、重要なのはそれを獲得したという「自信」ではないかなと思うんですね。そして「自信」は勇気をもたらしてくれる。この勇気が次への「チャレンジ」に向かわせる原動力だと思うのです。

「目標~努力~達成」をひとつの輪っかだとすると、「チャレンジ」は、「今、達成した輪っかと次の新しい輪っか」とをつなぐもので、輪っかと輪っかが、切れ目なくつながっていく「螺旋」に変えるためのエネルギーだと言えます。

「1つの輪っかをなぞる=再現性が高まる」のですが「見たことのない景色が見える成長」を目指すなら「チャレンジ」という要素が不可欠なんだということを、登山の楽しみを考える中で再確認できました。

ただ、螺旋のようにずっと成長し続けるということは容易ではありません。

「適切な=力量にふさわしい」目標設定が前提となり、「努力」は「達成につながる努力」でなければなりません。これらを見極めて継続していくことは口で言うほど簡単ではないのです。

なので、常にチャレンジしなくても、時には同じ輪っかをトレースして手順を再確認したりブラッシュアップしたりする、という取り組み方も、輪っかの内容によってはアリなのかなぁ、とかも思ったりしてました。トレースも質を高め、自信を深めるための取り組みだと言えますね。

と、まぁ、こんなことをぼんやりと考えていたと思います。

こんな感じで登山という大きな流れは日常生活をじわじわと浸蝕していくのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?