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裏表も左右もない靴下│裏表のない服 プランナーインタビュー vol.2 きょーさん

コンプレックスに悩むのはやめにして、みんなが笑顔で暮らせる社会をめざしたい!そんな想いから生まれた、オールライト研究所のプロジェクト第1弾「裏表のない世界」。

今回は「裏表のない服」のプランナーインタビュー vol.2ということで、プロジェクトメンバーで生活雑貨の企画歴30年のプランナー「きょーさん」から裏表のない話を聞いてきました。

裏も表も、前後もない。すべての着こなしが正解。そんな前例に捉われない服の開発には、前例のない苦労があった?!

生活雑貨の商品企画一筋30年のきょーさん

プランナー きょーさん
フェリシモで生活雑貨の商品企画一筋30年。
障がいのある方たちの社会参加を応援する『CCP(チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクト)』を20年にわたり担当し、最近では発達障がいを含め様々なスペシャルニーズを持つ方たちと困りごとを解決する雑貨なども企画中。

大変さは企画人生30年で1位か2位

ー 靴下を脱ぎ散らしたら、家庭では洗濯当番とケンカになることが多かったりしますよね。

ありますよね、洗濯の時に裏返った洗濯物を直すのって、何回もあるとプチストレスがたまりますよね。

うちの子は知的障害があるので、本当はちゃんとしないといけないんですけど、なかなかできなかったりして。洗濯担当の夫に怒られがちで。声が大きいからうるさくて(苦笑)

そういう経験があるので、「裏表のない服が世の中全部になればいいな」という想いはあったんです。

ー なるほど、そういう想いもあって

そうなんです。私自身もジムでTシャツを裏返しで着てることもあって、隣のおばちゃんに「裏表やで」って教えてもらったりするんですよね(笑)

あわてて着たりするとやりがちですし、ずぼらだから裏返すのがめんどうくさいし。そういう想いで服や靴下を作ろうということでみんなで進めて行きました。

前回のインタビューでは、はなさんから裏表のないTシャツの企画にかなり苦戦したとお聞きしましたが、靴下はいかがでしたか?

色々と思った以上に大変で、企画人生30年で1位2位を争うくらい大変でした(笑)

最初は、以前に作ったバリアフリーな靴下の企画をベースに楽に進むと考えていたんですけど、いろんな方にヒアリングやアンケートをしていくうちに、もっと裏表がわからないことを徹底しないといけないとか、改善点が色々と出てきて。「普通の靴下編み機では無理!」という話になって、仕様が二転三転して工場を変えたりとかもあり、かなり技術的な面で大変でした。

以前企画したことがある商品というのは、このブルーナ バリアフリープロジェクトの靴下で、身体障がいのある方たちの生活を便利にするという想いから始まった企画です。

ブルーナ バリアフリープロジェクトの靴下

これは「かかとがない靴下」で、車椅子に乗っているお子さんをお持ちのお母さんからのリクエストがきっかけでした。

車椅子に乗っている方は筋力が弱くて、足が細いんです。足のサイズに合わせた靴下だとずり落ちてきて、「サイズが合うものがないんです」というお話だったんです。

そこで、裏ゴムを入れてフィット性を出すことで、かかとがなくても落ちてこないサイズフリーの靴下を作りました。これをベースにして作ろうかなと思っていたんです。

つま先の縫い目をなくすために

ー 確かに、きつすぎる感じではないですね

そうなんです、かかとがないから。介護する時もかかとをきちっと合わせなくてよくて、どんな足のサイズでも合うのですごく好評でした。でも、裏表はあったんですよね・・・。

具体的にどこが違ってくるかというと、まずはつま先の縫い目の有無です。

普通の靴下はつま先部分に縫い目がある(左)

裏表を無くすためにはつま先の縫い目もなくす必要があって、リンキングという縫い目がフラットになる方法でサンプルをいくつか作ってきました。ただ、全盲の方や車椅子の方にサンプルを確認していただくと「裏表の編み目の違いが、肌触りや見た目で、ちょっと気になる」というご意見をいただいて。

つま先の縫い目がなくなったとしても表裏で編み目の違いが出てしまっていて、左右で裏表逆に履いたときに、やっぱり少し気になるということでした。手触りも編み目によって違うので。

