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青く塗られた青の中で

空港のあの雰囲気が好きでね。
日常と非日常との玄関口というか。
これから向かう非日常への期待に浮き足立つ感じというか。
搭乗の準備を経て、出発のその時間までを過ごすあの雰囲気がやっぱり好きなんです。

ですけど、飛行機自体はいつまでたってもどうも苦手でね。笑
テイクオフのために加速する瞬間とか、テイクオフの瞬間の不安定なふわっとするあの感覚は今でも必ず搭乗を軽く後悔する瞬間です。
それでも、安定飛行に入ったあの窓の外の世界は、完全なる非日常へ自分を運んでくれている真っ只中の異空間というか。
窓の外のあの青は、まったく振り払う必要のない、沸き起こるままに任せていい、これから起こるまだ見ぬ世界へのワクワクに漂える至福の時間の景色と言って差し支えなくてね。
それは旅本番と負けないくらいの旅の醍醐味の1つと言っていいとさえ感じるのです。

そう。
まさしくあの『Volare (ヴォラーレ)』という曲で歌われるあの感覚です。w

Volare oh oh, 
Cantare oh oh oh oh
Nel blu dipinto di blu, 
felice di stare lassu

飛んでる
歌ってしまう
青く塗られた青の中で
青い高みに心はずませて

まさに青く塗られた青の中で、沸き起こる喜びに心弾ませる感覚です。


***


空への旅の喜びと世界の美しさを語った僕の愛読書があります。

『SKAYFARING -A Journey with a Pilot / Mark Vanhoenacker』
『グッド・フライト、グッド・ナイト -パイロットが誘う最高の空旅 / マーク・ヴァンホーナーナッカー』

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ブリティッシュ・エアウェイズの現役パイロットが、業務の舞台裏や担当するボーイング747、そして空の世界の魅力を詩的に知的に語るエッセイです。
そのコックピットから見える空や街の描写があまりにもロマンチックで美しいし、何よりも本人の空旅への愛にあふれた上品な書籍です。
この本を読むと、子供の頃に必ず憧れるパイロットという人物像がさらなる憧れの対象になるような、世界に対する愛情と正しい知性こそがパイロットという職業に就く人の特性なのではないかと思わせるほど、この本は愛と知性に溢れた書物なのですね。
旅人を世界中に運ぶために世界を飛び回り、世界が素晴らしいものだということの秘密の一端をすでに知っているかのようなあのパイロットたち。
そんな自らの仕事を愛するパイロットたちも、実はその世界を美しいと感嘆する旅人だったんだと改めて気づかせてくれるんですよね。
彼らは毎日のように、あの、世界中の青の世界に住んでいるのです。
まさに「青く塗られた青の中で 青い高みに心はずませて」いるんですね。

この本を読むたびに、空への旅を渇望してしまいます。
苦手でできれば列車や車で旅をしたいと痛切に願う僕ですけれども。笑
それでも、世界への憧憬は僕の根幹だし、あまりにもまだ見ぬ世界が多くてその憧れは尽きることがないわけで。
残念ながら、僕は旅人ではありませんからね。
だからこそ、世界で暮らす人たちの話を聞きたいし、その生活の匂いやシーンを見てみたいと思うのです。

本書の初版本の帯にはギタリストの村治佳織さんが寄稿されてます。
「空の国の秘密をじっくり味わえる夢のような読書時間。すべての旅好きな人にお薦めしたい。」
まさにその通り。
アロさんも薦めです。笑
(今はすでに僕の持ってるバージョンは出てなくて、その代わりに文庫本が出ているようです。英語版も当時の装幀本はありませんが、ハードカバー版とペーパーバック版が出ています)


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ちなみにこの『Volare (ヴォラーレ)』。
僕らにとって最も有名で馴染み深いヴァージョンはジプシー・キングスのヴァージョンですね。

元々は、1958年サン・レモ音楽祭でシンガー・ソングライターのドメニコ・モドーニョによって歌われた歌で、原曲タイトルはそれこそ『青く塗られた青の中で ー Nel blu dipinto di bluー』。
この曲はイタリアにとどまらず、世界各地で大ヒットを記録。
ちょうど翌年の1959年はアメリカでグラミー賞が創設された年で、『青く塗られた青の中で ーNel blu dipinto di bluー』は、記念すべき第1回グラミー賞の最優秀レコード賞および最優秀楽曲賞を受賞しています。

かなりのゆったりヴァージョンで味があるオリジナル・ヴァージョンはこちらで。w




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