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「可能かな?」と思いました(笑)│裏表のない服 メーカーインタビュー vol.2

コンプレックスに悩むのはやめにして、みんなが笑顔で暮らせる社会をめざしたい!そんな想いから生まれた、オールライト研究所のプロジェクト第1弾「裏表のない世界」。

ここまで、モニター、プランナー、メーカーの皆さんから裏表のない制作秘話を伺ってきていますが、今回はメーカーインタビューの第2弾として『裏表前後ろのないスッキリフィット靴下』を担当された「さくら」さんのインタビューをお届けします。

さくら さん
靴下の企画会社に勤めて12年。
プランナーの「きょー」さんとは10年以上のお付き合い。

「可能かな?」と思いました(笑)

ー 初めて「きょー」さんから『裏表のない服』の話を聞いた時、どんな印象でしたか?

さくら)靴下は一対の物ですけど、左右それぞれは基本的には単体で編み立てた別々の物なんですね。なので、「片方は表だけど、もう片方は裏でも履ける」というのは結構難しいというか......

リバーシブルの靴下はご相談いただくことがあるので「両方とも裏返しでも履ける」という発想はあっても、裏表をセットで履ける靴下というのは見たことがなかったので、「それって可能かな?」と思いました(笑)

工場の技術者とも「これってどうやったらいいだろう?」と頭を悩ませていたので、通常の靴下の企画とは違う難しさがありましたね。

きょー)二枚の編地を合わせたリバーシブルだと、障がいのある方たちが履いた時にずれたりして、歩きにくかったりするんじゃないかな?とさくらさんに心配していただいて。二枚の生地を合わせるという作り方はやめておこうという話もありましたよね。

単純な編み方の靴下の2倍の時間がかかる

ー その難しさはどのように解決されたのですか?

さくら)工場の技術者といろんな編み地を試したり、既存の編み地を観察して、どれだったら表と裏の編み地が一緒になるのかを見比べて..…何度も試し編みを繰り返していく中で、表と裏が同じ目数で、同じような形で出る編み地が一番良さそうだという所まで行きつきました。

で、そこから格子やボーダーなど柄での違いを試作で確かめていって、その中からいくつかの編地サンプルを「この中からどうですか?」という感じで「きょー」さんに見ていただいて。「きょー」さんに選んでいただいた中からさらに、編み時間がなるべく短くてコストが抑えられるものに絞り込んでいくという過程を経て最終形に辿り着きました。

ー すごく.....長い道のりに聞こえました(笑)

さくら)これまで、あんなに表目と裏目のことを考えたことはなかったかもしれないです(笑)

両方とも何目だろう? とか、これだったら編み時間がかからないんじゃないかとか。でも、実際に作ってみると意外と時間がかかったりとか、色々ありましたね。

ー ちなみに、この靴下は一足編むのに40分かかると「きょー」さんから聞いたのですが、シンプルな靴下と比べるとどれくらい長いのでしょうか?

さくら)編み方によって変わってくるんですけど、単純な編み方の靴下であれば半分くらいの時間で編めると思います。

「本当にやるんですか?」と確認が(笑)

ー 特に大変だったことはありましたか?

さくら)実は、結構前からアイデアを伺っていて、サンプルもいくつか提案していたのですが、なかなか着地出来ていなかったんですよね、確か。

きょー)そうですね。最初は丸編み機で裏表が目立たない靴下を試作してもらっていたんですけど、それだとどうしても表と裏の編み目に違いが出てしまって。

さくら)それで、少しコストがかかりますがホールガーメント®︎(縫製せずに立体的に編み立てができる編み機)で進めていきました。

ホールガーメント®︎の機械

さくら)ただ、ホールガーメント®︎で作った場合でも、つま先と履き口の裏側に糸端末が出ます。通常だと、履き口に残る糸は手作業で編み目の中に引き込んで始末するのですが、つま先に残る糸は裏側で着用したときに隠れる部分なので、着用時の伸縮に対応できるよう糸の長さに余裕を持たせて、そのまま残します。

でも今回は、裏側も表になるということでつま先に残った糸端末も手作業で処理しています。短く切ってしまうと、そこから糸がほつれていってしまう可能性があるので、玉留めをしてから糸端末をカットし、編地の中に馴染ませているんです。

実際につま先に残った糸端末を玉留めする様子

きょー)私は単純に切ったら済むと思っていたんですけど、すごく丁寧な対応をしていただいて感謝しています。

ー ひとつひとつ手作業で仕上げていくんですね!作るためのアイデアもそうですが、工場さんとの交渉も大変だったのではないですか?

さくら)基本的に工場の方たちは協力的で、これまでも一緒に様々な企画や課題にチャレンジしてきていましたが、今回の玉留めに関しては「本当にやるんですか?」という確認がありましたね(笑)。

でも、玉留めをしないと裏表前後ろなく履けないし...ということで、最終的に工賃を抑えつつ見栄えもいい方法を工場で各工程の担当者が集まって検討してくれたんです。

触覚でも柄を感じられるデザイン

ー さくらさんはこれまでも、ご高齢の方やお子さん向けの製品に携わってこられたとのことですが、今回の『裏表のない服』を通して何か感じたことはありますか?

さくら)ご高齢の方や、障がいをお持ちの方にとって使いやすい物、例えば伸びがいいとか、肌に優しいといった物は、そうでない人にとっても使いやすい物でもあると思っていたんですけど、今回、「裏表前後ろを気にしなくていいのは誰もが楽なんだな〜」と思いました。

特に、これから更にご高齢の方が増えていく社会においては、必要な視点なんじゃないかなと感じましたね。

あと今回の靴下は、凹凸というか、触覚も考えられていたのかな?と思っていました。「きょー」さんから「凹凸がほしい」というお話も確かあったので。視覚障害の方が履く時にも分かるし、履いている物の柄を感じてもらえるというか。触覚でも柄を感じてもらえるのはいいなって思っていました。結果としておしゃれにもなっていますし。

凹凸のあるボーダー柄

ー この凹凸のあるボーダー柄は、モニターさんからのフィードバックをもとに導き出された柄なのでしょうか?

きょー)そうですね、モニターをしていただいた視覚障がいをお持ちの方や車椅子をお使いの方がデザイン的にも履きやすいように。男性陣からは「あまり柄が主張されていない方がいい」という意見もあり、いろんな方が良いと言ってくださった柄を意識して作っていきました。

ー 今回もたくさん興味深いお話を伺えましたね。次は工場の方のお話も聞いてみたくなってきました(笑)。さくらさん、今日はどうもありがとうございました!

※「ホールガーメント(R)」は株式会社島精機製作所の登録商標です。

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