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Landscape designとDialogueが自然と暮らしをつなぐ次の一歩

一歩ずつしか進めない

2023年の年の瀬、車を運転しているときに、2024年のテーマ(探究していきたいこと)にふと気がついた。

2020年から今年はこのことが自分自身のテーマとして深掘りしたい、というものを言葉として残しはじめた。2021年は、Relationship(自然と人、ローカルと都市のよい関係性を考えること)。
2022年は、Redesign(暮らしのデザインはいつでも更新可能で、自然と暮らしがつながる暮らしのデザインはあり得るんじゃないか、を考える)。
2023年は、Rescale(自然と僕らが共に生きて行くためのちょうどいい規模や新しいモノサシを探し、提案していこう)。

2021年から2023年は「Re」がテーマの3年間だった。

それぞれの「関係性」、暮らしの「デザイン」、暮らしとビジネスの「スケール」とこれからの「モノサシ」を考え直すという見方をしてきたように思います。

これらのテーマは僕にたくさんの気づきをもたらしてくれました。RelationshipもRedesignもRescaleも振り返ってみれば当然繋がっているように見えるけれど、Relationshipを考え、関係性をテーマにプロジェクトやビジネスをやってみることで、Redesignが必要だと思い、Redesignについて人に話したり、考える中で、Rescaleの話へとぶつかっている。

常に、一歩ずつ。
ゆっくりした歩みと自分の手足、目や耳で考えてやってみるから次の気づきがやってくる。

Dialogueとはなんなのか

そして、2024年のテーマは「Dialogue(対話)」としたい。
Dialogueや対話という言葉は、これまでも頻繁に聞いてきた言葉だったし、対話の重要性というのは、なんとなく感じていた。
しかし、2023年の後半にいくつもの出来事がDialogueの重要性を実感に落としてくれた。

だけど「大事なことが腑に落ちたなぁ」、ということだけであれば、テーマにしなかったと思う。

Dialogueは、僕が考えるよりもずっとずっと深みがあって、難しい。
RedesignやRescaleとも少し違う雰囲気がある。今年のテーマは「Rescaleです」と話した時に、少なからず疑問が生まれるように思います。Rescaleってどういうこと?と。

でもDialogueや対話というのは、聞き馴染みがあるからこそ、「対話が重要ですよね」と話した時に「そうだよね」で終わりかねない。

言葉は入れ物だという話があって、僕もそう思っているけれど、最初は意味を持って流通していた言葉が使いやすいからと、中身を入れずに流通し始めると、いつの間にかその言葉を信じられなくなってくる。
「SDGs」や「サステナビリティ」なんかはそうやって、いろんなところでよくわからなけど、「環境にいいってことね、SDGsだね」と使われることでSDGsそのものがなんとなく意味のない言葉になってしまうような状態のことだ。

そして、「対話」ということばも、なんとなく意味が通じるだけに、その意味や意義に対して素通りしてしまいそうになる。

だけど本来は素通りしてはいけないほどに重要なものだ。

なぜDialogueなのか

2023年は対話に関して考えることが多々あった。それは、講座を数多く開催してきたことと、松葉杖ブランド「ヴィルヘルムハーツ」を日本で広めているデザイナーの宮田尚幸さんとの出会いがあったことだ。


風と土と木 合同会社 代表・デザイナー 宮田さん

宮田さんは、30歳手前でプロダクトデザインをやっていた会社を辞めて、デンマークのフォルケホイスコーレ留学する。自分と関係性の低いものということで、福祉を専門にしている学校を選んだ。その中でデンマークの教育の根幹にある「対話」を体感した。それは「安心感」が前提になっている。安心感の先に対話はある。

安心しているから、自分が考えていることを話すことができる。当たり前だし、そうだよね、と思うけれどその「思う」というのと「体感」するというのには大きな差がある。
宮田さんは幼少期から生きづらさを感じながらずっと生きてきた、と自身を振り返る。それはどこかその「安心感」のなさが原因だったように思う、と話してくれた。

詳しい話はsees note(inadani seesのメディア)に登場予定なので、割愛しますが、エピソードを一つ。宮田さんがお世話になっていた松葉杖職人さんのところに行った時に、まず宮田さんが暮らす小屋を一緒につくろう、と提案してくれたという。宮田さんが「そこまでしてもらって申し訳ない」というと「お互いの信頼を築くためにはまず私が君を信頼しないといけないだろう」と言われたそうです。

僕にもそういう経験がある。分厚くて暖かい手でがっちりと手を握って「ありがとう」とか「頑張って」と言われたときの気持ちの暖かさは、なんとなく僕の人生に意味を与えてくれている。