ー 確かに、触ってみると結構違いますね

そうなんです。それで、じゃあどうする?となった時にリブ編みを試してみるという案もありましたが、その場合、今度はつま先のリンキングができなかったりして(苦笑)

色々と検討する中で、最初に検討していた方法では無理だということになり、『ホールガーメント®︎』という特殊な機械に行き着きました。

アパレルなどで高級なセーターなどに使われる、無縫製で伸縮性のある着心地のいい仕上がりに編める特殊な機械なのですが、高価なために台数が限られているんです。

この機械で編むと、表と裏の編み目を調整できて、かかとがなくてもフィット性があってずれないし、つま先の縫い目も出ないという仕様が叶うことが分かりました。

この編み機で、裏表の目を同じにするにはどうしたらいいかな?ということで、いろんな編み方を試していったところ、今度はコストの問題が出てきてしまって。

編み目模様のデコボコが多いほど編むのに時間がかかるため、かわいいなと思ったバスケットみたいな編み方だと1足に1時間以上かかってしまうことが分りました。

時間がかかるとどんどんコストが上がって、大変な価格になってしまうし、お届けするにもすごく日数がかかってしまう。ということで、なるべく短い時間でできる編み方を選んで最後この2つに行き着きました。

最終選考まで残ったのが「同じ幅のボーダー」と「格子模様」の2タイプ

1足編むのに約40分!

こういう感じで、こちらは裏になっているんですけど...

ー ぱっと見は本当に同じですけど、きょーさんは裏になっていることが分かるんですね(驚)

そうなんですよ(笑)パッと見は全然わからないですよね。凹凸が反転して出ることで、ほぼ同じ見た目になる様になっています。

どちらに決めるかはメンバーで話し合って、光の当たり方で微妙に見え方が変わる格子柄はやめて、ボーダー柄のタイプに決めました。左右で、裏表を反対に履いても全く同じに見えないと、裏表のない世界のコンセプトが成立しないかなということで。

社内の人たちや、大胡田さん大石さんご夫妻木戸さんはじめ、色んな方にボーダー柄のサンプルを渡してヒアリングしたところ、「履いた感じがさりげなくオシャレな感じになるからいいね」とお声をいただいたのでこれに決まりました。

それでも、1足編むのに平均42分かかるんです。なので、若干コストは嵩むのですが、すごく履き心地のよい靴下が完成しました。

一般的な靴下ではつま先に写真の様な糸の端が残ってるが、裏表のない靴下では裏表をなくすためにひと手間かけてカットしている。

ー かかとがなく左右のない靴下から、さらに裏表もない究極の靴下が誕生したんですね。ところで、素朴な疑問ですがなぜ一般的な靴下には「かかと」があるのでしょうか?

それは、強くするためですね。踵の部分が出っ張ってないと、歩く時にかかとが靴や地面に当たるので包み込むような形になっているんです。

この靴下の試し履きをしてくださっていたモニターさんの中には、「もし、かかとが薄くなってきたら、そこを前にして履けばめっちゃ長持ちするやん」とおっしゃっていた方がいて、素敵な発想の転換だなと思いました。

かかとがなく裏表もないから、薄くなってない方を下にしたらいいという。あと、親指だけ当たってそこから破れそうなみたいな場合も、上下や左右を変えることで避けられますよね。

ー 新しい感覚ですね。最大限まで長く使えそうです

片方だけでも買えるように

私はよく靴下が片方だけなくなっていくんです、なぜか分からないけど(笑)。なので、この靴下は片方だけ買えるところもポイントだと思っています。

ー 確かに、左右がないから...ユニークな販売方法ですね!

そうなんです、左右がまったく同じなので。気に入ってたのになくなっちゃったっていう時とか、ちょっと使い方が悪くて穴が開いちゃったっていう時でも片方だけ買い足してもらえます。

ー 靴下で痛むところって、なぜか絶対同じなんですよね(笑)今日は面白いお話をありがとうございました。

※「ホールガーメント(R)」は株式会社島精機製作所の登録商標です。

プランナー「きょーさん」が企画した商品はこちら

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