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友人が面白い視点の勉強をしているらしい

May 27, 2023

昨日、大学時代の友人と渋谷で夜ご飯を食べた。僕が先にお店に入って飲み物とおつまみを頼んで待っていた。お手洗いに行って、席に戻ろうとしたところで友人も丁度お店に入ってきた。

何年ぶりかな、7年かなとか久しぶりの再会を慈しむように、互いの距離を確かめるように話していた。実際に数えてみたら6年ぶりだ。それはどちらでもいいことのようにも思えたし、過ぎていった時間だけが僕らが出会ったこと(そして長いこと会っていなかったこと)を確かなものにしているような気もした。

3時間くらい一緒にいて、ご飯を食べながらも話は尽きなかった。ラストオーダーの時間になっても最初に頼んだお皿の半分くらいにしか手を付けていないほどだった。

初めは、大学を離れてから何をしていたか。それから今の仕事の愚痴。友人は大学の博士課程に進んでいるので、教授やゼミの愚痴。二人とも全然違う人生を歩んでいるし、彼はエンジニアって何の仕事?と聞いてくるくらいにはITにも詳しくない。それでも、話してみたら案外理解してくれる。

僕らの一番の共通点は、抽象的・概念的な話をすることに抵抗がないということだ。抽象への抵抗どころか、むしろ具体的な話を面白おかしく組み立てるほうが苦手なのだ。それに僕は最近それこそ理論的な本を読んだりして、言葉のフレームが人文科学のそれに偏っている。それで結局僕らは一緒にいる時間の半分くらいを、友人の今の研究についての話をして過ごすことになった。

友人の専門は平たく言えば社会学だ。しかし、目をつけているのは社会学的なテーマではなく、量子力学。彼曰く、最近の量子力学では人間の意識についての研究が進んでいるらしく、何なら量子で意識の仕組みを説明できるんじゃないかという期待すら一部ではあるらしい。

後から僕がネットで調べてみると、量子というのはまずめちゃくちゃ小さいのでいろんなものを通り抜ける。さらに、観測するまで不確定な動き(波状?)を続けているのに、観測した途端に古典物理学で説明がなされるような動き・存在に変化するらしい。

量子は(こう言っていいのか分からないが)〈ある〉でも〈ない〉でもない存在だ。1でも0でもあり得る。量子コンピュータはまさにこの「1でも0でもあり得る」という性質を利用して、1と0の組み合わせである膨大な計算を同時並行的に行うという類のものだ。

じゃあそれで量子と意識がどう関係するのかという話になる。まず、人間の体には微小管という構造があり、これは量子効果(量子によって何らかの影響・効果が生まれるくらいの認識)を発生させるのに適したものだ。この微小管で実際に量子効果が起きるのかという実験で、意識との関連でかなり有意な結果が得られたらしい。量子が意識の発生に影響している可能性を支持し、さらに意識が発生するまでの時間と同じ時間でこの現象が確認できたと。

また、これは僕の解釈もかなり含むのだけれど、量子が観測されるまで〈ない〉のであれば、また観測されたときのみ〈ある〉のであれば、意識=世界というのは量子を観測する限りにおいて存在すると言うことができそうだ。つまり、意識の外に世界は存在しないようなのだ。*1

この量子力学の仮説。まだまだ発展途上の研究なのでこれがすべて本当のことだと騒ぐ人はあまりいないだろうけど、こういった量子の性質や量子力学の理論を取り入れた議論というのは、哲学や歴史学といった領域でもすでにあるらしい。しかし、社会学は(友人が知っている限りにおいて)注視していないどころか、全く知らなかったり眉唾物だとあしらわれたりといった状況らしい。

らしいだらけですみませんが…

でも、社会学において意識=自我の問題ってかなり重要なはずなんだけど。現象学的社会学、ミードやゴフマンといった社会関係から自己がつくられるという議論、ギデンズやベックだってアイデンティティや個人化について語っている。さらには構築主義(社会構成主義)なんて、客観的・科学的な世界観を放棄して社会関係、クレイム申し立てがあってはじめてあらゆるものは存在するのだみたいな認識論に終始している。

それなのに、意識があってはじめて世界が存在する、なんて刺激的な議論をガン無視できるのか。量子力学でなくてもこれに似たパラダイムシフトは文化人類学や哲学の領域で起こっているようだ。そこすら社会学ではほとんど取り入れられていない様子。*2

こういった話を友人がしていて、僕も『自己への物語論的接近-家族療法から社会学へ』(浅野, 2001)を読んだばかりなので、なんなんだそれはと意気投合してしまう始末。僕が批判するには何についても知らなすぎるのだけれど。

人文科学的な議論はともかく、量子力学の話はかなり面白いです。ちょっと本を買って勉強しようかと思うくらいには。


*1 僕は物理学の基礎も量子力学とは何ぞやといったことも分からない人なので、こういった考え方があるらしいということの紹介までしか責任をもてませんが。
*2 宮台真司さんのツイートやネット記事の文章で簡単な議論は見つけることができます。

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