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気弱な男の子

今でも思い出すと『きゅーん』となる記憶があります。
5歳くらいの幼稚園でのハナシ。


その頃の私は気の強い子供でした。
幼稚園でのお遊び、お絵描きや折り紙、椅子取りゲームなど、私は嬉々として、取り組む子供でした。

クラスにひとり、何をさせても『トロい』男の子がいて、その頃の私はその男の子の『トロさ』が気になって仕方ない。
折り紙をしていても、お絵描きをしていても、なかなか完成しない。いつもなんかモジモジしている。
彼が私の横で折り紙をしている時など、いつまでも完成しないのを見て私は彼の折り紙を取り上げて、『ここはこうして、ここはこう!』とか教えつつ、そのまま私が作り上げてしまうこともありました。

幼稚園ではクラス全体でどこかに移動する時は2列になって隣の子と手を繋ぐことになっていたのですか゛私と手を繋ぐ相手がちょうどその男の子だったのです。
私はその男の子の手を痛いぐらいにギュッと握ったりして、そこには意地悪な気持ちがあったのもちゃんとわかっていました。

ある日のこと、園庭でひとりで遊んでいると、その男の子が『ちょっと来て!』といつになく強い意志をもって私の手を掴み、園の裏門のところまで、駆け足で引っ張っていくのです。
『何?何?』と思いながら裏門へ着くと、門の外側に着物姿の女性がニコニコと微笑みながらこちらを見ていました。
すると、その男の子がその女性に向かって、

『この子が僕の友達!!』

と言ったのです!

その時その女性が私に言葉をかけてくれたのは覚えていますが、なんて言ったのかは思い出せません。
私の子供の頃でも『着物を普段着にしているお母さん』は珍しく、私はその女性の佇まいから、優しいオーラを放っていたのを子供ながらに感じ取りました。

正直なところ、私はその男の子のことを『友達』として認識していなかったので、彼の言葉に『ハッ』とさせられたと同時に『この子にとったらこんなおせっかいで意地悪な私を友達としと見てくれていたんだ…』という何だか照れくさい気持ちが込み上げてきたのを覚えています。

その後再び、その男の子と手を繋いだままその子の母親に見守られつつ、園庭まで駆け足で戻りました。

この男の子、この日の事覚えてるかなぁ?

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