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埋め込むもの

僕がまだデザイナーじゃなかった頃。
この業界に足を踏み入れたばかりのぺーぺーだった頃に、当時の会社のデザイナーが専務に怒鳴られてました。

「修正がいやならデザイナーなんてやめちまえよ!!」

僕はその後、デザイナーになるのですが、その専務の言葉の意味を次第に現場で学んでゆくことになったんですね。
未だに僕の心の根幹に刺さる大切な怒号なんです。

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なにもしていない時に、「なにかをする時には余裕を持ちたいな」とか、「なにかをやるなら楽しむことを目指そう」などと思うことはあるけれど、いざなにかを始めるとそんな想いはどこかへ消し飛んで。そのなにかに没頭してしまうものです。笑
それが自分の趣味だったり楽しみなことだったらいいんですけども、仕事だったりしたらその没頭は地獄の様相を示し始めることもあるのですね。笑

でも、最近の過ごし方の中で、いろんなことを考える機会も増えて、まあ、思うことも増えてきているわけです。
そのなにかが仕事だとしても、その「余裕の持ち方」や「楽しむための手段」に普段から想いを寄せていると「ああ。こういうことか」などと思う瞬間があるのですね。

最近のこんな日々でも仕事に追われることがあるのですが、目の前のことを必死でこなす状況があるわけです。
そんな時に、以前だったら、必死で追われる仕事をやりながら、五月雨の真っ赤っかの修正指示に立腹しながらも、なんとかクリエイティビティを確保しながら頑張っていたわけですが、「余裕」とか「楽しみ」を意識しだして、しかもたっぷりとそういうことを考える時間があれば、次第に、そして自然と、そこに「余裕」とか「楽しみ」を埋め込むことができてくるのですね。

例えば、まったくの後出しじゃんけんで修正依頼、どころか再考依頼が来る時にも、以前なら「何だよ!じゃあ最初から言えよ!無駄になったじゃないか!それまでのデザインが!」と思ったかも知れませんが、今なら自然と「まじか!じゃあ、前によぎったアレだな。アレを出してみよう!」と思えたりする。
ラフを4〜5案出してもらえますか?とか簡単に言われた場合でも、以前なら「1案しか採用されないならその他の案出しは損だな」なんて思うこともありましたけど、今なら「まじか!ちょっと試したかった構図があるのでそれ出しちゃえ!」とか思えたりするんですね。

考えることがあり過ぎて、普段仕事をいただいてることのありがたさを実感したり、毎日必ずデザインさせてもらえる環境に感謝したりすることが増えると、クリエイティブに向き合う姿勢そのものがポジティブになったりするものなのですね。
とにかく、このリモート習慣で心掛けたことは、デザインをする=仕事をするということに、何かポジティブな何かを埋め込んでみよう、ということでした。
そうすることで見えるデザインの地平があるのではないか。
僕が習慣的にやってることと違うアプローチが見つかるかもしれない。
そんなふうにやっていましたが、結論。
そんなものは何も見つかりませんでしたよ。笑
でも、一つ、見つけたことは、クライアントの暴挙にもあまり、しかも意図的に立腹しなくなったことかな。笑

僕がこの業界に入った頃、まだ僕がデザイナーじゃなかった頃に聞いた怒号は、今でもずっと心にあるんです。
ずいぶんと長い間それを抱えながらデザイナーをやってきました。
時々忘れたり、不遜になったり、いい気になったりしながらも、コツコツと目の前の仕事をやりながらここまで来たわけですが、今ではその意味も、その真理も、だいぶわかるデザイナーになって来たと思いたいかな。w

まあ、それでも。
ぶっちゃけると、立腹したり萎えたりは、
してますけども。笑


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