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忙しいのは悲しいのと同じくらいキラい

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暇すぎて考えてしまうこと。半径0メートルの形而下学。見えるものしか見ません。
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2023年6月の記事一覧

桃が「腐る」のを待って食べるみたいに

ごみの収集日を逃してしまって溜まっていたところに、さらに次の収集日も祖父の葬式で家を空けなければならず、一週間以上もごみ箱の底に生ごみを放置する始末に。臭いを案じていたけれども、ごみ箱を開けてまず刺激されたのは視覚のほうだった。私が一日半触らないだけで、そこにひとつの「家」ができていた。その光景をみたのは初めてだったのだが、その光景を言い表した言葉には心当たりがあった。捨てたごみが”死んでいく”の

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買ったけどまだ無いメルカリのドライヤーみたいに

メルカリで買ったドライヤーが、3週間経っても発送されない。10日経ったころ不審に思いメッセージを送ろうとしたら、プロフィールに「体調不良のため遅れます」と書いてあった。体調不良の人を急かすのも申し訳ないので、ちょっと待ってみている。より良い出品も見当たらないので、キャンセルもしない。出品者さまの身体が良くなっていく(と信じる)のと並行して私の髪が傷んでいく。生死をさまよっているかもしれないのに、髪

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たたまれた傘を片手に並ぶ高校生の後ろを手ぶらで歩くみたいに

梅雨入りして雨が多くなってきたけれど、ずっと降っているわけではない。出かけるときに天気予報を確認して、今降っていなくても帰るまでに降って来る予報だったら傘をもっていく。逆に、起きたときに降っていてこの後止む予報ならば、少し待ってから家を出る。夕方ごろ濡れたアスファルトの上のひんやりした風をきって歩くとき、傘をたたんで持っている人とすれ違うと、「このひとは朝雨が降った時に家を出た」とわかる。朝出て夕

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大通り沿いの住宅街をひとり走っていくみたいに

地図アプリで行先を指定してここからの経路を検索すると、基本的には広くて車線の多い道を通るルートを案内される。たいていそういう道は真っすぐ通っていて、交差点では看板が曲がった先にある町を示してくれるから迷わずに進んでいくことができる。特に自転車に乗っていて両手が自由じゃないときは、地図を見る回数が減るようなるべく曲がる回数が少なくて済むように大通りを走る。難点は交差点をたくさん通ること。別の大きい道

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