その話を聞いて、宮田さんのインタビュー前にやっていた信州大学との事業 Think Local Academyの風景が重なる。

Think Local Academyは、地域に横たわる問題に対して、その根っこにはどんな課題があるんだろう?という問いを深める学びの中で、本当に問いたい問題の根っこを探すスクールだ。
2日間みっちりと講義とワークショップを経て、1ヶ月間がそれぞれのテーマでのフィールドワークをして、発表するという建て付けだ。

このスクールの中で、project MINTの代表である植山さんに「対話」の方法を教えてもらっていた。

まず「自分がどのように人の話を聞いているか」に意識的になり、その後に対話とはどういうものか、について知る。
僕らの日常の中で、対話的な営みというのはかなり少ないものだと実感を持って知ることになった。

そして、それは受講生の人たちにとっても大きな気づきとなった。

Dialogueする

1ヶ月にわたって行われたグループワークがとても対話的に行われていて、みんなの発表がめちゃくちゃ面白いものばかりだった。

「A」という問題・課題に対して、じゃあ「B」という解決策を提案する。これはよくあるやり取り。
それにたいして、Aという問題があるとして、なぜそれを問題と思うんだっけ?それがどうなったら良いのだろう?と問いをチームで深めていくことで生まれたプレゼンテーションは、どれも本当に素晴らしく、明らかにDialogueが生み出した結果だった。

環境や風景がつくるDialogueがある

話は宮田さんのインタビューに戻る。宮田さんの話の中で「対話に大切なことはいくつかありますが、環境もとても重要です」と話してくれた。環境が自分たちに与える影響はとても大きく、デンマークでは建物の設計においてその「対話がしやすいか」ということが取り入れられているという話に、ピンとくる。

ヴィルヘルムハーツのデザインも対話から生まれた

僕は、窓のない会議室みたいなところでプレゼンすると緊張する。プレゼンテーションという行為がまずは一方通行っぽいけれど、それがさらに内容が上擦るようなプレゼンになりやすいと感じていたし、会議そのものもやっぱり行き詰まる。

それを大きく感じたのは、2023年の伊那谷フォレストカレッジだ。現地開催になってから、初日は森の中に集まり、そこで焚き火を囲んでみんなで自己紹介をしたり、交流したりする時間がある。
今回の初日は全国で災害が起きるほどの大雨の日だった。伊那谷も土砂降りでとても森でできる環境ではなくて、inadani seesでの開催に。広々した空間ではあったけれど、その時も窓のない会議室に近い感覚を抱いていた。

初対面の人たちがたくさん集まる中で、大雨の室内。
単に僕にその準備がなかったというのもきっと正しい。緊張感は伝播していく。その時は、森の中で開催した昨年を思い出し、森の環境というのはとても話しやすい、焚き火はさらにそれを助長する。やっぱり森っていいよな、と考えていた。

それから、inadani seesを会場に何度もイベントをすることで、会場の生かし方もなんとなくわかってきたところだったので、宮田さんのいう「環境」というのが物理的な環境だけでなく、その準備やスタッフとの連携なども含めた全部なのだろう、とわかる。

3つの 「Re」の根っこにあったDIalogue

2021年にRelationshipからはじまり、Redesign、Rescaleと続いてきた僕のテーマの深掘り。そのテーマを掘った先にDialogueが現れた。
2024年はこれまでの3つの「Re」は、根っこでDialogueで繋がっているような感覚だ。
ということで今年はこのDialogueを考えてみたい。一つのアプローチとしてはDialogueとその環境について考えていく。

そしてタイトルのLandscape DesignとDialogueに戻るのですが、このLandscape designにも2023年の後半から気になっていて、こちらも今、学びを進めている。対話的な空間と環境、風景がきっと紐づいていくだろうと思っているので、Landscape designとdialogueの結びつきを考えていく。

Landscappe designについてはまた別で考えていることがあって、今準備中なので、今はまだ内緒にしておきます。

ということで、今年はLandscape designとdialogueが自然と暮らしをつなぐ次の一歩になるだろう、と歩みを進めていきます。
身体性を持って、一歩ずつ。そしたら次の思考にぶつかる。そうやって思考の階段を深く下っていく。頭が良くないから一歩ずつ、ではあるのですが、それが僕の進み方なんだな、と今は納得しながら進んでいます。

2024年も森と暮らし、自然と経済についてユーモアをもちながら進んでいきたいと思いますので、宜しくお願いいたします!

「Rescale」についても、現在進行形で考え中です。こちらは2024年の秋ごろに発表を目指して色々準備をしておりますのでそちらもお楽しみに!

秋から冬になると伊那谷の山々の色は減るけれどその代わり、夕暮れが色をつけてくれる。

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