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次世代医療基盤法のメリット 〜医療情報の2次利用が見出す未来〜

「現在の私たちの世代による医療情報の提供という 「一人ひとりの参加」は、未来の子どもや孫の世代に提供される医療の進歩という「みんなの恩恵」に結び付くのではないか。」


医療情報の2次活用を推進し未来の医療を発展させるために内閣官房「健康・医療戦略室」参事官として活躍されておられる田中謙一様にインタビューをさせていただきました。

医療従事者である私たちは国としてどのような取り組みをされているのか、この機会に知っていただけたら幸いです。



◾️内閣官房「健康・医療戦略室」とは

2021年4月の組織再編に伴い、内閣官房健康・医療戦略室が、「内閣府健康・医療戦略推進事務局」に変更されました。内閣官房「健康・医療戦略室」は健康医療に関する先端的研究開発、及び新産業創出の促進を目的としております。

この戦略室は直接医療介護の提供に関わるのではなく、日本医療研究開発機構という組織を通じた研究開発を含めた問題などを担当しております。

つまり医療介護の現場で患者や利用者に対してどのようなサービスを提供するか、医療情報の一次利用は厚生労働省が行っており、戦略室では医療データを研究開発の中に利活用する、研究開発や新産業創出につなげる医療情報の2次利用をしております。

また次世代医療基盤法も同様の目的を持ち、医療情報を吸収し匿名加工して医療分野の研究開発に利活用している、つまり医療情報の2次利用について定めたものなのです。こうした取り組みが結果的に医療介護の現場に還元され、患者・利用者のためにもなり、医療介護現場の負担軽減にもつながります。


◾️次世代医療基盤法とは

日本全国の医療機関には膨大な医療情報が蓄積していますが、この個々の機関に分散して保有されている医療情報を統合し集約したものを「医療ビッグデータ」と言います。
世界的には新しい治療法や新薬の開発など医療分野の様々な研究開発に医療ビッグデータを活用し医療の向上に役立てようとする取り組みが進められています。

しかし日本では十分に進んでおら医療ビッグデータを利活用する仕組みがありませんでした。そこで日本でも医療情報を医療分野の研究開発のために利活用できるようにすることを目的にした「次世代医療基盤法」が2018年5月に施行されました。

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◾️次世代医療基盤法が目指すこととは

現場から提供されるデータを利活用した研究開発の成果が、現場に還元されるといった好循環を作っていくことです。

現在は「現場としては医療情報を提供するが、どこかで誰かが使っているが自分たちには関係ない」という状態である課題を解決するために、医療の質の向上・医療介護現場の負担軽減のためにするためにソフトウェアが開発される、新しい治療方法ができる、画像診断が簡単にできるなど現場の負担軽減になり、さらには患者、利用者に帰ってくるということを実現していきたいと考えています。

医療情報を利活用した研究開発の成果を見える化することにより、医療情報の提供に協力していただく目的を示すことができるのではないでしょうか。

◾️EHR(電子健康記録)と次世代医療基盤法の違い

EHR(電子健康記録)は医療情報の一次利用になります。
現在は医療機能の分化、そして地域包括ケアシステムの時代であるため患者、利用者の状態に応じて対応ができます。
また医療機関・介護事業所など相互間で情報を共有し一人一人の患者、利用者のために医療を提供するというが求められており、それがまさに医療・介護の提供にあたります。つまり、医療機関・介護事業所の枠を超えて、データを共有しチームで最善のケアを提供しましょうというのがEHRの目的です。

一方で、医療情報の二次利用をしようというのが次世代医療基盤法です。
EHRは複数の医療機関から医療情報をもらい、集約した情報を医療介護の提供のためだけなく研究開発に使っています。しかしEHR単独だと地域で医療情報を共有するだけではお金は生まれません。

医療介護総合基金を使ってEHRを立ち上げたという地域はあるが、立ち上げの費用しか出ないためその後のシステム維持や運営のためにお金がかかるのが現状です。そこで苦労しているところは少なくありません。だからこそ地域での医療情報の共有も、次世代医療基盤法に基づく認定事業者がうまくいけば、地域における医療情報を共有する基盤を支えられるのです。
そういった意味で、次世代医療基盤法の認定事業所の存在はEHRを支える存在でも在ります。


医療の世界は、医師がデータを分析するケースがありますが、介護にはまだそうしたメンタリティーはありません。LIFEなどでデータを用いて科学的に基づいて介護をしようと始まってきましたが、それは簡単なことではなく、医療介護の提供の中でもデータ分析をして気づきをしなければなリません。こうした点から医療介護の提供もデータと無縁ではなくなってくることが予想されます。現場としても問題意識を持つことが必要になってくるでしょう。



データが利活用できるようになれば、
①患者一人ひとりに最適な医療を提供することが可能に
②異なる診療科の情報を統合することで治療成績の向上が可能に
③最先端の画像分析により病気の早期診断・早期治療を支援することが可能に

こうして医療現場や患者様、利用者様に還元されることもあるということが田中様のお話から知ることができました。
医療従事者の方々は専門技術を提供するだけでなく、業界的な国の施策などを知ることで、働く上での「なぜ?」が解決されるかもしれませんね。
知ることが初めの1歩です。
今後も皆様のお役に立てる内容をお届けしてまいりたいと思います。

田中様、貴重な機会をいただきありがとうございました。

※組織名・肩書は、インタビュー当時のものです。



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